彼女が見つけた逃げ道
「へっへっへっ。 期は熟した。 とっととあの娘を差し出せ!」
「断る! お前達の元へ差し出したら、なにをさせられるか、分かったものではない! あの子を穢すのは許さん!」
「言ってるだろ? 俺は紳士だ。 あの娘を渡せば、この村を襲わねえって言ってるんだ。 もう何度も建て直す必要ないんだぜ? 嬉しいだろ?」
そんなことを天秤に掛けられていたのか。 だがそんなことで天秤が傾く訳がない。 相変わらずというのは嘘では無さそうだ。
「何事ですか!?」
今度は俺達が入ってきた入り口から戻ってきた一家、サルソ一家の到着だ。 そして荒くれ者の男は戻ってきた一家、強いて言えば俺達を案内してくれた少女に目を向ける。
「おお、見かけないと思ったらそっちにいたのか。 あぁ、あれから成長して、一層麗しくなった。 さぁ俺と共に来てくれないか?」
そう男は声を掛けるが、少女は後ろに後退りしている。
「なにがあったっスか!?」
騒ぎを聞き付けたファルケン達が、俺の近くに寄ってくる。 とはいってもゼルダとファルケンはローブを羽織っているので、他人からは亜人とは分かりにくい。
「あん? じゃじゃ馬か? お前らには関係ない。 とっとと失せな。」
「怯えてる・・・のかは知らないけど、少なくともあんまり好いてない女子にそこまでして言い寄るのには、俺はあんまり感心しないな。」
本当の紳士なら相手の嫌がることはまずやらないし、もう少し相手の気持ちを敬う筈だ。 今奴がやっている行為は正しく「野蛮」の一言である。
「ふん、誰になんと言われようと、関係無いな。 特にお前みたいなひよっこに言われる筋合いは毛頭無い。 この世は強い方に全てが行く。 そんな世界なんだよ。 それともなにか? そこのダルマでもボコボコにすれば納得するか? 俺はそれでも全然構わないぜ?」
そーら見たことか。 なんでもかんでもそうやって上を取ろうとするんだ。 それが人の性と言われたらおしまいだが、見下すだけのマウントなんか、俺にとっては結局は一時しのぎとしか思えないし、更に上を取られる可能性だって無くはないんだ。 それにそう言った人間が逆に人生転落していきなりなにも出来なくなる方がどちらかと言えば喜劇だ。 ・・・俺も人が悪いか。
「あ? この状況でよく笑ってられるな? 馬鹿にしてんのか?」
俺が自虐的に笑っていたら嘲笑に見えたようで、相手を煽ってしまったようだ。
「どっちみちお前はこの村の奴じゃないんだろ? いいから離れて・・・」
そういう男の喋りが止まった。 何事かと思ったら、先程から男が狙っていた少女が、俺の方に走り寄ってきて、そして・・・俺の左腕に「ガシッ」と体を抱き寄せた。
「「なっ!?」」
その行動は俺にも男にも予想は出来なかった。 しかし思っていることは違うだろう。 俺の場合は「なんで俺に抱き付いた?」と、男は「なんでこの男に抱き付くんだ?」という意味だろう。
「わ、私はこの人とこの村を出ることにしました。 それに私はあなたの物にはなりません。」
そういう少女の瞳は真っ直ぐな瞳をしていた。 そしてハッキリする。 本当は今の言葉をずっと、言い寄られた日からずっと心の奥底で押し殺していた言葉立ったのだろう。 そして今まで言えなかったことを俺という隠れ蓑を使って断ったのだ。 利用されるのはいい気分とは言えないが、こういうことなら喜んで引き受けようではないか。
「な、なんだと!? そ、そんな男のどこがいい! お前を貰うのは俺だ! ・・・お前が邪魔をするなら、ここで消してやる!」
そして憎まれ役の標的もな。 こう言うのにはもう慣れた。
慣れたというのも、前世でもこういった面倒事は基本的に任されることが多かった。 まあ任されるというよりも逃げ道として使われていたことが多かったし、そう言った事を結局はやってしまっていた自分もいた。 結果的には優等生のような立ち振舞いが出来ていたが、自分としてもやりたくはあまりない事だったのでうんざりしていることもあった。
だけどこの場合に限ってはそう言った感情にはならない。 彼女としても不本意かもしれないが、こんな絶好の機会は訪れないともおもっているだろう。 ならばその人柱に位ならなってやっても俺は構わなかった。
「別にいいけどさ。 で? カードバトルの制約内容はどうするんだ?」
「あー? そんなあまっちょろいもんで済ませれるか! 決闘だよ! 決闘! 力比べだ!」
「カードバトルだって立派な決闘だろう? もっと穏便に済ませねぇか? それともなにか? カードに自信がないからって力で解決するって算段か?」
「あぁ!? 舐めてんじゃねぇぞ!? 上等だ! やってやろうじゃねぇかよ!!」
「なら制約内容は負けた方はこの村に二度と入れないし、危害を加えないって条件でいいな?」
『制約内容:村への干渉の禁止。』
そしてAI領域が展開される。 というかこう言ってはなんだが、自分の土俵に入れるための挑発だったのだが、予想以上に突っかかってくれたのはありがたい。 後は負けないようにすればいいだけなんだけど。
「やってやるよ・・・あいつを手に入れるのは俺だ・・・」
もう既に冷静さを欠けている相手に大人気ないか? まあ、迷惑掛ける輩なら容赦はしないがな。
「「さぁ、劇場の幕開けだ!」」
さて、ここで先に報告しておこう。 制約カードバトルの結果は俺の圧勝であった。 いや、なんというかこれをわざわざ説明するような試合じゃなかったというか、あまりにも拍子抜けというか・・・ まあ端的に説明しておこう。
奴のデッキなのだが、かなりのパワーデッキだった。 まあ、本当にそれだけだったのだ。 戦略なんてものが全く携わっていないデッキとしか言いようがない。
そして魔法カードも領域カードも、全部攻撃力をあげる為だけのカードだった。 猪突猛進でももうちょっと頭を使うぞ。
で、そんな相手に対してどうしたかと言えば、とことんいなしただけだった。 正直手札に何度も戻している「ツギハギの折り畳み盾」に対する対策が全く無かったようで、攻撃はこれで止めれば良かったし、コストも高かったので、こっち効果で潰しておけば次の手を出すのに苦労していた。
そんなわけで体もカードも力押しな相手に、完膚なきまでに圧勝してやった。 ここまでやり応えの無い相手もそうそういないだろう。 つまらん相手と対戦してしまった。
「ば、馬鹿な・・・ 俺がこんなひよっこに負けるだと・・・?」
「お前がどうやって成り上がったのか知らないけどな。 力のごり押しだけでやっていけるほど、この世の中甘くはねえんだよ。 制約は守って貰うからな。 この村に二度と訪れるなよ?」
「くっくそ! こうなったら・・・!」
そう言って男は、そろそろ制約による天罰が下るか下らないかの辺りで少女の腕を無理矢理取って、村の出口に向かって走っていた。 それはあまりにも一瞬の事で、周りにいた人達も、隣にいた俺も咄嗟に反応が出来なかった。 そして少女も悲鳴をあげることも出来ず、連れ去られてしまったのだった。
「しまっ・・・待て!」
俺は奴の後をすぐに追った。 奴を見失えば、あの子を救出することがまず困難だからだ。 ここに来て往生際の悪い! 絶対に逃がさんぞ!
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「すまない皆さん! あの子は我々が必ず連れ戻しますので、どうかこちらで待機したいて下さい。」
「すみません旅のお方々。 こんなことに巻き込んでしまって。」
「気にすること無いですよ。 ボク達を受け入れてくれた皆さんには、感謝してるんです。」
「奴らのアジトはそう遠くないけど、洞窟とかじゃなくって、地下に巣窟を作ってるんだ。 あの兄さんに伝えてくれ。 奴が曲がって消えたなら、その近くに地下に降りる場所があるって。」
「情報感謝するッス!」
「あんたも行くのかい? 私たちと待っていた方が・・・」
「私は、ご主人様の、元に、行きたいの、です。 それが、私の、生きる意味だから。」
「安心するでござる。 なにがあっても、皆を守って見せようぞ。 さ、セイジが見えなくなる前に、我々も行くで御座るよ。」
「旅のお方、どうかお気を付けて。」
次回、滅茶苦茶ダークな話を出します。
心臓が悪くなるような話を書いてしまったので、見たくない人は次の回を飛ばしても構いません。




