神様からの見解
前回に言ったように、シリアスから始まります
「ひ、人を?」
そう発言したのは、先ほどまで眠たそうにしていたアリフレアだった。
「そうで御座る。」
「ちょ、ちょっと待って下さいッス。 なんでそんなことを聞くんスか?」
「拙者は先程も言ったで御座る。 ここは盗賊がいる、と。」
「それと何が関係が?」
「この先からは、非人道的な行動も取らなきゃいけなくなるってことを言いたいのですか?」
「その通りで御座る。 こればっかりは、避けられぬ道故、知っておかねばと思った次第で御座る。」
「・・・」
そう締めるとみんなが静まり返る。 それも当然だ。 俺達は人殺しなんかしたことはない。 戦ったと言っても人間ではなかったから遠慮はしなかったが、これから先はこう言ったものにも慣れなければいけないのかもしれない。
「・・・眠れぬ夜にしてしまって済まなかったで御座る。 皆はもう寝るで御座る。 別にすぐに答えが欲しいわけではないで御座るからな。 見張りの順番を変えるで御座るか?」
「いや、大丈夫だ。 私も少し、考えておかねばならないことだった。 皆は寝るといい。 私が見張っている。」
ベルジアは考えが追い付いていないようだ。 でも少し位なら、ベルジアは大丈夫だろう。 それよりも俺はアリフレアに気にかけていた。
「アリフレア。 零斗さんの言っていたことは、今は鵜呑みにしなくていいからな。 アリフレアはアリフレアらしくいてくれ。」
「ご主人様、私は・・・」
「零斗さんも言ってただろ? 無理に答えは出さなくていい。 ・・・不安なら、一緒にいてあげるさ。」
「・・・はい。 ご主人様。」
そう俺が布団に入ると、やっぱりさっきの話であてられたのか、アリフレアが俺のところに潜り込んできた。 零斗さん自身も、意地悪で行った訳じゃない。 避けられない道の事を言っているだけ。 ならばこの手に染み込ませるかもしれない。 人の、死の感覚を。
眠っていた筈の目を開ける。 そこは不思議な空間。 そしてここには自分の意志で夢に出した。 それだけ会いたい人がいるから。
「こんばんは清司さん。」
現れたのは女神様と、最近知ったのだが、命に関係する神様なんだという、白ひげの老人だった。 こう言う場合何て言えばいいんだろう? 老いた神だから、老神?
「ホッホッホッ。 呼び方なんぞ些細な事じゃ、気にする必要はないぞ。」
うーん、ナチュラルに心読まれた? まあいいや、そんな事を話すために来た訳じゃないし。
「神様。 俺が送られたこの世界に、他に転生者、もしくは転移者っているんですか?」
「そうじゃのぉ・・・」
そう言って顎髭に手を当てる老神。 言い淀むってことは、あったか思い返しているのか?
「いると言えばいるのだが・・・」
「だが?」
「送ったのが我々ではないからのぉ。」
「え? 転生とかできる神様って、何人もいるんですか?」
「いえ、そのもの達は、神達の遊戯や神達のミスを誤魔化すために送った人々なので、正確には私達の関与はしていないのです。 つまり私達の断りなく、勝手に送った、と言った方が正しいでしょう。」
「関与してないって事は・・・」
「どんな人物なのかまでは把握できていません。」
うっわ。 もしかしてこれから転生者に会うとしても、友好的に出来ないってことだよな? ちょっと待ってくれよ。 ただでさえ仕事がある中で、訳の分からない理由でカードバトルを仕掛けられたら、俺の精神の方がやられるぞ? 理不尽な絡まれをされるのはゲームの中だけで十分なんだけど。
「さすがにそんなことはさせんよ。 わしらとしても、なるべく当たらぬようにはするつもりじゃ。 こんなことでお主の第2の人生を阻害してしもうては元も子もないからの。 しかしそれも限界があるとだけ言うておこう。 わしらには到底分かり得ない力が働かないとは言いきれんのでの。」
そう出来るだけでも十分な気もするから、俺はなにも言わないことにした。
「しかしこう言うてはなんじゃが、あの零斗という人物。 あの者は転生とは違うようじゃぞ?」
「え? じゃあ転移してきたってことなのですか?」
「いえ、零斗さんの場合は少々特殊で・・・異世界に召喚される時、大量の魔力が必要となるのは、おそらくご存知、というよりもそうであると仮定を前提に話していきますね。」
本来の勇者の召喚なんかで、魔術師達が魔方陣を囲って唱えて召喚するあれと考えていいのかな? 俺達のカードゲームで言うところのコスト召喚もある意味似たようなもんな気がするけれど、代償払って召喚する。 そういう点では考えやすいな。
「その時にでる魔力の余波、電磁波のようなものなのですが、それが予期せぬ事態をもたらすことがあるのです。」
「予期せぬ事態?」
「魔力に反応した人や動物、魔物がその世界、もしくは別の世界に転移してしまう現象がある。 我々も度々見かけるのだがな。」
「・・・じゃあ、零斗さんがこの世界に来た理由って・・・」
「ここではない更に別の世界の召喚から生じた魔力がこの世界と零斗さんの体に共鳴し、この世界に転移してきてしまったというわけです。 つまり零斗さんの転移は」
「偶然の産物から生まれた予期せぬ事態・・・」
零斗さんの場合は本当に帰れる可能性があったのか。 でもそれは・・・
「しかし、どうやらあの者は元の世界に未練が無いようじゃし、わしらで同じことが二度と無いように加護を付けておこう。 今度はどこにも飛ばされないようにの。」
「そうしていただけると助かります。 零斗さんには俺の方から説明しておきますので。」
「信じて貰えるかは分からんがの。」
それでも信じて貰うしかない。 自分がいる意味を無くして欲しくはない。 俺にとっても、唯一と言ってもいいくらいに、前の世界の事を知っている人物を失いたくないのだ。 他の転生者、及び転移者の動向は探りたくはないが、警戒しておくことに越したことはないのかもしれないし。 この世界のどこかで、互いに干渉せずに、静かに暮らしていて欲しいものだ。
「でも転生した人間が日本人とは限らないわけだしなぁ。 さっきの零斗さんみたいな場合もあるし、例外的には出来ないかもなぁ。」
「お主は自分の生活の向上よりも、他人の干渉を優先するのじゃな。 変わった子じゃのぉ。」
そう呟かれても、それが俺の本質だから仕方ない。 俺だって無干渉なら構わないが相手の都合だってある。 簡単には見て見ぬふりは出来ないわけで。 うーん考えただけで頭がキリキリしてきた。
「難しく考えることはありませんよ。 なるようになれば、それでよいのですから。」
「それで死んだりしたら意味なくないです?」
「そうしないように、私達が見守ってるんですよ。」
その感性、頼りにしてますよ? そう見ていたら視界がボヤける。 どうやら見張りの時間になったようだ。
「わしらは基本は干渉できんが、もしもの時にはちゃんと助けてやるからの。 神のご加護は強いぞい。」
ボンヤリとした感覚の中でそう言われるが、その加護を・・・使うことが無いように・・・したいんだけど・・・なぁ・・・
「・・・ん。」
「起きたッスね。 見張りの番、お願いするッス、師匠。」
「あぁ。」
そうしてファルケンと代わり番で起き、そして周りを警戒しつつ、俺は最近習慣にしている槍の自主練を行い始めた。 最初こそ振り回されていたが、ようやく体が槍に馴染んできたようで、多少不備があるくらいのふり幅になった。 だがまだまだ実戦レベルには程遠く、振り下ろすよりも突く方が大変だと想い知らされている現状であったり無かったり。
『鍛練で御座るか? 熱心で御座るな。』
声がしたので振り返ると、既に荷支度を済ませた零斗さんが姿を表していた。
『まだ寝ててもいいんですよ? 見張りは俺がしておくんで。』
『元々拙者は眠りが浅い方でな。 この時間に起きても、なんにも問題ないので御座る。』
ショートスリーパーか。 睡眠不足って体に悪いとか聞いたことあるけど、寝過ぎとどっちが体に悪いんだろうか? ま、医者じゃないからどうでもいいけれど。
『零斗さんだけなら丁度いいや。 ちょっと神様と話をして、零斗さんの事を聞いてきたんだ。』
『汝、神に会えるのか?』
『成り行きでね。 で、零斗さんの場合は、どっかの転移魔法の余波によるものだって言ってたんですよ。 で、それは神様達にとっても予期せぬ事態らしくって。』
『・・・そうで御座ったか。』
『零斗さん。 改めて聞きたいんですけど、元の世界に戻りたいですか?』
その答えによってはまた神様に会いに行かなければならなくなる。 だが零斗さんは首を横に振った。
『拙者はもう向こうの世界で生きようと思っても、色々とついてゆかん。 同級生達も、拙者の事など忘れて、それぞれの生活をしていると願っているで御座る。 拙者はこの世界で生きる道を選んだ。 それに後悔はない。』
そう断言する零斗さん。 なら神様の所にもう一回行くこともないか。 そうして俺と零斗さんは、日本語で久しぶりに語り合っていたのだった。
ここで2人とも帰らないことを言っておいた方が後々楽かなと思った次第です。




