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カードゲーム世界で始める下克上  作者: 風祭 風利
第二の章 世界を回る
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小さき国王

 俺達は促されるがままに座り、とりあえず手紙を渡した。


「それじゃあ読ませて貰うよ。」

「読みながらでいいから質問に答えることは出来るか?」

「答えられる範囲なら。」

「なんですぐに現れなかったんだ? それに、玄関の鍵が開けっ放しだったのも気になる。 あれじゃ「どうぞ入って下さい」と言わんばかりの行為だぞ?」


 疑問を一つ一つ潰しておかなければ、どうも気が済まない。 納得の出来る解答は持っていることを、俺は目の前の少年国王に委ねた。


「それは君達が言っていたことじゃないか。 「泥棒と鉢合わせになるわけにはいかない」って。 この時間帯は誰も来ないって、みんなが言わないだけで、そう言う風に決まっているんだ。 だから玄関は開けっ放しにしているのさ。 もっとも、あのドアには、鍵なんてものが存在していないから、閉めれないって言うのが、正直な本音。」


 この少年国王、意外と掴み所がないな。 本当に年下かと思わせる程度には、知力がある。 戦略戦になったら、おそらく負ける。


「じゃああの積み木の音は俺達を追い出すためか?」

「人間というのは視覚よりも他の感覚の方が実際は優れているんだ。 1つの感覚で不快に思うだけで、目に見えない恐怖を勝手に案じるからね。」

「言い得て妙であります。 アレクサンド様も、我々が入ってこられた時、人知れず恐怖をなされたと、誠に勝手ながら推測致します。」

「うん。 でも君達がどういう人達か分かったから、こうして面と向き合う事を選択したんだ。 それと、そんなに堅苦しくすることはない。 名前も長いから「アレク」でいい。」

「じゃあアレク。 これは本当に聞いていいかどうか分からないことだ。 答えたくなければ、答えなくて言い。」


 その俺の言葉に、アレクは読んでいる手を止めた。


「君の両親は・・・前国王はどこにいる?」


 そこまで大きくない部屋とはいえ、1人で今の現状を棲んでいるとはあまり思いたくはない。 勝手な憶測混じりなのは分かっているが、それでも国王と認めるには、まだ不十分な点がいくつかあるからだ。


「・・・それを聞いてどうするつもり?」

「別にどうもしないさ。 ちょっとした疑問だよ。 あんたが本当に国王になっているのか、()()()()をしているのかの、確認だ。」


 そう告げるとアレクは読み終わったのか話をするためか、手紙を机に置いた。


「君も人が悪い・・・まさか僕を試そうって言うのかい?」

「どう思われようが構わないが、これは俺の今後の方針に関わることでもある。 さっきも言ったが答えなくないならそれでも構わない。」


 そう言い返す。 そして互いに見合った後に、アレクがため息をついた。 察するに安堵のため息だろう。


「君のその瞳、自分を隠す事をしないのと、相手の全てを見透かす勢いのある瞳だ。 こんな瞳を持つ人間は見たことがあったかな?」

「俺はそこまで仰々しい人間じゃないぞ? これでもただの一般人だ。」

「謙遜・・・そして遠慮。 外交官に任されたのはそこに惹かれたからだろうね。」


 そう言って一区切りつけたところで、また口を開く。


「僕の両親、前国王はご存命だ。 僕は役目を担った身ではあるけれど、まだこれでも王位継承についてはまだ行っていないから、僕が王になったのを知っているのはこの街の人間だけさ。 全国土に知らせるには正直時間がかかりすぎるからね。」

「じゃあ、両親はどこに?」

()()()王宮に棲んでるよ。 むしろこっちは別荘扱いだ。 僕は堅苦しいのはあまり好まないし、この家が好きだからね。 1人でもやれるようにって、ここを任されたって訳。」


 なるほど、それでやたら簡素な家具の配置や材質だったのか。


「寂しくなったりはしないのですか? 同じ国土とはいえ、離れているとなると・・・」


 ベルジアも今や自分の国にすらいない。 そう考えれば境遇が似るのだろう。


「別に寂しくはないし、月一で様子は見にきてくれるから。」


 本人が納得しているのならば、俺達はこれ以上言う必要もないだろう。


「さて、話が逸れてしまったようだけれど、本題に入ろうか。 手紙に関しては了承はするよ。 まあ今の国家の現状で、拒否する理由が見当たらないしね。 手紙は誰に渡せばいいのかな?」

「宛名は「マーキュリー国王 ミカラ・マーキュリア」様にしていただきたい。 アレク国王様。」

「分かった。 なら返事は次の船便で持っていかせるとしよう。 さてと・・・」


 そう言って俺達に改めて目を向ける。


「せっかくの客人にもてなせなくて申し訳ないと思っているよ。 でも許して欲しい。 僕からしてみても、君達の方がイレギュラーな訪問だったからね。」

「・・・こっちが不法侵入しておいて、「お茶を出して」なんて言える立場じゃないのは重々承知だよ。 あんたが謝らなくていい。」

「心が広いんだね。」

「正論を言ってるだけだろ?」

「それで、君達はこれからどうするのかを聞いてもいいかな? 君達が質問を僕に質問をしたのだから、僕の質問も答える義務はあるでしょ?」


 そういえば今後の方針をそこまで詳しく考えていなかったな。 いや正確にはどういこうかというのを考えていなかったのだ。 まあ目的だけでも伝えておくか。


「俺達はオストレリアと同じように、同盟国としての手紙を渡しに行く予定だ。 それが俺達に与えられた使命だからな。」


 これは嘘ではない。 というかこんなのを嘘だと思われるのは心外だ。 実際にアレクに渡した手紙にはそんなような内容の手紙だった筈だから、少なくとも信憑性はあるはずだ。


「そっか。 君達なりの使命があるようなら、僕は無理に君達を引き留めたりはしないよ。 でもどちらの方面に行くかだけは知りたいかな。地理的条件について、なにか情報を与えれるかもしれないしね。」

「俺はそこまで詳しくはないが・・・どうだ? ベルジア。 意見はあるか?」

「それなら1つ、私達はハーレーストラという国に向かいたいのですが、地図を見る限りでは、海の一部がこの部分に流れて、大きな湖と化しております。 当然船を使わねば突っ切ることは出来ないでしょう。 しかし船などすぐには用意出来ません。 そうなればこちら側から回っていかねばならないと感じております。」


 そう言って地図を見せて、指でなぞっていく。 するとアレクはなにかを考えるように顎を触っていた。


「確か最近、そこには橋が架けられたって聞いたな。」

「本当ですか? それなら我々も荷馬車で・・・」

「待てベルジア。 喜ぶのは早い。」

「何故だ? 橋が架けられているのなら、そこからハーレーストラに行けばいい。 それのどこに不安要素があるのだ?」


 それをこれから聞くんだよ。 ベルジアは賢いんだが注意力が散漫になるのが玉に瑕だ。 注意深く見聞きすれば、違和感にだって気付けるだろうに。


「アレク。 その話を聞いたのは誰からだ?」

「商人からだね。 この街で訪問販売をした後は国を去っていったよ。」

「その商人、どっから来たか言ってたか?」

「ハーレーストラからって言ってた。」

「・・・それは何時の事だ?」


 アレクは俺が聞きたい意図が分かったようで、表情を険しいものにしていった。


「確か2週間前だよ。」

「それまでに橋を架ける計画は立ててたか?」

「立ててはいたけれど、承認は下りてない。 人数と年月がかかりすぎているから。」


 これは決まりか。 どうやら次のハーレーストラはこうは上手く行かなそうだ。 やれやれ。


「話から推測するに、ハーレーストラの独断で橋を作ったということになるが・・・橋を架けたらこちらの国にも分かるのではないのか?」

「アレク。 この湖の回りで、国境に入ってもバレない場所、もしくは国境のところに検問がない場所はあるか?」


 そういうとアレクは湖の左上側を指した。 そこはオストレリアとハーレーストラの国境の辺りになっている。


「ここなら通ったことがバレないし、入られてもすぐには気付けない。」

「なぜそのような場所に橋を架ける?」

「これは今後起きることかも分からない憶測だが・・・」


 俺の一言は、この場にいる全員の認識を変えた。


「ハーレーストラは、もしかしたら、国家戦争を起こすかもしれない。」

「・・・それはこちらとしても痛手になる。 すぐに船便を手配し、僕はマーキュリーに向けて手紙を出す。」


 そう言ってアレクは急いで紙とペンを出し、綴り始めた。


「ベルジア。 ここから先は、仲良しこよしで同盟を結べるとは考えない方がいい。 同盟を結べそうにないなら容赦なく切っていくぞ。」

「・・・了解した。 ベルジア・アスラン、貴殿の指示に従おう。」


 そうして俺達3人は、改めて今後の事を話し合うのだった。

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