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カードゲーム世界で始める下克上  作者: 風祭 風利
第一の章 今の世界を知る
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少女の境遇、大改造

奴隷(だと思っている)少女、保護

 さて、連れてきたのは良いものの、実際にどうしたものかと考え込んでしまう。 まずは身なりからだろうか? それとも食事をさせる? 全部をやるにしても順番と言うものがある。 それらをどうこなしていくか・・・

 そんなことを考えていたら服の裾を引っ張られた。 なにかを喋りたそうにしていたので聞くことにした。


「どうした? なにか話したいことがあるのか?」


 少女を刺激しないように優しい口調で話しかける。 するとアリフレアは口を開いてくれた。


「あなた様が・・・私の・・・新たな・・・ご主人様・・・なのですか?」

 ・・・ん? ご主人様? なんの事を言っておるのだろう?

「俺は別に君のご主人様じゃないぞ? 俺は君をあいつらから引き離しただけなんだから。 でもそのまま君を放置しておくのも良くないから、こうして出歩いてる訳。」

「私は・・・奴隷の身・・・です。 なので、ご主人様が・・・申すことを・・・体が壊れてでも・・・行わせて・・・いただきます。」


 会話が成立しないと言うか、互いに一方的な事を話しているように感じた。 それに彼女の今の言い方、もしかしたら「自分は奴隷なんだ」という意識を刷り込ませてしまっているかもしれない。 指を顎に当てて考えた後に、もう一度アリフレアに向き合う。


「アリフレア。 君は奴隷でもなんでもないんだ。 もしそうだったとしても、それは俺が解放した。 だから君の好きにしたらいい。 君のわがままを言ったら良いじゃないか。」

「それは・・・出来ません・・・ご主人様に・・・お手を患わせる・・・訳には・・・いかないので・・・」


 こりゃかなり重症な感じだな。 刷り込まれて、そして自分もそうだと信じてしまっている始末かもしれない。 人間簡単には自分の事を変えることは出来ない。 まずは目の前の問題を解決していこう。


「分かった。 最初からそうしろと言う方が難しかったよな。 だからまず最初の命令を言おう。 これから俺が行うことに()()()()()()従うこと。 次に俺が命令をするまでは、「はい」も「いいえ」も無しだ。 分かったら頷く。 分からなかったら首を横に振る。 いいね?」


 その言葉にアリフレアは縦に首を振った。


「よし。 じゃあ行こうか。」


 そう言ってアリフレアの手を優しく繋ぐ。 そして彼女のペースに合わせて歩くことにした。 向かうべき場所、やることはこの一日で出来ることだから。


「そんなわけで、この子の髪の毛を手入れしてくれませんか?」


 まず向かったのは今朝訪れた美容院。 店員さんはアリフレアの格好に少し驚いていた。


「どうしたの? この子。 なんでこんなにボロボロなの?」

「さっきまで奴隷みたいに扱われていて、俺がその状態を解放してあげたんですけど、ちょっと後遺症が大きくて、自分は奴隷なんだと思い込んでいるみたいなんです。 なのでまずは、身なりとかから整えてあげようかと。」

「・・・ふぅん。 まあいいわ。 なら別人のようにしてあげる。 お高く付くわよ?」

「お、お手柔らかにお願いしますよ?」


 そう言いながら店員さんはアリフレアを椅子に座らせて、準備を始める。 アリフレアはその様子に戸惑っているし、俺の方を何度も見ている。 だが、俺は敢えて何も言わずに優しく微笑み返すだけだ。 「彼女に任せておけば良い。」 「悪いようにはしないから心配しなくていい。」とアリフレアに分かって貰うように。


「凄い! 本当にさっきまでのアリフレアとは別人に見えますよ!」

「この街では私の店に通う人が多いからね。 君も初めてだったし、せっかくだからサービスしておいたよ。」


 髪の毛を整えて貰えるだけでも十分だったのに、肌にはハリが出て、目元口元の角質も落ちて、とても綺麗になっていて、服装を直さなければ失礼に値する位に、見違えっていた。 もちろんアリフレア本人も、最初こそ戸惑ってはいたものの、鏡に移る自分を見て驚愕をしていた。


「うんうん。 綺麗になったわよ。」

「本当にありがとうございます。 それじゃあお代を。」

「はいな。 えっとそれじゃあ・・・」


 そう言って勘定をすると、俺が髪を切った時の値段の4~5倍くらいの値段だった。 勿論これくらいなら問題なく払えるので支払いを済ます。


「値段も少しサービスしておいたわよ。 その子、大切にしなさいね。」


 店員さんと別れ、美容室を後にして、次に向かうのは洋服店。 アリフレアの格好はボロボロのワンピース1着のみだ。 髪や肌を整えて貰ったので、女の子らしい服装を着て貰うのが一番だ。 洋服店に入り、タグを見て値段を確認し、店員を呼ぶ。


「すみません。 この子に合う服をあまり高くない範囲で見繕って頂けませんか?」

「畏まりました。 それではこちらへ。」


 アリフレアの手を率いて入っていく。 勿論この時もアリフレアは俺の方を見ていたが、大丈夫だと伝えておいた。 自分で彼女に命令しておいてなんだったのだが、やはりある程度は喋っても良いという命令にしておけばよかったと今更ながら思った。


 それから20分。 ワンピースも一新して、白から薄桃色に代わり、整えていた髪も纏められ、先ほどまで奴隷のように扱われていた少女とは全く別人になった。


「ご、ご主人・・・」


 アリフレアは俺の事を呼ぼうとしたが、命令に忠実にするように口を手で覆った。 やっぱり感想くらいは言わせた方が良かったかな。


 洋服店を出ると日が沈みかけていた。 そんな景色を見ていると、「キュウゥ」という可愛らしい音が近くで聞こえた。 もしやと思いアリフレアの方を見ると、恥ずかしそうにお腹を押さえているアリフレアの姿があった。 思えばあれから何も食事をさせていないことを思いだし、暗くなりそうだったので最初に立ち寄った宿に戻ることにした。


「すいません、宿に泊める人間を1人増やしたいんですが、部屋や料金ってどうなります?」

「お値段は大人分と小人分の値段になります。 お客様は大人分はもうお支払い済みとなっていますので、小人分のお値段を追加で頂くのみの形になります。 また部屋はそのままお使いください。 布団を新たに用意致します。」

「ありがとうございます。 そうだ。 食事ってこの宿だとどういう形になるんですか?」

「このフロアの奥に行きますとお食事処が用意してありますので、朝昼晩のお食事はそちらでお取りください。」


 それが聞ければ十分だ。 アリフレアの分を支払って、奥の食事処に足を運ぶ。 ドアを抜けると少し酒場のような雰囲気を醸し出している場所だった。


「いらっしゃいませ。 お二人ですか?」

「はい。 ここの宿を利用しているのですが。」

「畏まりました。 ではお席にご案内致します。」


 そう言って席について、メニューを見る。 その時アリフレアはどこかソワソワしている様子だった。 というかそろそろ命令を上書きしないとな。 いつまでも喋れないのは辛いだろうし。


「アリフレア。 命令をしよう。 俺と楽しくお喋りをしよう。 君の事をもっと知りたい。」


 その命令にアリフレアは驚きながらも、ゆっくりと口を開いてくれた。


「私は・・・アリフレア・ナルティ。 元々は・・・捨て子・・・でした。 前のご主人様に・・・拾われてからは・・・ずっとあのような・・・生活をしていました。」


 料理を適当に選んだ後にアリフレアが語ったのは、拾われて俺と出会うまでの話。 彼らの世話を基本的にやっていて、やり方などは最初に殴った方が教えてくれたものの、それ以降は自分でどうにかして気分を害さないように振る舞っていたのだそうだ。 俺とバトルをした方は特になにもしてくれず、ただただ自分の暇潰しの為にアリフレアを弄んでいたのだそう。 最初に殴る相手を間違えてたか。


「なので・・・こうして新しい・・・ご主人様に・・・色々と施しを・・・受けてもらって・・・私は何をして返せば・・・いいのか・・・分からなくなって・・・いるんです。 あの人たちの・・・言っていた・・・ご、ご奉仕と言うものを・・・すれば・・・返せるので・・・しょうか?」


 考え方なんてそんな簡単には直らないからなぁ。 まだまだ問題点はありそうだ。


「お料理をお持ち致しました。」


 そう言って店員さんが様々な料理を持ってきてくれた。 その料理の数々にアリフレアの目は当然奪われている。 スープにスパゲティにステーキ。 異世界ならではという訳ではないが、ファンタジー飯と言えばやはりこういった形だろう。


「ご主人様・・・これは・・・」

「2人で一緒に食べるために頼んだんだ。 遠慮しなくていいぞ。」

「そ、そんな! 私はただ見ているだけで・・・」


 きゅるるるるるー


 続きを言おうとした時にアリフレアのお腹が鳴り、アリフレアはそれはもう心底恥ずかしそうに、顔を真っ赤にして俯いてしまった。


「アリフレア。 さっきも言ったが君は奴隷じゃない。 だからこうして食事を共にすることは、なんにも不思議なことじゃないんだぞ? 小皿によそってあげよう。」


 俺はスパゲティを適量載せて、アリフレアの前に置く。 それを見てアリフレアは俺を見て、手でスパゲティを取ろうとしたのでその手を止めさせる。


「ご主人様・・・?」

「手掴みは行儀が悪いから、フォークを使って食べよう。 それと料理を食べる時は真摯に向き合わないといけないから、その作法を教えよう。 これは今後やってほしい「命令」として言っておく。 じゃあ、両手を合わせて。」


 アリフレアは言われたように、両手を合わせる。 そして俺も両手を合わせて、日本人としての礼儀作法の言葉を紡ぐ。


「いただきます。」

「い、いただき、ます。」


 そうして俺達の食事は始まったのだった。

アリフレアの容姿としては、幼い感じのイメージになりますが、身長的な話であることだけは言っておきます。

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