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現代魔法少女の受難  作者: 串牡蠣キュウエイ
3/3

順応と保身

両日中に日本中は大混乱に陥った。突如として物理法則や科学的な概念を通り越して発生する謎のエネルギー。それは長らく人類史の中で「魔法」と呼ばれ人々が焦がれてきた存在そのものであった。

宇宙より人にもたらされた、人の手に余る「魔法」。未知の未曾有の出来事に行政各機関は大パニックに陥った。警察機構の現状の法整備では対処できない事件が数多起こっていったのだ。

そうして発生する数多の「事件」に日本は振り回されて行くことになる。それは縁とほづみも例外ではなくなるのであった。



「ほづみからLINEだ」


ほづみ【小学校お休みになったね】

ゆかり【うん。でもお父さんは会社行くって】

ほづみ【ウチもとうさん会社行ったよー。かあさんは家いる。ウチと妹が心配だって】

ゆかり【お父さん社畜だから】

ほづみ【日本人みんな社畜よ。】


ゆかりはいつものようにベッドに寝転びながらスマホを操作する。ほづみの母は働いている。バリキャリってやつだ。ゆかりの母親は専業主婦。という態になってはいるが、不器用さと奇抜なセンスが光る母君を果たして専業主婦と呼んでいいのか甚だ疑問である。

 この間はキャベツをひと玉むしって千切ったものを大皿に山盛りにして「サラダだよ」と出された。父は黙ってその皿を台所へ持って行き(捨てるのかとハラハラしてついて行った)おもむろにまな板と包丁を出しゆかりに向かって

「ゆーちゃんこの皿の4ぶんの1くらい千切りにして」

と言った。

 言われた通りにサクサク慣れない手つきで切っていると父が「ドレッシングない・・作るか・・・レンチンで柔らかくしたのにツナ缶混ぜて・・・あと即席キャベツの浅漬けでいいか」などとブツブツ言いながら大皿のキャベツを器用にさばいて行き、結果食卓には


①唐揚げの添え物の千切りキャベツ(不揃い)

②レンチンキャベツとツナ缶の和え物

③さらに小さく千切ったキャベツのサラダ(オリーブオイルと塩とマスタードと酢のドレッシングかけ)

④キャベツの浅漬け


 が並んだ。ものの10分足らずで大変身させたお父さんすごい。キャベツに魔法をかけましょう的な感じですごい。今ツイッタランドで「俺様こんな能力できるぜ」動画を早速投稿してイキってる新人魔法使いより全然すごい。家事えもんまでは行かないけどでもしゅごい。


ゆかり【そういえばニュース見た?世界中からお医者さん来てたねあと偉い人とか】

ほづみ【そりゃ彗星見ただけで魔法使えるようになるとか・・・やばいっしょ】

ゆかり【日本人モルモットやん〜いい検体だよ解剖されたらどうしよう】

ほづみ【あながちほんとになるかもよ〜 てかツイッター見た?SF研究家のゴマタローさん有識者として総理大臣官邸に呼ばれたんだってえ】

ゆかり【アルファツイッタラー呼ぶのかガースー。シンゴジラみたいだな・・・】

ほづみ【ウチら一人一人ゴジラってこと?】


「いやそういうわけじゃなーいし!」

ゆかりは抱えていたダッフォイ〜テディベアを思いっきり潰した。


ほづみ【だって彗星見て魔法でしょ?宇宙から来てるものだから放射線持ってるじゃん。ウチら放射線浴びたことになるじゃん?んで驚異的な進化遂げたじゃん?核廃棄物食べたゴジラと変わらなくない?】


そういう考え方できるのか・・・あのスクリーンに映ってた背びれのついた怪物と自分の共通点とか探したことない。まさか今の自分の状況がそれだとは・・・ほづみって本当頭柔らかいなあ。頭いいし。


ほづみ【ゴジラはビーム出すけどウチらも出来んのかな?】

ゆかり【内閣総辞職しちゃうからやめて!!家の壁真っ二つになるよ!?】


既読がつかない。まさかもうやっちゃったあとなんだろうか。真っ二つになった壁が屋根を支えられなくなり崩れ落ちて瓦礫の中なんだろうか。どうしよう、警察呼ぶべき?110コールしたほうがいい?

心配していると写真が送られた来た。段ボールの前に紙コップが置かれている。


ほづみ【こうして段ボール三つで防御して、紙コップ切れるかどうか試す!】

ゆかり【ビームは段ボールじゃ防げないから!!】


既読がつかない。今度はガチでやったやつだ。ああどうか悲惨な事態になりませんようにと天に祈るばかりだ。

写真が送られて来た。左手で横一文字に切られた紙コップが写っている。


ほづみ【イケたわあ】

ゆかり【怪我してない!?】

ほづみ【全然平気。なんか赤のビーム出た。意外と細かく調節できたよ】


一点だけ爪一枚分くらいのサイズの穴が空いた段ボールが写った写真が送られてくる。

ほづみ【ほら段ボールほぼ無傷】

ゆかり【こちらの穴は。。。?】

ほづみ【最初だけミスった!家は無事!】

ゆかり【あああああ】


今度は右手の人差し指から15センチほどの棒状の赤の光が伸びている写真が送られて来た。人差し指から赤い光の杖が生えているようだ。


ほづみ【こんな感じでビームの長さ変えられんの。やってみ?】

ゆかり【いや怖いからいいや。それよりそのビームを防ぐバリアを体に張りたい。】

ほづみ【それ大事だな!今からやろ!お隣さんがビーム打って来た用にバリア張ろう!】


お隣さん物騒かよと思いつつ、今のこの状況だと自己防衛は何よりも大切だ。うっかり見知らぬ人にビーム打たれてもおかしくない状況なのだ。ニホンまじディストピア。賢いほづみと一緒なら命を守る大切な壁を作れるに違いない。


ほづみ【あれじゃない?クリリンのことかーっみたいな金色のオーラ出したらいいんじゃね?】

ゆかり【それ攻撃する用のオーラだよね・・・?私はエクスペクトパトローナム的なふんわりしたバリアを想像してたんだけど・・・】


頭が柔らかすぎて発想が斜め上だ。ここは自分の意見を押し通す。


ほづみ【そうかそうか!なんかそっちの方がいいかも!守るための魔法!】

 

よかったわかってもらえたようだ。では早速自分でふんわりしたイメージで包む・・・うん?


ゆかり【迂闊だったよほづみちゃん・・・これバリア張っても別の人に攻撃してもらわないとどれくらい耐えられるのかわかんないや】

ほづみ【今ゆかりん家の方角にビーム出そうか!】

ゆかり【やめんか!!元町6丁目が壊滅状態なるわ!!】


「うーん会わないとできないかあ〜・・・」


天井に向かってダッフォイ〜テディベアを掲げる。なんとなくできるような気がしてテディベアから手を離すと、ぷかぷかと宙に浮いた。

 子どもの順応力とは希望に満ちた恐ろしいもので、もうゆかりの心の中には宙に浮くぬいぐるみに違和感はこれっぽっちもなかった。



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