プロローグ
平成31年3月29日午後2時16分
各国の天文学者が「日本の太平洋沖120キロ地点に落下見込み」とした超巨大隕石は不幸にも大幅な軌道のズレを観測し東北地方山形県と宮城県の県境に位置する奥羽山脈の奥深くに着弾した。
日本中で隕石の光の尾の軌跡を見せる天文ショーで人々を惑わせたそれは、直径61メートルのクレーターを構築した。
私有地の山中とはいえ住居区に落下しなかったことは不幸中の幸いとされた。
この隕石による被害はそれだけ。クレーターや残された隕石の残骸が研究者の格好の餌になって、隕石の軌道の誤算の原因究明に躍起になり、新元号が発表され今年は新しい時代の幕開けとなるはずだった。
のだが。
しかし。
隕石が光の尾を見せたその瞬間から、これを見た人たちに異常が発生した。
『魔法が使えるようになってる』
「うわ〜やばめっちゃ飛ぶやーんすごい綺麗」
長い薄茶色の髪をハーフアップにした10歳の女の子がココナッツミルクのタピオカを飲みながら空を見上げる。
「なんかあれだね、この後中身が入れ替わっちゃいそうなくらい綺麗な隕石だね」
黒髪のクリクリのショートの10歳の女の子はチョコバナナのクレープをかじりながら器用に片手でスマホを空に向けている。
「やめろ二つに分かれてこっち飛んできたらどうすんのよ」
「手のひらに縁の名前書いといたほうがいい?」
「[ゆかり]って?いやていうか私ら巫女さんじゃないし」
「前世はそうだったかもしれない!」
「あの曲流れるからやめてw」
「あっ」
クレープをかじりながら撮影していたほずみの手から、クレープを食べるときに千切った紙が一切れ落ちた。
「も〜撮りながら食べてるから笑」なんて軽口を言いながら拾おうと縁が手を伸ばしたとき
空中に紙切れが留まった。
ひらひらと不安定に落下していた紙切れがいきなり空中で何の支えもなくぴったりと動きを止めて浮かんでいる。
二人はびっくりして声も出ずただ空中に止まったままの紙切れを見つめる。
同時に縁は何だか眩しいなと思い光源の方を見つめる。
ほずみの黒髪が金色に光っていた。
「ほずみ」
「紙が浮いてる何でだ」
「ほずみ」
「なんか顔まわりが眩しいんだけど何でだ何これ」
「ほずみ、髪、光ってる・・・・よ・・・」
「入れ替わってるーーーーー!!!!!?????」
「落ち着いてーーーーーーーー!!!!!!!」