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合唱の練習は予想通りグダグダで、奥村さんは何か言いたそうにしていましたが指揮棒を止めることはしませんでした。
私は若干、一生懸命歌いたい気持ちに駆られましたが恥ずかしさが勝ってみんなの声に隠れるように歌うことしかできません。
夜の学び舎に咳やため息まじりの翼をくださいが弱々しく響きます。
文化祭当日、生徒の保護者や家族がちらほらと体育館に集まりました。
生徒や先生方が来ても体育館のスペースはまだまだ広々と余っています。
他の学年の人達は給食の時間にすれ違う程度で、その人達が合唱する間、確認するようにまじまじと見てしまいました。
私たちの蚊の鳴くような翼をくださいも終わり、後は数少ない部活動の出し物です。
マジックショーや落語、ダンスなどなかなかに積極的なステージで合唱で冷え切った客席も、段々とあたたまってきました。
そして最後は軽音部のミニライブでした。
男性ばかり四名の編成で、今流行っている歌からアニソンまで全部で三曲演奏しました。
私も知っている曲ばかりです。
音が大きくてドラムやベースの衝撃がお腹の底を刺激します。
みんなも立ち上がって手を叩きます。
夜の広い体育館が音でいっぱいになります。
ギターがボーカルが私たちを煽ります。
先生も保護者も生徒も歓声をあげました。
演奏が終わるとめいっぱいの拍手をして私は笑っていました。
すごい、すごい!
すごく楽しい!
この世にはこんな楽しいことがあったことを私はまったく知らなかったのです。