「風の精霊の加護」を受けに行け!だそうです
2000回のコンティニューを繰り返して、気づいたことがある。
それは、この能力のルールだ。
その1、コンティニュー地点は固定(スタート地点の、いかにもファンタジーな街中)
その2、コンティニューすると、手に入れた装備などが全てリセットされる
その3、入手した情報などを次のコンティニューに持ち越せるのは、俺とチロルのみ
そして、大事なことが1つ。
チロルは、ポンコツサポーターだった。
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……さて、2001回目。
当初は心が躍ったファンタジーな街並みが、今では見覚えしかない。
冒険開始地点でこんな告白をするのは非常に心苦しいが、
些細なミスの積み重ねで2000回も死んだ身としては
クソゲーを強制プレイさせられているという苦しみしか感じない。
……いや、クソゲーならばまだ良い。終わりがあるのだから。
果たして俺は、この世界で何を成し遂げればクリアになるんだろう。
「クソザコノロマのタナカぁ、そろそろ「風の精霊の加護」受けにいこうよぅ〜!」
可愛らしい声によるキツい煽りが脳内に直接語りかけられる。
……なんだよ「クソザコノロマのタナカ」って。
そしてこいつ、「風の精霊の加護」について全然詳しい説明しねぇ。
どうしてこんなに勧めてくるのかも、全く分からな━━
「━━タナカ!」
「……はぁ、わかってる」
やや強めの強風を、地面に伏せることで受け流す。
風が吹いただけで地面に伏せ、さながら土下座のような姿勢を取っている俺。
それに対する周囲の奇異の目は痛いが、死ぬのに比べればなんてことない。
……ごめんなさい、嘘つきました。
俺の豆腐メンタルに、冷たい目線はガッツリ刺さる。
しかも、終わりのない無限コンティニューに心が憔悴して━━
……そういえば、どうしてチロルはこんなに元気そうなんだ?
俺がこの場所に立つのは2001回目だぞ? アイツも特に休んでいる様子はないのに。
俺は「!」をつけられる気力なんて、とっくになくなってるんだが。
「おぅおぅ、ようやく聞いてくれたよぅ!
ボクがこんなに元気なのは「精霊の加護」があるからなんだ」
「……ごめん、もう1回言って?」
「……クソザコノロマのタナカ?」
「それじゃねぇよ! 直前の「精霊の加護」ってやつだよ!」
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……ポンコツサポーターの説明によれば。
「精霊の加護」があれば、様々なサポートが受けられるらしい。
それを言わなかったのは、聞かれなかったからだそうだ。Fuck You!
というわけで、チロルの指示を積極的に煽るようになった俺。
1番お手軽な「風の精霊の加護」は、すぐ近くの洞窟で受けられるらしいので、そこへ行くことに。
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「……で、どうして最高に貧弱な体の俺にわざわざ戦えと?」
目の前のスライムの体当たりに怯えながら、チロルに聞いてみる。
「うーん……必要な事だからだよぅ」
「何も伝わってこねぇんだけど!」
よそ見をしていると、足元に軽い衝撃。
……うん、まぁ言うまでもないけど、目の前が真っ暗になるよね。
1〜3話の言い回しや改行などの変更を行いました。
変更前より、やや読みやすくなったと(いいなぁって)思います。