罪悪感
「どうして君が、・・・・・・。まさか、君が雷神な・・・・・・」
「あ〜、それは無い、ワリィけどな。でも、雷神じゃなくたって、お前を助けに来たことには変わりないぜ。」
親指を立てた拳を女岸に向け、尚も笑顔で話を続ける館田に、女岸は視線を落とした。
「なんで・・・・・・。なんで君が来るのさ! 」
君にだけは、ここに来て欲しくなかった。裏切った僕なんかを助けに来てなんて欲しくなかった。
「全く、どうなってんだよ女岸。雷神連れて来いって言ったのに、わけの分からねー奴連れて来やがって。ホントーにグズだなぁ。」
男はそう言うと、持っていた鉄パイプを女岸に打ちつけた。
「ゔっ・・・・・・。」
「おいっ! お前女岸の仲間なんじゃねーのかよ。」
「はっ? 仲間? クッ、ハハハハハッ。こんなすぐ裏切る奴と仲間なわけねーだろ。お前は知らねーだろうが、こいつはお前たちの学園の守護神を他校に売ろうとしたんだぜ?」
やめろ・・・・・・。
「俺が言うのもなんだが、最低な奴だよなぁ。仮にも同じ学校の奴をここまであっさり差し出すなんてよ。」
やめてくれ・・・・・・。
「わかったか? こいつは友達が欲しいとぬかすくせに、平気で人を裏切るどうしようもねぇ奴なんだよぉ!」
やめろおおおぉぉぉーーー。
「知ってたさ、・・・・・・全部な。」
「へっ・・・・・・?」
「はっ?」
今館田くんはなんと言った? 全部知っていた? 僕が裏切ることも、この計画のことも・・・・・・。
一体君は、何者なんだ・・・・・・。
「ワリィ女岸、俺お前に二つだけ嘘ついた。」
「嘘?」
眉間に皺を寄せ、申し訳なさそうな顔をしてこちらを見る館田。
「一つは、今回のことを雷神に伝えると言ったが伝えてないんだ、ごめんな。」
確かに、このことを知っていたのなら、わざわざ罠に送り出す様な真似はしないだろう。
「そしてもうひとつは、雷神が助けるって言ったのにこのことを伝えてないから、嘘を言ったことにはなっちまう。本当にすまん。友達だなんて言ったのに嘘ついてばっかで、俺は友達失格だな。」
嘘をつかれたって仕方がない。それだけのことを僕もしたんだから・・・・・・。
ガンッ!!
「オイッ!!! 無駄話してんじゃねーよ! お前ら今の状況わかってんのか!? 俺たちは雷神に用があったのに、来たのは本人じゃなく偽物。こんなふざけた真似しといて、お前ら二人タダで帰れると思ってんのか?」
「そんな甘いことは考えてねぇよ。だけどな、少し前まで友達だって言ってた奴が困ってんのに、見て見ぬ振りするのが嫌だっただけだ。」
「館田くん・・・・・・。」
「ほぉ、それでどうしようってんだ、この人数相手にやる気か?」
周りを取り囲む生徒たちは、武器を構え、今にも襲い掛かりそうな雰囲気だった。
「いや、俺は頼みに来ただけだ。」
「頼みだ?」
館田はそう言うと、その場に両膝をついて座り込んだ。
「女岸は本当にいい奴なんだ。だから、今後こいつに関わるのはもうやめてくれねぇか? 頼む! この通りだ。」
次の瞬間、両手を地面につけ、頭を下げながらこの上ないくらいに自分なりの精一杯の姿勢を表すため、彼は土下座をして頼み込んだ。