明日
「で、どうする? もういっそ、殺る?」
「んっ・・・・・・、ここは・・・・・・。確か僕、気を失って・・・・・・。」
「そうですね、とやかく考える必要ないと思います。」
「じゃあ決まりっすね、あとは誰がやるか・・・・・・。」
殺る? なんだか知らないけど今のうちにここから出なくちゃ。
静かに寝かされていたベッドから体を起こすと、ゆっくりと靴を履く。
シャッーー。
「よかった、いきなり倒れられたので心配しました。どうぞ、こちらへ。」
あぁ、どうして僕ばかりこんなについてないんだろう・・・・・・。
「色々とお恥ずかしいところをお見せしてしまって申し訳ございません。私は・・・・・・。」
「しっ知ってます、ここにいる御三方は学園で有名ですから・・・・・・。ですけど、護衛部と言う部があるのは初めて聞きました。どんな部なんですか?」
「はい、この部は学園に申請を届けておらず、故に、非公式組織として活動している部になります。活動内容はいたってシンプル。この部の名の通り、依頼人のありとあらゆる守って欲しいものを守るために尽力すると言うものです。」
「へぇ、でも非公式だと何かと活動しづらくありませんか?」
「その点は問題ありません。この部には、とてつもなく大きな後ろ盾がありますので。」
「どう言うことですか? 」
「この部の代表を務めているのが、この学園の守護神であり、最強の存在である雷神だからです。」
雷・・・・・・神・・・・・・。この部にあの人が・・・・・・。
「すごい・・・・・・、こんなにすごいメンバーがいてくれたら依頼人もさぞかし心強いんでしょうね。」
『ーーなぁ、頼むよ・・・・・・。俺たち友達だろう?ーーー』
一瞬、脳裏を過ぎった苦い過去が、心を締め付けた。
「どうかなさいましたか?」
「いえっ、なんでも・・・・・・。」
言えば楽になる・・・・・・、けど、初対面でいきなりお願いなんて・・・・・・。
まともな友達がいたことのないせいか、人にものを頼む時、どうしていいかわからなかった。
バタァァァン。
そんなやりとりの中、簡単に取り付け直した入り口がまた倒れた。
「おっ、女岸起きてんじゃん。ったく、女の裸見たくらいでぶっ倒れるとか、ちょっと純情すぎやしませんかねぇ?」
「館田くん・・・・・・、その言葉、君にそっくりそのまま返すよ。」
鼻の穴2つともティッシュが詰め込まれている館田を見て、自分と同じような反応を見せたのだろうということは一目でわかった。
バァンッ。
「うわっ! なにすんだ、あぶねーだろーが。当たったらシャレになんねーぞ。」
「なんで修理したばかりの入り口をわざわざ倒して入ってくるんですか!」
「こんなガムテープで貼り付けただけで修理とかマジで言ってんのか!? それに元はと言えば、お前が派手にぶっ壊したのがいけねぇんだろうが!」
ガチャッ。
「だーれーのーせーいーだーと?」
構えた銃は、きっちりと館田を捉えていた。
「すんません、調子に乗りすぎました・・・・・・。もう勘弁弁してください・・・・・・。」
「まあまあ翔さん、コウさんも降参したことですし・・・・・・。」
唐突なシャレに、言い争ってた二人が、ピタリと動きを止めた。
「あれっ? わかりませんでした? コウさんが・・・・・・。」
「いやわからなかったわけじゃないですよ守上さん。」
「ふあ〜・・・・・・、つまんないし、眠いから、もう一度、眠る。」
「こっこらー、ラミさん! 人前で堂々と服脱いで寝ようとしないでください!」
「ぷっ、ふふふふ、ハハハハハハ。」
突然笑い出した女岸の方を見て、またその場に居た全員が静かになった。
「あっ、ごめんなさい、なんだかその、羨ましいと言うかなんと言うか・・・・・・とても楽しそうだったので・・・・・・。」
初めてなんだ・・・・・・。こういう風に賑やかな集まりの中に長く居たのは。
あぁ、・・・・・・僕もこんな風に誰かと笑って過ごせれたらな・・・・・・。
周りを見るたびに心に蘇る過去の寂しさと一人きりだった自分の姿。
いつの間にか今度は涙が頬を静かに伝っていた。
「いきなり笑ったと思ったら今度は泣くのかよ、忙しい奴だな。なんだか知らねーけど、何か困ったことがあったら言えって言ったろ? 悩みとかじゃなくたって、相談だっていい。とにかく、一人で考えることをやめろ。そうすれば、少しは楽になるんじゃねーの?」
そうだ、言ってしまって楽になるのもいいかもしれない。もう、悩むのも疲れた。
「ありがとう・・・・・・。実は・・・・・・」
「本当に色々とご迷惑おかけします。」
ほんの数時間部屋に居ただけなのに、随分と長いこと居続けたような感じがした。
「何言ってんだよ、困ってる生徒たちのためにこの部があるんだから、謝る必要は無いんだよ。よく本当のこと話してくれた。明日は俺達が守ってやっから安心しな。」
「ありがとう、それじゃあまた明日。」
「おう、また明日な。」
別れの挨拶を済ますと、壊れた入り口がガタガタと大きな音を立てながら閉まった。
「なんだか話したら気が楽になって体が軽く感じるや。」
軽い足運びで進む校舎は、すっかり夕陽の光で赤く染まり、ところに寄っては黒い影を落としていた。
ピリリリリリッ、ピリリリリリッ、ピッ。
不意に帰る途中の廊下で、携帯が鳴った。
「もしもし・・・・・・。」
『おう・・・・・・、期限は明日までだぜぇ、まさか、忘れたりしてねぇだろうな・・・・・・。』
「もちろん、・・・・・・忘れてないよ。」
そう・・・・・・。明日になれば・・・・・・。
全てが終わるんだ・・・・・・。
初めて本当の友達になれるかもと思えた人。初めてここに居たいと思えた場所。
その全てを明日、僕は僕自身の弱さのせいで、裏切ることになる。