金の行方
「おいおい、嘘だろ・・・・・・。なんでこんなところにうちの学校の守護神が来るんだよ!!」
「でっ、でもよぉ、ここであいつを倒せば俺たちも・・・・・・。」
「馬鹿言うな! 知らねーのか、学校の守護神がどれだけ化け物染みてるかをよぉ。ここは逃げといたほうがいいぜ阿久田。」
ドサッ。
「痛っ。」
阿久田達は守護神の姿に恐れをなして、女岸を投げ出し、その場から去っていった。
この人が、うちの学校の守護神、雷神・・・・・・。一番強い人・・・・・・。
なぜ現れたかは謎だが、ことがおさまったのを見ると雷神はゆっくりと近づき、無言で手を差し伸べた。
「あっありがとうございます。」
片方の手を両手で取り、立ち上がって雷神の近くに立つと、体の大きさはそれほどなかった。170後半ぐらいだろうか? もっと大きく見えた気がした。
普通に立ち上がった僕を見て無事を確認すると、雷神は振り返り、その場からゆっくりと立ち去ろうとした。
「あっあのっ、助けてくれてありがとうございました。僕、迅雷高校の新一年、女岸 良太って言います。これからよろしくお願いします。」
はっ、感極まって、変なことも言っちゃった。お願いしますってなにをだよ・・・・・・。
その声に雷神は立ち止まり、背中越しに振り向いて、消え去る前に一言だけ僕に言った。
『まずは自分を守れる強さを手に入れろ』
「えっ?」
その一言だけ残すと、雷神はその場からいなくなっていた。
僕はその一言を受け、雷神に自分の過去を見透かされた、そんな気がした。
キーンコーンカーンコーン
「朝に色々ありすぎてなんだか疲れたな・・・・・・。」
四時間目終了のチャイムと同時に机に倒れこむように寝ると、雷神のことを思い出していた。
「まずは自分を・・・・・・か。自分が強いからって簡単に言ってくれるよな・・・・・・。」
ぐううぅぅぅ〜〜〜。
「んっ?」
教室内で盛大に鳴り響いた腹の虫の音の主の方を向くと、自分と同じように机に顔を伏せて寝ている人物がいた。
ぐうううぅぅぅ〜〜〜。
「あっあのぉー・・・・・・。お昼休みですけど、・・・・・・。」
ぐううぅぅ〜。
「お昼ご飯食べないんですか?」
「・・・・・・弁当忘れた。・・・・・・金が無い。」
腹の虫は盛大に鳴いているのに、初めての返答は、虫の息の人が吐くような力のこもっていない言葉だった。
「それは・・・・・・、困り・・・・・・ましたね。」
声をかけておいてなんだが、どうしようもない状態にかける言葉が出てこない。
ぐぐううウゥぅぅ〜〜〜ぅ〜〜〜。
もはや動く気力もない本人とは逆に、腹の虫はこの上なく最高潮に鳴るようになっていた。
「あの僕、お金貸しましょうか・・・・・・。」
ガタッ!
「マジでっ! ラッキー、女岸、お前いい奴だな!!」
せっかく雷神にお金を守ってもらったのに、結局あまり関わりのないクラスメイトにお金を使う羽目になってしまった。