これから・・・・・・
浩也の驚くべき正体を聞いたのに、自分でも不思議に思うくらい落ち着いていた。
こんなに強くて、只者では無いと思っていたし。むしろ、雷神の代理なんて聞いてしっくりときた。
「でも、雷神の代理って・・・・・・、そんなこと可能なんですか?」
「例が無いわけではありません。守護神制度が高校に導入されてからは、あまり知られてはいないのですが、一部の守護神は自分の身を守るために影武者の様なものを立てていたこともある様ですし。しかし、浩也の場合は少し状況が違いますが・・・・・・。」
少しだけ表情を曇らせた翔は、下げていた視線を浩也の方へ向けた。
「俺のは代理だ。影武者と違って本物の身代わりになるんじゃなく、本人じゃ無いと周りにバレない様に、雷神本人になりきって行動しなくちゃいけねぇ。もちろん、強さもな。」
そう言われて、今までの浩也の不思議に思っていた行動にも納得がいく。
初めて警護部の部室に行く前に、浩也が死にそうな程疲れきっていたのは、雷神の圧倒的な強さに近づくために、何かしらの特訓をしていたのだろう。
「つっても、今の俺じゃあ、本物の雷神には程遠いんだけどな・・・・・・。今の俺は、少しだけ人より丈夫で、我慢強いってだけなんだ。」
そんな・・・・・・。葉形に圧倒的な力の差を見せて勝ったのに、あれでもまだまだなのか・・・・・・。
浩也の言葉に驚きながら、雷神の様な守護神クラスはどれほどバケモノじみた力をしているのかと想像すると、寒気が走った。
「けど、なんで雷神の代理なんてやろうと思ったの? 浩也が責任感じるのはわかるけど、無理してやる必要はないんじゃ・・・・・・。」
「確かに、雷神のフリしてると勝負挑まれることは多いし、バレない様に振る舞うのは神経すり減ってしんどいし、いいことなんてほとんどない。」
「だったら・・・・・・。」
日が完全に落ち、街灯が道を照らし始める中。歩きながら話していた浩也はその足を止めた。
「でもな、これは俺がやらなきゃいけない、そんな気がするんだ。理屈とかそんなん関係なく。」
そういい終えると、再度帰り道の方へ体の向きを変え、浩也はゆっくりと歩き始めた。
「・・・・・・ッ。」
かける言葉が出てこなかった。救ってくれた恩人の力になりたいが、今の自分には何も出来ないと、自分自身が一番よくわかっていた。その悔しさと一緒に、力を持たない言葉を押し込んで、せめて、浩也の近くに居続けて、力になれる自分に変っていこうと思った。
そう考えた直後だった・・・・・・。
「あっ、そうだ、良太。」
「んっ? 何? 浩也。」
不意に背中を向けたまま話しかけてきた浩也の方に、慌てて目線をやった。
「お前に一つだけ頼みがあるんだわ、聞いてくれっか?」
「頼み? うん! 何、僕にできることなら何でも聞くよ!」
ただ嬉しかった。こんな頼りな僕に、浩也が頼んで頼ろうとしてくれたことが。
次に浩也が僕に言う言葉を聞くまでは・・・・・・。
「そうか、・・・・・・よかった。じゃあ、明日から俺に極力関わらないでくれ。」
「えっ・・・・・・。」
突然の言葉に、僕の視界は電灯の光が急に落ちたように、真っ暗になった・・・・・・。




