やり過ぎ注意
「フンッ、たかだか一撃凌いだくらいでいい気になってんじゃねーぞ! おいお前らっ! 処刑の時間だ、思う存分やっちまえ!」
館田から少し距離を取ると同時に、 辺りを取り囲んでいた生徒たちが葉形の掛け声と共に、輪の中心部にいる二人に向かって一斉に走り出す。
「うわあぁぁぁーーー、た、館田くん、助けてくれるのはありがたいんだけど、どう見てもこれタダじゃ済まない状況だよね!?」
「あぁ・・・・・・、ヤベェかもな。」
「やっやっぱり・・・・・・。こんな時に言うのもなんだけど、こんなことに巻き込んで本当にごめん!」
「んっ? 何か勘違いしてるみてーだけど、俺がやばいかもって言ったのは、俺たちじゃなくてあいつらのことだぞ?」
「へっ?」
バンッ、バンッ、バンッ。
「グワァァァーーー。」
ドゴッ、バコッ。
「ゔっ・・・・・・。」
バタッ・・・・・・。
「なんだ、何が起きてやがるっ!」
襲いかかる前に倒れていく生徒を見て驚きを隠せない様子の葉形の前に、コンテナの陰から、二人の少女が姿を現す。
「くっ、仲間が隠れてやがったのか。だが、所詮女が二人増えたくらいでこの状況は変わらん。」
「はぁー・・・・・・。おいっ、馬渡場、守上。勝手について来て加勢してくれるのはいいけど、あんまりやりすぎんなよ。」
「まったく、こんな馬鹿正直に敵の罠に飛び込んで行ったんで、少し気になってついて来て見たらボコボコにされてるなんて。一人で充分だって行ってた割には危ないところだったみたいですけど?」
「まぁまぁ翔さん、コウさんのことが心配でしょうがなかった気持ちはわかりますが、冷静に事にあたりましょう。」
「ちょっ、京華さん! 何言ってるんですか! 浩也のことなんてこれっぽっちも心配してませんよっ!」
髪の色に負けないくらい顔を赤くしながら、髪を揺らすほど激しく否定の言葉を並べる翔を他所に、葉形は再度、周りに強く呼びかけた。
「いつまでたっても余裕こきやがって気に食わねー奴らだ。おいっ、お前ら何してやがる、さっきも言ったように女二人増えたところで何も出来ねぇ。とっととやっちまえ!!」
ウオオオォォォッーーー。
二人の登場で、動きが止まっていた生徒たちは、葉形の掛け声と共に再び動き出した。
「ともかく、話は後です。周りの連中は私と京華さんで引き受けてあげますから、葉形は貴方が片付けなさい。」
「まぁ、この人たち相手なら私一人でも充分になんとかなるんですけど、おいしい所はコウさんに譲ってあげるっす。」
「ったく、どいつもこいつも・・・・・・。よしっ、早めに片付けて女岸の新たな人生の始まりを祝って飯でも食いに行くか。」
左の掌に拳を打ちつけ、音が響くと同時に三人は動き出した。
「ヘッヘッヘ、少し懲らしめた後、俺がたっぷりと可愛がっ・・・・・・」
ガァンッ!
「ぐあっ!」
馬渡場の放った弾は相手の眉間を正確に捉え、撃たれた相手は地に倒れ伏す。
「安心しなさい、実弾じゃありませんから。ですが、まともに食らったらしばらく立ち上がれませんけど。」
「おいおチビちゃんよぉ、あんまり抵抗すると痛い目見るぜぇ。」
「自分から見れば、あなた方のほうがよっぽど子どもらしく見えますけど?」
「言わせておけばっ、泣いても知らねーぞ。」
少女は少しだけ口角を上げ笑みを浮かべると一瞬目で追えなくなるほどの速さで動き、流れるように相手を突きや蹴りなどで倒して行く。
「いけませんね・・・・・・。最近気が緩んでいるせいか、力加減が上手くできなくなってしまって・・・・・・。まだまだ私も未熟ですね。」
「クソがっ、使えねぇ奴ばっかだ!全員ウゼェ、殺すっ、ここでお前ら皆殺しだあァァァ。」
「ようやくまともに戦えるな。よくも思う存分殴ってくれたなぁ、葉形さんよぉ。まだ体のあちこちが痛いんですけど。このお返しはきっちりさせて貰いますよ。」
汚れたワイシャツを脱ぎ捨て、首を鳴らして葉形に近づく。
「さて、最終決戦といこうか!!」