8 水色の紳士ディー クラールハイト
「ストラヴィン!」
そのとき、二人の間にわって入った者がいた。
長髪の淡い水色、瞳も水色で、マントも衣装も水色の端正な顔立ちの人があらわれた。
「王に対して無礼な態度、ストラヴィンに代わって、心よりお詫び申し上げます」
すーと頭を下げたその姿はとても優雅で見惚れてしまう。
ストレートのきらきら光る水色の髪がとても美しい姿は、男なのか女なのかわからない。
いっきに周りの重々しい空気が変わり、ふたりとも、毒気を抜かれ、しぶしぶと剣をさやにおさめた。
「ちっ ディー、早かったな」
「ストラヴィンほどじゃありませんが、相変わらずやることが無茶苦茶で、ほんとにもう・・・。
もしやと思って、急いできたかいがありました」
ふう~とため息をついて、王にむきなおった。
ため息をついているだけなのに、その姿もなぜか絵になってしまう。
「王、ごぶたさしております。」
「そなたが来てくれて助かった。礼をいう。」
「いえいえ」
美しい水色の人は、優華の前に歩み寄り膝をついた。
「わたくしは水の精霊王と契約し者、デイー クラールハイトと申します。どうぞ、ディーとお呼びください」
優華の手を取り、そっと手の甲に口づけをした。
ええーー口づけされたよ~~。しかも、手だよ手!
それを横で見ていたストラヴィンは、眉を上げる。
「おいおい~~紳士の顔して、ほんとディーは油断ならん。姫、こうゆう男ほど気をつけた方がいいぞ!」
「ストラヴィンのように、いきなり姫に抱きついたり、姫を抱えるなんて、そんな失礼なことは私には、とても、とても、美しい手に口づけするのが精一杯で」
へ?紳士って、ことはこの人は、男性なのね。
うれしいような、ほっとしたような、残念なような。
昨日、王様が言っていた『守り人』って絶対この二人だよね?
二人が仲良く言い合いをしているところ、おずおずと優華は話しかけた。
「あの・・・、おふたりともお話中すいません・・・『守り人』の方ですよね・・・?」
「姫・・・他人行儀な・・・ほんとに忘れて、悲しいなあ。オレとの愛の逢瀬も忘れたのかー?」
愛の逢瀬って・・・なにそれ~?? 私王様だけじゃなく、この人とも恋愛関係だったってこと??
顔を赤くして困惑していると、王がこちらを見て、睨んでいるのがわかるぐらい殺気だっている。
「ストラヴィン、記憶を無くしている姫が混乱するではありませんか。ほどほどに」
ストラヴィンは平気な顔をして、ケラケラと笑っている。先ほどの王の事もどこ吹く風とという感じ。
「私たち2人は、姫のおっしゃられたように、『守り人』です。ストラヴィンは火の精霊王と契約せしものです。あと2人の『守り人』はまもなくきます。」
まだこんなステキなイケメンがふたりもいるの??
イケメンパラダイスだ・・・。
「あなた達が、異世界から来られた姫のご友人たちですね。あとで、ぜひそちらの世界の話を聞かせてください」
優華の後ろで口をぽかーんと空けている友人たちに『にっこり』と微笑むと、友香と、一樹もなぜか顔を赤く染めていた。
一樹~~その人女の人じゃないよーー!