5 魔法使いゴトボルク
とりあえず、今の状況を整理するんだ。
訳がわからないことだらけである。優華の友人4人は、1つの部屋に揃って、頭を悩ませていた。
城に連れてこられた4人は、男女別々の部屋をあたえられて、驚いていた。
部屋の豪華な調度品、高級そうなふかふかのベット。
とく知美は、テンションマックスでお姫様の部屋みたいと騒いでいた。
「すげえなあ、この世界はまじに、魔法や剣士や王様がいるドラクエのままんじゃんか!」
一樹ひとりだけが、目を輝かせて興奮している。
二次元の中だけの世界が、今目の前に起こっている。一樹は、興奮して頭の中は、この世界のことをもっと知りたいという欲望にかられていた。
「ちょっと一樹おちつきなさいよ~」
知美はひとりで興奮している一樹にあきれていた。
「なにいってんだよー知美だって、きゃーきゃーさっきは叫んでただろうが」
知美は、ばつの悪そうな顔をして黙ってしまった。
今まで見たことない豪華な部屋を見て、興奮していた。
元の世界に戻れば、普通のOLである知美は、とてもそんな部屋に泊まれるようなことはできない。
真剣なまなざしで考え込んでいた雄也がいきなり叫んだ。
「そういえば!」
周りの3人が一斉に雄也に注目した。
「どうしたのよ。びっくりするじゃない。」
「優華は、以前こっちの世界に来たことがあるって周りのやつらは言ってたよな」
大学時代、いつも明るい優華が、その日はなぜか雰囲気が違っていた。どうしたのか話を聞くと
「わたしね、変な夢を最近よく見るの。でもそれが、まったく思い出せなんだ」
「でも、起きると、なぜか涙を流しているの」
あれは確か、大学2回生の時だったはず。奇異な発言をよくしていた優華だったが、いつもとは毛色の違う奇妙な話をしていたため、印象に残っていた。
「すると、優華はその頃にここに来た可能性があるってことか」
「だって、おかしいもの。いつもぼんやりして、おっちょこちょいのあの子が、さっきのような発言するなんて、まるで別人よ・・・」
知美の発言に、他の3人はうなずいていた。
一瞬変貌した優華は、いったい何だったのか。
まるでオカルトでいうところの『憑依」というやつに似ていると一樹は語った。
霊魂が、生きている人間の身体を借りて、しゃべたりする。有名なアメリカの映画にある恋人を亡くした彼女が憑依した霊媒師の身体を借りるというストーリー。
コンコンと部屋をノックしメイド服の女性が部屋に入ってきた。
「失礼します」
「王様の命令により、お連れするようにと・・」
「えっ・・・て王様の命令って」
「どこにいくのですか?」
「それは私の口からはお伝えすることはできませんので、どうぞ私のあとを着いてきて頂けませんでしょうか」
なんだよそれ?とそれぞれ思ったが、これ以上いろいろ言ってもめるより、連れて行かれた先でいろいろと聞いた方が早そうだと感じた。
4人はメイドの後に続いて、長い廊下を歩き、階段をいくつか下りた。ところどこにある明かりは、ろうそくとは違う光をだしており、一樹の興味をかりたてた。
メイドは、ある木の扉の前で立ち止まりノックした。
「姫様のご友人をお連れしました」
「うむ、はいるのじゃ」
部屋の中には、年老いて、白い長いひげをのばし、茶色の色あせた服を着て、杖を持った爺さんが座っていた。
映画などにでてくる魔法使いの様相そのものであった。
部屋の中はなにやら不思議なものが多かった。地球儀に似た丸いもので書かれた何か、見たことない動物の剥製、小瓶に入った色とりどりのきれいな液体、よくわからないものが泳いでいる水槽。
それぞれがあたりを凝視していた。
「なんじゃ?そんなにめずらしいかの?異世界にはないものばかりじゃて当然かのう・・・」
「失礼します。姫様をお連れしました」
騎士団長アウルスと伴って、優華が部屋へ入ってきた。
「うむ、はいるのじゃ」
「それでは私はこれにて」
アウルスは部屋から下がり、老人と優華達だけになった。
「みんなーーここにいたのね」
優華は、先程別れたばかりの友人の顔を見ると、ほっとした。
王との謁見で、だいぶ緊張していたようだ。
「優華、だいじょぶだったの?」
「うんうん。だいじょぶ。王様に会ってきたの」
「ええ?王様?」
「あんたー王様に会ってきたんだ!」
「うんうん、それでね。分からない事だらけだろうから、『ゴトボルク』って人に会って、話を聞くといいって言われて、ここにきたの」
「さてはて、何から話しましょうかね・・・長い夜になりそうじゃわい」
老人は、少しため息をつきながら長いひげをいじった。
「姫様、魔法使いのゴトボルクです。お久しぶりとは言っても忘れておられるでしょうな」
知らない人に久しぶりと言われたのは、今日で何回目だっただろうかと優華は思った。
この城の大臣や、メイド達にも言われ「お久しぶりです」の大売出し状態である。
「ではまず、この世界の精霊と魔法について・・・」
魔法使いゴトボルクの話によると
この世界は、「火」「水」「土」「風」の精霊が存在し、自身の属性にあった精霊と契約をかわす。
「火」の精霊と契約したものは火の魔法が使え、「水」の精霊と契約したものは水魔法が使える。
契約した精霊の属性のみの魔法が使え、それ以外の精霊とは契約することができない。
例えば、「土」の精霊と契約し、さらに「水」の精霊とも契約することは不可能。
それぞれの属性の精霊には頂点に立つ王という存在があり、「精霊王」と言われて、4人の「精霊王」が存在する。さらにその「精霊王」4人をたばねる存在が「精霊神様」と言われている。 精霊王と契約するなど、300年に一度そんな逸材が出るぐらいで、めったに契約することはできない。
さらにその上の「精霊神様」と契約するとなると、精霊王4人の力以上となり、より絶大な魔法の力を得ることになる。しかし、そのような契約をした人物は今まで存在しなかった。
「ただし、姫様がこの世界に来るまでは・・・の話じゃ。 姫様は、『火・水・土・風』のそれぞれの精霊王と契約し、さらに「精霊神様」とも契約なさった無二の存在。それだけ貴重なお方なのじゃ。わしの話を少しは分かっていただけたかな?」
それぞれは、ゴトボルクの話をまだ飲み込めていないようであった。
一樹にいたっては、目をらんらんと輝かせている。
「ということは、精霊を使う精霊使いと、魔法を使う魔法使いがいるということですね!」
「そうじゃ、わしはご存知の通り、魔法使いじゃ。精霊使いは精霊の力、魔法使いは自身の「アース」と精神力と知識によって魔法を発動する。
その「アース」というのは、使い切ると魔法が使えなくなる。回復するには1日静養するか、もしくはある貴重なアイテムを飲むと回復する。
魔法は、自身の知識や精神力を同時に上げていかんと、魔法の威力は増さないのじゃ。」
ゴトボルクは、優華の友人を見回し
「しかし、今回は想定外だったのーまさか姫様のご友人がご一緒とはのう」
「以前は、私ひとりだったんですか?」
「そうじゃ、姫ひとりで異世界にやってきたのじゃ」
「そのう・・・姫様っていうのは、恥ずかしくて、わたしはいたってそのへんにいるような普通の女子ですしし・・・」
異世界に来た途端、色んな人に『姫」『姫』と言われて、優華は正直なところ、ちょっとうんざりしていた。もう20代後半なのに、『姫』と言われて喜ぶ年齢でもない。
「まあ、これから記憶を思い出すまで、慣れてくるじゃろう。なんせ姫は、この世界では子どもが寝る前のおとぎ話の主人公じゃて、それだけこの世界にとっては、伝説に残るほどの事をしたのじゃ」
知美はゴトボルクの言葉に口を挟んだ。
「あのおじいさん、私たちの知ってる優華って、とてもじゃないけど、そんな大それた事なんてできる子じゃないの。おっちょこちょいで、優柔不断で、ちょっと空気読めないところがあって、世界を救うなんて、なんかの間違いじゃないの?」
「ご友人どの、人というのは一面だけでは量れないところがある。目に見えるものだけを信じておると、いつか本当に大切なものが見えなくなってしまうのじゃ」
さっきのおかしくなった優華と似たこと行っている。この世界では、見えるものはあまり信じないってこと?
でも、見えないものをどうやって認識して、信じればいいの!分けわからないわ~。
知美は混乱していた。迷信や幽霊をまったく信じていない現実主義だからだ。
「この世界では、おそらくご友人たちがいた世界とは、常識や考え方が微妙に違う、そうじゃ!明日城のものに、近くの町に案内させよう。」
「そこで情報収集ですね!クエ発動!」
一樹は目をらんらんとさせて、はりきっている。
「なんじゃ?ひとりだけやたらと元気なご友人がおられるのー」