40 聖竜の旅13 聖竜はどこに?
体調不良で更新が遅くなり、申し訳ありません。今回は、場面がところどころに変わり、分かりづらいため、申し訳ないです。
シェルフトは疑問に思った。
帰還した雄也と一樹は記憶がすぐに戻り、優華には戻らなかった。
この違いはいったいなんなのか・・・。
もしこの謎が解ければ、優華の記憶が戻る糸口になるのでは・・・。
シェルフトは、すぐさま王に雄也と一樹が帰還した事を報告し、胸の内にある疑問を投げかけ、優華の記憶について調査させてほしいと願い出た。
「記憶の事は、他言無用。調査も不要だ。」
王の発言に困惑していた。記憶が戻ることが、優華が以前の力を戻すために必要であるのに、なぜ王は『他言無用』『調査も不要』などと言ったのか。
記憶を戻る事に対して、王は望んでいたはずであるのに・・・。
いくら頭を悩ませても、シェルフトには答えが見出せなかった。
とにかく、ディークラールハイトに雄也と一樹が戻った事だけでも早急に報告しようと、魔道具のある部屋へと急いだ。
優華は、雄也と一樹が戻ったという報告を、ディークラールハイトから聞き、歓喜して、身体をぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
早く会いたい!ふたりとも元気かな?
でも、でも、とにかく聖竜を探す事が唯一・・・出来ることだもん。
魔法が一切使えない私は、とにかく今出来ることを精一杯しなくちゃ。
剣は、モンソンおじさんに教えてもらう約束は取り付けたし、がんばるぞ!!
優華は、気合を入れて、強くこぶしを握り、空に向かって誓った。そんな様子を、周りは生温かく見守っていた。
『精霊姫様』である優華の態度や発言に、当初は困惑していた騎士達だったが、愛くるしい表情や、素直な性格に触れて、『守るべき人物』から『守ってあげたくなる人物』へと変化していった。
カバリュオは、以前のように優華を見下す態度がなくなり、優華の奇異な発言や態度に対して、免疫ができたようだった。
神秘の森に到着して、幾日がたっただろうか。
この森のどこを探しても、魔物にさえ遭遇せず、人とも出会う事は皆無だった。
この地の聖なる魔力のせいか、魔物は近づくことさえできず、気配はおろか、存在さえ疑わしくなるような気持ちにさせてしまう。
「はあ、暇ねー」
小さいあくびをしながら、ベンダーバールは紫の花の上に寝転んで、頭の後ろで腕を組んだ。
この数日間、森中を探し回ったが、聖竜をみつける事はできなかった。
このまま、城に帰るか・・それともまだ粘るか。
今日の夜も、カバリュオ達と会議ね。
まあ、まともな議論さえ・・・最近はならないけど、あのお馬鹿のストラヴィンが『きゃんきゃん』吠えて、聖竜は腰抜けだの、森を燃やしてあぶりだすだの。口から火が吹くんじゃないかというぐらい、すさまじい剣幕で話にならないし。
優華は、いつの間にかモンソンの『騎士の誓い』を受けて、今ではぴったり優華に張り付いているし
・・・騎士をあなどっていたわー。『誓い』という手があったなんて、すっかり忘れていた。
優華のライバルが、またひとり増えちゃったじゃないの。
「ベン、気持ちよさそうですね。」
ディークラールハイトのにっこりと微笑む姿は、美女そのもので、男女問わず、その笑顔に惚れてしまうだろう。
ベンダーバールの隣にディークラールハイトは腰を落とした。
「こんなにも気配は感じるのに、聖竜の姿が見えないなんてね。」
「以前は、聖竜の居場所さえつかめず、聖竜の恩恵なしで世界を救ったため、優華は命が危ぶまれるほどの危険を犯しましたから・・・王は、もうそんな無理をしてほしくなかったのでしょう。シェルフトや第2カヴァリエーレを使い、綿密に聖竜を探させていたらしいです。」
「王は、優華に心底惚れているからねー。」
以前、優華がこの世界に償還された時は、王とは相思相愛の仲である事は、城の者には公然の秘密だった。『守り人』の4人は、この世界の王が優華の相手ならばと、二人の仲を見守っていた。
「優華の友人が戻った件で、王ってば、何か分からないけど、重要な事を隠しているとワタシは睨んでるのだけど。」
「それは・・・なぜそう思うのですか?」
「いつもの勘よー。」
「ベンの勘は、怖いぐらいに当たりますからね。」
「ふふー勘は当たってもね・・・。風の精霊は、聖竜の居場所は絶対に教えてくれないもの。それだけは聞き出せないのよねー」
ふうーとため息をついて、空を見上げた。
「優華ちゃん、力みすぎ。」
優華は、念願叶ってモンソンから剣の指導を受けていた。今まで、一度も剣など握ったことのないの優華は、剣の扱いに四苦八苦していた。
優華は両手で剣を握り、振り回しているが、その相手をしているモンソンは片手で軽々とその剣を受け流している。
こんな重い剣を、サルバティエラさんとモンソンおじさんは軽々と持ち上げて、魔物を退治していたなんて・・・今更ながら、関心する。特にストラヴィンさんは、大剣をぶんぶん振り回してたもの。みんなすごぎる・・・。
その様子をストラヴィンは遠くから眺めていた。相変わらず優華への恋心に気づかず、もやもやとした気持ちをかかえながら、イライラをつのらせていた。モンソンが、『騎士の誓い』を行ったため、自身の中の何か分からない『もやもや』が、急速に高まっていった。
今まで感じたことのない気持ちが押し寄せて、優華の事が気になって仕方なかった。自身がなぜこのような感情になるのか、不思議で仕方なかった。
ああ・・・イライラする。
なんだよ・・・この気持ちは!
ストラヴィンは頭をくしゃくしゃとかきむしり、それでも視線は優華から離れないでいた。その様子をすぐ側の木の陰から、ディークラールハイトとベンダーバールは二人して笑いを堪えて、生温かく見守っていた。
「ストラヴィン・・・いったいいつになったら、恋心に気づくのでしょうか?」
「誰か教えてあげないと、一生気づかないかもねー」
そんな二人の小さな囁きなど、ストラヴィンの耳にはまったく入ってこなかった。
聖竜を探す一向は、東側を集中的に散策し、聖竜を探していたが、相変わらず、気配は感じるものの、姿を見ることはなかった。まず、南側、西側、北側と集中的に方角を変えて、探してみたものの、成果はまったく得られなかった。城を出立してから、約1ヶ月が経過しようとしていた。
騎士の中には、あきらめムードが高まり、森に到着した頃と違い、士気はあきらかに低下していた。
昨日の会議の中で、そろそろ城に戻る時期に来ているのではと、カバリュオと『守り人』の苦渋の判断だった。
「ん?風が・・・」
「ベンどうしたのですか?」
ベンダーバールは何かに導かれるように、足を早めて進み出した。周りにいた者達は、訳が分からず、そのまま伴って、後を追う形となった。ベンダーバールはいつものとぼけた雰囲気ではなく、真剣な眼差しで一心不乱に足速に歩いていた。
すると、今まで森の中では見たことのない風景が目の前に現れていた。
そこには滝があり、その滝から虹がかかり、美しい情景だった。滝から流れる水は透き通り、日差しがきらきらと川の水に反射していた。
「お前たちは何者だ。」
ひとりの男が一行に声を掛けた。その男は、白い仮面をかぶり、白い服を着ており、独特の雰囲気をまとっていた。
その異様な男に、一向は躊躇していたが、ディークラールハイトが前に歩みより、ぺこりと頭を下げた。
「私は、守り人のディークラールハイトです。聖竜を探すために、この聖なる森を探しています。」
「『守り人』か・・・ここは聖なる竜が住まわれる聖なる場所、この場から早急に立ち去れ」
ディークラールハイトの言葉に冷たく言い放ち、くるりと後ろを向いて、男は立ち去ろうとした時、優華の胸元に光る首飾りに目線がいった。
「ま、まて!そなたの胸にあるものは・・・どこで手に入れた?」
「えっ、この首飾り?どこと言われても・・・エルフの村でハーフエルフの男の子にもらったんです。」
「ハーフエルフだと?」
それを聞いた男は殺気がむき出しになり、今にも優華に飛び掛ってきそうな雰囲気だった。
首飾りが?いったいこれって、何かあるの?ルミエールさんも驚いていたけど。
殺気に気づかない優華は『のほほん』としていたが、殺気を敏感に感じていた『守り人』達は、警戒していた。ストラヴィン、カバリュオ、モンソンは、すでに剣に手をかけていた。ディークラールハイトとベンダーバールは、素早く優華の前に歩み寄り、仮面の男と優華の間に入り込んだ。
その時、銀髪の紅い目の端正な顔立ちの青年が、優華達の前に突然姿を現した。
「もうよい。下がれ」
「しかし、この者が恐れ多くもハーフエルフだと!」
「下がれと申しておる。聞こえぬか?」
青年は、威圧感むき出しの、するどい目線になり、すごすごと仮面の男性は姿を消した。
「優華、ひさしぶりだな。」
にこりと優華に微笑んだが、誰か分からず、頭の中の記憶をたどったが思い出せない。
こんな美少年に出会ったら、絶対忘れるはずはないのに・・・と頭を悩ませていた。
その頃城では、王の部屋に雄也がいた。雄也は、王に突然呼び出されて、困惑し、戸惑っていた。
王は、神妙な面持ちで、雄也をじっとみつめていた。
王の中で、複雑な気持ちが折り重なり、雄也に対して、発言しようとするも、口を開くことができなかった。
そんな王の様子に、雄也はさらに戸惑いを感じ、王からの目線に目をそらした。
あと2話で聖竜の旅は終了します。文章の表現力の無さに、打ちのめされています。