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もう一度異世界へ  作者: 池田 真理奈
37/74

35 聖竜の旅8 エルフの盟約

優華は、心でつぶやいた。

金色の髪の女神様。

やっぱりここは天国なのですね。

よかった地獄の閻魔大王じゃなくて。舌抜かれたら痛いから・・・

千本の針山も、地獄の熱湯も、糞尿地獄もカンベンして・・・


あれ??

ふかふかの布団、まるで高級羽毛布団のよう。天井も、知らない天井。

がばっと起きて、辺りをキョロキョロと見回す。

見たことない細工のきれいな調度品、細かい模様が入った壁紙。


ここは、いったい・・・?天国じゃなさそうだし?


金色の髪の女神が、優華に『にっこり』と笑いかける。

自身の頬をつねってみる。


「痛い・・・!現実??」

なぜか、頭がくらくらして、ふかふかの布団に倒れ込んだ。


「身体が消耗しているのです。まだ安静にしなければ。」


金色の髪の女神が、優華に布団を掛けてくれた。その手は白く、透き通るような白さだった。

頭が混乱した優華は、今一番知りたい事を金色の髪の女神に聞いてみる事にした。


「・・・えっと・・・すいません、ここはどこなのでしょうか?」


「はじめまして、世界から召還されし者。ここはエルフの村で、私は村長の娘、ルミエールと言います。」


どうやら私は、丸1日意識がなく、命が危ない状態だったらしい。ディーさんが、エルフの村に助けを求めて、治療をしてくれたようだ。

本人は、そんな危険な状態とは露知らず、看病してくれた人を、『女神様』とか寝ぼけた事言って目覚めるし、みなさん心配してくれてたのに、ゴメンナサイ・・・。

でもでも、本当に女神様みたいにきれーな人なんだもん。


ただそこに居るだけで、花が咲き乱れているような、居るだけで目の栄養ですね!

ディーさんもお綺麗だけど、ルミエールさんもお綺麗だ。エルフって美しすぎる~~!


「私の世界では、エルフは物語に出てくる架空の存在とされているので、ディーさんに森の中にエルフの村があると聞いてから、すっごくお会いするのを楽しみにしてたんです!」


興奮気味の優華の言葉を聞いて、ルミエールは少し困った顔をする。

「本来なら、村には人間は入れることありません。しかし、今回は急を要する事態でしたので。」


なぜ人間を村に入れないのかと、優華は疑問をぶつけると、ルミエールは教えてくれた。


いにしえ、エルフと人間は『盟約』し、お互い良い関係を続けていた。しかしある人間の男が、エルフの美しさに目が眩み、エルフの娘を無理やり連れ去り、自身の妻とした。

『盟約』違反だと娘の父は怒り狂い、人間との『盟約』は破棄された。それからエルフ達は人間から避けるように、人里から離れたところに居住をかまえ、魔法によってその所在は隠され、今に至るとか。

まれにその魔法の効力が消失する事が10数年に1日だけあり、その時にエルフの村に迷い込んで来る人間の男と、エルフの娘とお互いに惹かれあい、婚姻して子どもを生むこともあるようだ。その子どもが『ハーフエルフ』と言われて、人間であり、エルフでもある存在になるとか。


うーん確かに、この美しさだから、相手の男性の気持ちも分からんでないわ。

連れ去って、閉じ込めたくなる気持ちが起こるのも無理ないというか・・・。

でも、人間がそんな男みたいな奴ばかりじゃないけどなあ。この世界も、ひとりが悪さをすれば、その種族がすべてが『悪』となっちゃうのか・・・。


「それでは、『守り人』の方、騎士の方に意識が戻られた事を報告してきます。」


部屋を出て行こうとするルミエールに優華は、呼び止めた。


「あ!言い忘れてすいません。ルミエールさん!ご迷惑かけてすいませんでした。」

『いえいえ』とにっこりと微笑む姿は、やはり女神だなーと優華は思ったのだった。




「世界から召還されし者が、目を覚ました。体力が消耗しているため、2~3日療養が必要です。その間、こちらでお預かりさせて頂きます。面会は『守り人』の方のみとさせて頂きます。」


金色の髪の青い眼の村長の娘は、とりのさえずりのような美しい声で、騎士と『守り人』に報告した。

優華の無事である報告に、その場にいた者は、胸をなでおろし、心から喜びあっていた。


「いますぐ会えるのか?」

ストラヴィンの言葉にルミエールは黙ってうなづき、3人はその後に続いた。


美しい白い橋を渡り、木の宮殿の中へ入ると、そこは繊細な細かな細工がされた『木の美』だった。

エルフは、デザインが繊細で、細かい細工を得意としている。それはとても到底人間には、真似る事ができないものだ。


『木の美』の廊下を進み、ひとつの扉を開けると、ようやく『守り人』の3人は、寝室に横たわっている優華と対面できた。


「心配かけてしまって、ごめんなさい。」

優華は、いつものように『ペコリ』と頭を下げて、申し訳なそうに下を向いていた。

その姿を見た3人は、いつもの様子の優華に一安心する。


「元気そうでよかったわー」

「本当に・・・一時はどうなるかと、思いました。」

「あら?ストラヴィンたら、なーに無言になってるのよー姫がぐったりしてるとき、声を張り上げて、心配してたのは誰だったかしら?」

「あれはだな!驚いただけだ!」

「ふーん、驚いただけね・・・そゆうことにしときましょー」

ベンダーバールは、ストラヴィンに『ニヤリ』と笑いかけた。


ストラヴィンは、『夢魔』に見せられたものが、優華に『抱いて・・・』と言われ、抱きしめられた事は内緒にしておこうと堅く心に誓った。

恥ずかしく、あんな事は言えるか。というのはストラヴィンの本音だった。


優華は、3人に夢の中での出来事を思い出しながら、ゆっくりと話始めた。

「わたし、夢の中で、知美に会って、『あなたのせいよ』と言われて落ち込んでいたら、自分とそっくりな人が目の前に現れて・・・」

「姫とそっくりですか?」

「はい、でもその人、私とそっくりなのに、私とはまったく違う雰囲気っていうか。賢そうと言うか、別人でした。私であって、私でないとか・・・なぞなぞみたいな事言ってました。」

3人は、何気ない優華の話に集中した。

「その人が『ディーの結界のおかげで出てこれた』って、ディーさんの事をなぜか知ってる人でした。あ、でも、でも、夢ですから・・・」


この世界で『ディー』と呼ぶ人物は、『守り人』とあとひとりしかいない、それは『精霊姫』である優華だった。記憶を思い出していない優華には、その事は知るはずもない。


優華は、しばらく静養が必要な状態のため、3人はほどなくし、部屋を後にした。




「謎が増えましたね。」


優華の見舞いから客室に戻ったディークラールハイトとベンダーバールは考え込んでいた。


「そうねー。『姫』と『姫』。わたしだけど、わたしじゃない・・・うーん。」

「今いる姫と以前の姫とは、別人という事は・・・ありませんよね?」

「・・・世界が間違って、『姫』を召還するとは思えないわー」

「そう、ですよね・・・実際、黒の渦の時には一時的ですが、記憶が戻り『精霊神様』の力を使われておられました。しかし・・・」

「そう、『しかし』なのよー。」

結局、はっきりした答えがでないまま、2人は会話を終えた。


以前の優華とは、まったく違う行動や発言が多く、本当に同じ人物なのかと、疑いが増すばかりだ。

しかし疑いよりも、『守り人』は優華への好意への気持ちが勝っていたため、疑念を疑いつつも、受け入れていた。

いつもまっすぐな気持ちを表し、素直で、一生懸命で、傷つきやすい、そんな優華を『守ってあげたい』と思わずにいられなかったからだ。




一方その頃、城の騎士団長執務室では、アウルスが頭を悩めていた。


先日のゴブリン大量発生の調査が進んでおらず、その他の書類がはかどらず、イライラを募らせていた。

「騎士団長・・・書類・・・減りませんね・・・」

「ああ!くそーー!こんな時にカバリュオがいたらなあ。」

「・・・同感です。カバリュオは、剣の腕だけではなく、こういった雑務を素早くこなす奴ですからね・・」


イライラしながら、アウルスは髪をくしゃくしゃとし、すぐ隣にいる書類に埋もれた騎士に目を向ける。

城の騎士団の副騎士団長は、2名選出される。ひとりは、見目麗しいカバリュオ、もうひとりが書類に埋もれた平凡な顔のこの男だ。普段は、カバリュオが表にでるため、目立つことはなかった。しかし、カバリュオが長期間にわたって、留守にするため、代わりに仕事をこなさなければならなくなった。


「そう言う、お前の書類もまったく減っていないが?」

「はは。。。雑務は、溜め込んで、冷ややかな目を向けたカバリュオが、結局は最後は片付けていたので。某は、書類を眺めるより、剣を振り回している方が性に合ってます。」

「同じくだな・・・剣を振り回していた方が気が楽だ・・・」


お互い顔を見合わせて、ふたりして、大きくため息を深くついた。



王の執務室にシェルフトがやってきた。ディークラールハイトからの『聖竜の旅』の報告をするためだった。

副騎士団長であるカバリュオからの旅の報告は、シェルフトの魔道具により、毎日夜に報告はされているが、それはおおやけの報告だった。

王の『私用』の報告は、ストラヴィンでは感情的な報告になり、ベンダーバールはメンドクサイワーと流され、『聖竜の旅』の『姫関係の詳細』は、ディークラールハイトが担当することになった。


「ディーからの報告によりますと、姫が魔物に襲われ、魔物はご自身で撃退し、姫は現在エルフの村にて静養されているとの事です。」


王は、心底安堵し、胸をなでおろしていたが、次に怒りがあふれ出た。

「他の者はいったい何をしていたのだ!」

王は、感情をあらわにし、怒りでバンと机を叩き、シェルフトはその音に一瞬怯んだが、言葉を発した。


「あ、それはですね。物理的な攻撃をする魔物ではなかったのです。」

「・・・物理的ではないとは?」

王は、魔物というは、襲ってくるものであって、物理的ではないという言葉に大きな疑問が浮かんだ。


「その魔物は、いにしえの魔物で、すでに滅んだとされている『人の心に侵食し、生気を奪うもの』だそうです。」

「人の心だと?そんな魔物が存在したのか・・・しかしいにしえの魔物が、なぜボスコの森に出現するのだ?すでに存在自体失われたものであろう?」

「エルフの村の長老にもその事は分からないらしく、私は書庫にて調べましたが、記録に僅かに残っているだけで・・・詳しいことは・・・」

「そうか・・・」

エルフの村の長老も、シェルフトにも分からなければ、これ以上調べようがないのだと納得していた。

シェルフトはさらに言葉を続けた。

「ただ・・・」

「ただ?なんだ?」

「これは推測にしかすぎませんが・・・」

「申してみよ。」

「恐らく、『黒い渦』の影響か仕業なのではないでしょうか?先日のゴブリンが大量発生した件も含めて、前例のない事です。そう考えると、つじつまが合うかと・・・」


王は黙り込んで、考えていた。

シェルフトの推測は、あながち間違いではないのではと。

先日の『ゴブリン大量発生の件』『古の魔物の出現』この世界の異変を表わしている。


これは残された時間が少ないという事か・・・


王は、遠い目をして、考えを巡らせていた。




明日から仕事のため、更新が1週間に1回程度になります。

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