2 風の精霊の歓迎
優華以外の4人も目を覚まし始めた。
周りは居酒屋とはうって変わった風景。
草原が広がり、近くに湖があり、遠くの方には城が見える。
正確な時間は皆無だが、あたりは真っ暗で、空には星がでているため、夜であるということだけ認識できる。
「は??なあにここ~~~??」(知美)
「ディズニーランドじゃねえ?」(雄也)
「いやー最近できたUSIの新しいアトラクションじゃ?」(一樹)
「ここは?」(さゆり)
みんなそれぞれ混乱している。
すると何処からともなく、風にのって透き通るような美しい歌声がこだまする。
頭に響いて、この世のものとは思えないきれいな歌声。
「なに?この声?」
知美が混乱して発言すると、優華はすかさず
「風の精霊が歓迎の歌を歌っている」
知美は、あきれて
「はあ?優華?風の精霊って、なに考えての?そんなのいる訳ないじゃん」
知美の発言に、優華は表情を変えずに答えた。
「どんなものにも精霊は宿っている、その姿は信じない人には視えない」
いつもと違う優華の様子に他の4人は驚いていた。
それもそのはず、優華は奇天烈な発言をよくし、どこか憎めないかわいらしさや愛嬌があった。
しかし、今目の前にいる優華は、凛としていて、真剣なまなざし、くるくる変わる表情や、明るい笑顔がない。まるで別人のようだ。
「どうしたんだよ優華!」
雄也に肩を揺すられて我に返った。
「え??私いま変なこと言ったよね??わたし・・・どうしちゃったの・・・」
優華が涙目になる。訳がわからない、知らないはずの風景なのに、知ってる。懐かしくて、懐かしくて、涙がつぎつぎとあふれでた。
雄也は、普段見たことない表情の優華に戸惑っていた。
「優華・・・だいじょうぶか?」
「ねえ?まったく知らない場所なのに、懐かしいのとても、私どうしちゃったの?」
一樹が優華の言葉に反応する。
「それって、デジャブ じゃねえか?一度も来た事がないところなのに、なぜか以前も来た事があるように感じるってやつ」
ということは、何?私はどこかでこの風景を見たってこと?
わたしいったい・・・考えれば、考えるほど、頭はぐるぐる回るばかり。
「一樹、デジャッブってオカルトだろ?ややこしいことを言って、優華を混乱させるなよ!」
「いやいや、実際にそういった体験をしている人がいるんだよ。この状況なら、何が起こったっておかしくないだろ?」
そういわれると、雄也は黙ってしまった。
今まで沈黙していたさゆりが
「とりあえず、ここにいても、何も解決しないし、人がいるところに行ってみましょう」
4人とも無言でうなづいて同意して、遠くに見える城に向かって歩くことにした。
歩き始めると、突然優華の頭の中に声が響いた。
『そなたを愛している・・・心より愛している・・・例えそなたが我を忘れたとしても・・』
優しい透き通る力強い声、蒼い目の銀色髪の男性が頭に浮かぶ。
だれなの?いったいどうして知らない人の顔が浮かぶのか、優華にはいくら考えてもわからなかった。