19 わたしのせい
今回もラフ画アップしてます
雄也の部屋に、さゆりと優華と雄也の3人でいた。
今雄也から突然、知美の話を聞いて、優華は信じられないでいた。
「どうゆうこと?」
「・・・玉座の件があってから、知美は部屋に閉じこもってるんだ。その時の出来事が、ひどく怖かったらしい」
「・・・どうしてもっと早く言ってくれなかったの?私だけのけ者?私だって、知美の友達だよ!ひどいよそんなの!」
「優華おちつきなさい!」
さゆりはめずらしく怒りの感情をあらわにし、優華に対して厳しい表情を向けていた。
優華は、さゆりの表情にびっくりとなり、口を閉ざした。
「ごめん・・・優華は1週間意識がなかったり、この世界で記憶を思い出さないといけなかったりと、大変みたいで、言いそびれたんだ・・・。知美にとったら、玉座の事が、かなり怖かったみたいで、それから誰とも会わずに、過ごしてるんだ。オレ達もぜんぜん知美には会えてない。黙ってて、ごめん・・・」
優華は、すごく申し訳なさそうな雄也を見ると、自分が「のけ者」にはけっしてしていなかったこと。黙っていた雄也は、相当悩んでいたことを悟った。
自分自身の気持ちばかりを考えて、雄也を責めた発言を恥ずかしく思い、同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「わたしのせいだね・・・」
優華は、その場にいることが恥ずかしくなり、雄也とさゆりの静止の言葉も聞かず、途中、顔見知ったメイドがいたようだが、わき目もふらず、自身の部屋まで走り、ドアの鍵をかけた。
知美はもともと、この世界に来るはずではなく、優華の「巻き込まれ」によって、自分の意思とは関係なく、召還されたのだ。
わたしのせいだ・・・。わたしのせいで知美が・・・。
ぎゅっと唇をかみ締めて、両手を力強く握った。
優華は、何度も自身を責めていた。「玉座の件」から一週間意識を失っていたとはいえ、その後は順調に回復し、知美にもっと早く会おうと思えば会えたのだ。雄也やさゆりを責められる立場ではなく、自分の事しか考えてなかった事に苛立ちがつのり、そんな自分自身に腹が立った。
ベンダーバールとディークラールハイトは悩んでいた。雄也から、優華が知美の事を知り、部屋にこもってしまったことを聞いたのだ。
「姫、かなり落ち込んでおられるようです。自身のせいだと・・・」
「はあーワタシとした事が・・・判断が甘かったわ。」
ベンダーバールはくしゃくしゃと髪をかきむしって、ため息をついた。
「ベンが、そんなに落ち込む姿を見るのは、久しぶりです。」
「ええ?ああーーそんな風に見える?」
「はい、以前姫がここに初めて召還された時以来かと・・・」
「はあ、あの時の姫はさーがんばりすぎて、今にも壊れそうだったじゃない?召還された使命を果たすんだってさー。記憶をなくした姫は、なんていうか優しくて・・・」
その言葉はある人物によって、遮られた。
「おい!姫の友人の件、どうなってるんだ!」
突然扉を「ばん」と激しく開かれ、現れたのは、ストラヴィンだった。
ああーめんどくさいのがきたなーと二人は顔を見合わせた。
優華の詳細をディークラールハイトから聞いたストラヴィンは、「バン」と壁を思いっきり叩いた。
「ああ!わけわかんねーー!!」
「はあ?ストラヴィン、なにが言いたいのよ?」
ストラヴィンはいつもより小さい声でつぶやいた。
「落ち込んでる姫にどうしたらいいか、わかんねえんだよー」
「ふふ、らしくないわね?いつものアンタなら、考えるより、先に手が出てたのにー」
ベンダーバールは笑みを浮かべて、言葉を続けた。
「ストラヴィン、アンタ最近、騎士の訓練所に行ってるらしいわね?」
「ああ?」
ストラヴィンは、なぜ、姫の話から騎士の訓練場の話になるのか、理解できないでいた。
「私もむしゃくしゃしてるの。剣の手合わせに付き合いなさいよー」
ストラヴィンとディークラールハイトのふたりは、その言葉が信じられず、真に受けられなかった。
ベンダーバール自ら剣の手合わせを願っているなんて、聞き間違いではないだろうかと・・・。
いつもなら、「汗臭い」「汚れる」「野蛮なことなんてしないわー」
と言っていたからだった。
騎士の訓練場では、いつもとは違う雰囲気になっていた。
普段の訓練場には、お目当ての騎士を見に、メイド達の黄色い声が飛び交っている。
しかし、今日は、ふたりの美男子を食い入るようにみつめていた。
そのふたりは『守り人』のストラヴィンとベンダーバールだった。
訓練場で見るストラヴィンはそう珍しいことではなかったが、ベンダーバールまでいるとなると、貴重な事だった。
メイドだけでなく、城で働く従者や庭師や掃除番や、もちろん騎士や、あらゆるものが見守っていた。
ストラヴィンは、いつもの大剣ではなく、木刀を振り回し、ベンダーバールも木刀を手に構えていた。
真剣をお互い使うと、血を見るのはあきらかであったため、騎士団長アウルスが「木刀」を使う事を提案し、ストラヴィンはしぶしぶ了承したのだった。
ふたりの様子を心配そうにみつめる美女?ならぬ美青年のディークラールハイトがすぐ近くで見守っていた。
騎士団長アウルスが、ふたりの剣の手合わせの審判を申し出てた。他の騎士にはまかせられなかったのも理由のひとつだった。
「はじめ!」
先に仕掛けたのは、ストラヴィンだった。
ベンダーバールへ頭上からの攻撃を仕掛けたが、さらりとかわして、次の攻撃も難なくよける。
「くそーー!」
ストラヴィンは、自身の動きを完全によまれてしまい、苛立っていた。
「アンタの動きは単純なのよー動きは速いけど、それだけじゃねえー」
ストラヴィンは、その言葉にかっとなり、再度攻撃をしかけた時、すっとベンダーバールの姿が見えなくなり、いつの間にか背後を取られて木刀を喉元にあてられていた。
「それまで!」
騎士団長アウルスの声で、かたづをのんで見守っていた人たちから、「わーーー!!」と歓声があがった。
それぞれが口々に、今の立会いの興奮を語っていた。
歓声の中、ぼーぜんとし、その場から動けないでいるストラヴィンがいた。
「はい、はい、しっかりしなさいよー。アンタのそうゆうまっすぐなところ、アタシは好きよー」
ストラヴィンにウインクし、手を差し伸べた。
その夜、執務室で王は悩んでいた。
ディークラールハイトからの報告による姫の友人の件だった。
姫は部屋にこもり、一切人に会うことを拒否し、閉じこもっていると。
何もしてやれない自身の無力を責め、「黒い渦」の対応で忙しく、優華のことをあまり気遣ってやれなかったことを後悔していた。
「王、姫様が面会を求めておられますが?」
誰とも会うことを拒否している優華が、自身に会いにきていると知り、
「すぐ通せ!それと人払いを!」
無言でうなずく兵士が消えると、優華が軽く頭を下げなら執務室に現れた。
「王、人払いして頂いて、ありがとうございます。」
顔をあげた優華は、凛としていて、王をまっすぐとみつめた。
「・・・・アルカサル、ひさしぶりです。」
その名を呼ぶのは、この世でただひとりしかいない。王が心から愛する女性だけ。
「姫!!そなたなのだな?」
「はい。私です。」
王は、優華の元に素早くかけより、おもいっきり強い力で抱きしめた。
優華は、抱きしめられた王の背中に手を伸ばした。
「もう以前の姫には会えないと思った。」
王は、優華を抱きしめながら、声を絞り出すようにしていた。
腕の力は衰えることなく、離れていたときを埋めるように抱き合った。
「アルカサル・・・今の私は、私であって、私ではないのです。」
その言葉の意味を理解できず、抱きしめた腕をゆるめて、優華の目をじっと見据えた。
「・・・どうゆう意味だ?」
「いまは、彼女が精神的な苦痛を心に受けて、自暴自棄になっていますので、こうやってアルカサルに会うことができましたが」
「・・・申しておる意味がわからぬ?」
優華は、ふふっと笑い、王の銀髪をなでる。
「アルカサル、彼女を元気にさせるヒントを・・・」
王は、優華が部屋へ戻ったあとに、長い時間考え込んでいた。
やっと記憶の戻った優華に会えた幸せより、大きな問題を抱えてしまい、頭を悩めていた。
誰にも言えぬ、秘密をかかえて・・・。
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アルカサルは自身の想像以上でした。バカロット様ありがとうございます。