表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう一度異世界へ  作者: 池田 真理奈
20/74

19 わたしのせい

今回もラフ画アップしてます

雄也の部屋に、さゆりと優華と雄也の3人でいた。


今雄也から突然、知美の話を聞いて、優華は信じられないでいた。


「どうゆうこと?」


「・・・玉座の件があってから、知美は部屋に閉じこもってるんだ。その時の出来事が、ひどく怖かったらしい」

「・・・どうしてもっと早く言ってくれなかったの?私だけのけ者?私だって、知美の友達だよ!ひどいよそんなの!」

「優華おちつきなさい!」

さゆりはめずらしく怒りの感情をあらわにし、優華に対して厳しい表情を向けていた。

優華は、さゆりの表情にびっくりとなり、口を閉ざした。


「ごめん・・・優華は1週間意識がなかったり、この世界で記憶を思い出さないといけなかったりと、大変みたいで、言いそびれたんだ・・・。知美にとったら、玉座の事が、かなり怖かったみたいで、それから誰とも会わずに、過ごしてるんだ。オレ達もぜんぜん知美には会えてない。黙ってて、ごめん・・・」


優華は、すごく申し訳なさそうな雄也を見ると、自分が「のけ者」にはけっしてしていなかったこと。黙っていた雄也は、相当悩んでいたことを悟った。

自分自身の気持ちばかりを考えて、雄也を責めた発言を恥ずかしく思い、同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


「わたしのせいだね・・・」


優華は、その場にいることが恥ずかしくなり、雄也とさゆりの静止の言葉も聞かず、途中、顔見知ったメイドがいたようだが、わき目もふらず、自身の部屋まで走り、ドアの鍵をかけた。


知美はもともと、この世界に来るはずではなく、優華の「巻き込まれ」によって、自分の意思とは関係なく、召還されたのだ。


わたしのせいだ・・・。わたしのせいで知美が・・・。


ぎゅっと唇をかみ締めて、両手を力強く握った。

優華は、何度も自身を責めていた。「玉座の件」から一週間意識を失っていたとはいえ、その後は順調に回復し、知美にもっと早く会おうと思えば会えたのだ。雄也やさゆりを責められる立場ではなく、自分の事しか考えてなかった事に苛立ちがつのり、そんな自分自身に腹が立った。




ベンダーバールとディークラールハイトは悩んでいた。雄也から、優華が知美の事を知り、部屋にこもってしまったことを聞いたのだ。


「姫、かなり落ち込んでおられるようです。自身のせいだと・・・」

「はあーワタシとした事が・・・判断が甘かったわ。」

ベンダーバールはくしゃくしゃと髪をかきむしって、ため息をついた。

「ベンが、そんなに落ち込む姿を見るのは、久しぶりです。」

「ええ?ああーーそんな風に見える?」

「はい、以前姫がここに初めて召還された時以来かと・・・」

「はあ、あの時の姫はさーがんばりすぎて、今にも壊れそうだったじゃない?召還された使命を果たすんだってさー。記憶をなくした姫は、なんていうか優しくて・・・」

その言葉はある人物によって、遮られた。

「おい!姫の友人の件、どうなってるんだ!」

突然扉を「ばん」と激しく開かれ、現れたのは、ストラヴィンだった。


ああーめんどくさいのがきたなーと二人は顔を見合わせた。


優華の詳細をディークラールハイトから聞いたストラヴィンは、「バン」と壁を思いっきり叩いた。

「ああ!わけわかんねーー!!」

「はあ?ストラヴィン、なにが言いたいのよ?」

ストラヴィンはいつもより小さい声でつぶやいた。

「落ち込んでる姫にどうしたらいいか、わかんねえんだよー」

「ふふ、らしくないわね?いつものアンタなら、考えるより、先に手が出てたのにー」

ベンダーバールは笑みを浮かべて、言葉を続けた。

「ストラヴィン、アンタ最近、騎士の訓練所に行ってるらしいわね?」

「ああ?」

ストラヴィンは、なぜ、姫の話から騎士の訓練場の話になるのか、理解できないでいた。

「私もむしゃくしゃしてるの。剣の手合わせに付き合いなさいよー」

ストラヴィンとディークラールハイトのふたりは、その言葉が信じられず、真に受けられなかった。

ベンダーバール自ら剣の手合わせを願っているなんて、聞き間違いではないだろうかと・・・。

いつもなら、「汗臭い」「汚れる」「野蛮なことなんてしないわー」

と言っていたからだった。



騎士の訓練場では、いつもとは違う雰囲気になっていた。

普段の訓練場には、お目当ての騎士を見に、メイド達の黄色い声が飛び交っている。

しかし、今日は、ふたりの美男子を食い入るようにみつめていた。

そのふたりは『守り人』のストラヴィンとベンダーバールだった。


訓練場で見るストラヴィンはそう珍しいことではなかったが、ベンダーバールまでいるとなると、貴重な事だった。

メイドだけでなく、城で働く従者や庭師や掃除番や、もちろん騎士や、あらゆるものが見守っていた。


ストラヴィンは、いつもの大剣ではなく、木刀を振り回し、ベンダーバールも木刀を手に構えていた。

真剣をお互い使うと、血を見るのはあきらかであったため、騎士団長アウルスが「木刀」を使う事を提案し、ストラヴィンはしぶしぶ了承したのだった。

ふたりの様子を心配そうにみつめる美女?ならぬ美青年のディークラールハイトがすぐ近くで見守っていた。


騎士団長アウルスが、ふたりの剣の手合わせの審判を申し出てた。他の騎士にはまかせられなかったのも理由のひとつだった。

「はじめ!」


先に仕掛けたのは、ストラヴィンだった。

ベンダーバールへ頭上からの攻撃を仕掛けたが、さらりとかわして、次の攻撃も難なくよける。

「くそーー!」

ストラヴィンは、自身の動きを完全によまれてしまい、苛立っていた。

「アンタの動きは単純なのよー動きは速いけど、それだけじゃねえー」

ストラヴィンは、その言葉にかっとなり、再度攻撃をしかけた時、すっとベンダーバールの姿が見えなくなり、いつの間にか背後を取られて木刀を喉元にあてられていた。


「それまで!」

騎士団長アウルスの声で、かたづをのんで見守っていた人たちから、「わーーー!!」と歓声があがった。

それぞれが口々に、今の立会いの興奮を語っていた。


歓声の中、ぼーぜんとし、その場から動けないでいるストラヴィンがいた。

「はい、はい、しっかりしなさいよー。アンタのそうゆうまっすぐなところ、アタシは好きよー」

ストラヴィンにウインクし、手を差し伸べた。




その夜、執務室で王は悩んでいた。

ディークラールハイトからの報告による姫の友人の件だった。

姫は部屋にこもり、一切人に会うことを拒否し、閉じこもっていると。

何もしてやれない自身の無力を責め、「黒い渦」の対応で忙しく、優華のことをあまり気遣ってやれなかったことを後悔していた。


「王、姫様が面会を求めておられますが?」

誰とも会うことを拒否している優華が、自身に会いにきていると知り、

「すぐ通せ!それと人払いを!」

無言でうなずく兵士が消えると、優華が軽く頭を下げなら執務室に現れた。


「王、人払いして頂いて、ありがとうございます。」

顔をあげた優華は、凛としていて、王をまっすぐとみつめた。

「・・・・アルカサル、ひさしぶりです。」

その名を呼ぶのは、この世でただひとりしかいない。王が心から愛する女性だけ。


「姫!!そなたなのだな?」

「はい。私です。」

王は、優華の元に素早くかけより、おもいっきり強い力で抱きしめた。

優華は、抱きしめられた王の背中に手を伸ばした。

「もう以前の姫には会えないと思った。」

王は、優華を抱きしめながら、声を絞り出すようにしていた。

腕の力は衰えることなく、離れていたときを埋めるように抱き合った。

「アルカサル・・・今の私は、私であって、私ではないのです。」

その言葉の意味を理解できず、抱きしめた腕をゆるめて、優華の目をじっと見据えた。

「・・・どうゆう意味だ?」

「いまは、彼女が精神的な苦痛を心に受けて、自暴自棄になっていますので、こうやってアルカサルに会うことができましたが」

「・・・申しておる意味がわからぬ?」

優華は、ふふっと笑い、王の銀髪をなでる。

「アルカサル、彼女を元気にさせるヒントを・・・」



王は、優華が部屋へ戻ったあとに、長い時間考え込んでいた。

やっと記憶の戻った優華に会えた幸せより、大きな問題を抱えてしまい、頭を悩めていた。

誰にも言えぬ、秘密をかかえて・・・。


http://22238.mitemin.net/i257508/

挿絵(By みてみん)

アルカサルは自身の想像以上でした。バカロット様ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ