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もう一度異世界へ  作者: 池田 真理奈
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13 町の散策

騎士団長アウルスに始まって、『守り人』 、そして王までも・・・。

優華達の「町の散策」の護衛にと、こぞって志願した。

それではお忍びにはならないということで、どうゆう決め方にしたのか、話は落ち着いたようである。

名誉ある護衛の座をゲットしたのは、騎士団長だった。

騎士の中でも一番優秀な精鋭揃いを集めた「第一 シヴァリエ隊」が騎士団長とともに優華達の護衛をすることになり、騎士の姿で町を散策すると目立つため、私服で優華の護衛をすることになった。



くじ引き、ジャンケン、あみだくじ、でもしたのかな?まさかね・・・。優華は、相当揉めたであろう事柄にどうやって終止符がうたれたのか、気になっていた。



ここは、城の城下町「セルロアン」

露店がいくつも並び、食べ物や衣類や雑貨など多種多様なもの売っていて、賑わっていた。

人種もさまざまで、ドワーフやエルフなども混ざり、さながらRPGの世界そのものだった。

店先に並べられているものは、優華たちの世界にはないものばかりで、物珍しかった。


一樹は、目を輝かせて、あちらこちらの店をいったりきたり、奇声を発して、一番楽しんでいた。

そんな一樹を他の3人は、あきれて様子を見ていた。

私が意識を失っている間に『守り人』のシェルフトと私たちのいた世界について見識を広め、親交を深めていた。この中で、一番この世界になじんでいると言える。

そんな一樹をながめていると、雄也が少し思いつめた表情で口を開いた。


「優華、この世界に残るのか?」


「うん。みんなが必要としてくれているから」


「けどよ・・・この世界に残って、だいじょぶか?」


大学生の頃は雄也には、何でも話していた。

女友達のこと、両親のこと、彼氏のこと、まるで兄のような存在。

ただ、彼氏の話になると、雄也は少し唇をかみ締めていたことに、優華は気づいていない。


「これだけ必要としてくれて、わたしうれしくて、姫と呼ばれるのは正直いうと・・・あんまりだけど」

「だよなーー優華ってどっちか言うと、姫様のお付の侍女みたいな?で、ドジばかりして失敗して落ち込むようなキャラだもんな」

「雄也ひどい・・・でもあたってる。確かにドジッコ侍女って私にしっくりくるよ。」

ようやく笑顔になった優華は、雄也のつっこみに納得していた。


「・・・・オレ心配なんだ」

「うん、ありがとう。いつも心配ばかりかけて、雄也はお兄さんみたいだもんね~」

雄也はその言葉を聞いて、苦笑いをすることしかできなかった。自分の本当の思いをずっと隠して、友人たちといる時、周りの笑いをさそって、自分の気持ちを誤魔化していた。自分自身の思いに気づいたときは、優華はすでに「彼氏」という存在があり、心地よいこの関係を壊したくないため気持ちを打ち明けられないでいた。


「それより知美はだいじょぶ?」

「あ、ああ・・・まだ体調崩してるみたいでさー。」

「そうかあ・・・」


町の散策には、友人の中で知美だけが姿を見せなかった。面会のときも、そしてこの場にいないため、優華は心配していた。

知美は、先日の玉座の件で部屋から1歩も出ていなかった。雄也達が話しかけても、びくびくと怯えるばかりで、かなり精神的にまいっていた。その事を優華に伝えるのを、友人達は躊躇していた。話せばきっと優華はひどく責任を感じ、「自分のせいで」と心を痛めることを理解していた。困った人をみつけると、ほっておけない優しい優華の性格を知っているため、悩んでいた。そのため、優華への返事は、歯切れの悪い口調になってしまった。

一樹の生き生きとした様子を見ると、同じ悩みを共有していないように捉えられ、雄也は寂しくあり、腹立だしくもあった。


「姫様がお戻りになられたとか」

「そうだよ!姫様が戻られたら、この世界は安泰だね!」


町を散策していると、あちらこちらから優華への賛美が聞こえてきた。

聞いていて恥ずかしいよう。私そんな大層な存在じゃないし、期待されすぎだよ。

私の役どころは、姫の侍女がいいとこですと心の中でつぶやいていた。

テンションマックスの一樹は無視して、優華は多種多様な果物が並べてある店に目がいく。

優華は、宝飾品や化粧類にまったく興味がなく、物欲より食欲という感じである。


「うわ~~すごい!」

見たこともない果物がところ狭しと並べられていて、色とりどりの店内に目を輝かせていた。

そんな様子をすぐ後ろから微笑ましそうに眺めていた雄也。こんな時は、時間かかるのだと、つきあいの長さから心得ており、離れた場所からその様子を伺っていた。


「お嬢さんーーひとり?」

と声を掛ける若者が現れた。優華がひとりだと勘違いして、声をかけたようだ。

「え・・・?」

「かわいいねー!!なんて名前?お茶しようよ。あっちにいい店知ってんだ」

困惑して固まっている優華を、強引に若者が手を引っ張って、連れていこうとする。

雄也が軽薄な男を制止しようとした時、あたりがピリっとした空気に包まれた。


「おい!貴様!その手を離さぬか!無礼であるぞ!」

怒りで表情をこわばらせた私服の騎士団長アウルスであった。

気の毒にその若者は、周りを屈強な男たちに囲まれてしまった。若者よりあきらかに体格、身長差がある男たちであったため、何事が起こったか理解できず、自身の周りを囲んでいる男たちを「きょろきょろ」と見るしかなかった。

「※※※※※※?」

若者は、意味不明な言葉を発し、素早く私服の騎士にいずこかへと連れさらわれてしまった。

この事はすぐに王に報告がいったのは言うまでもない。




王の執務室で、王とディークラールハイト、ベルダーバール、の3人が頭を悩ませていた。

「姫のご友人であるひとりが、精神的にまいっているとか、それを姫に伝えるべきなのか、ご友人同士悩んでおられるようで・・・」

ディーは、さみしげに2人に報告をした。この場にストラヴィンがいないのは、彼が感情的になり、正常な判断ができないからという判断だった。


「まあどうせもうすぐ帰っちゃうでしょー。誤魔化した方がよくない?あっちに戻ったら、記憶忘れちゃうでしょ?」

ベンダーバールは楽観的に捉えて、出たとこ勝負で行こうと提案した。

最悪な事態は、優華が知美に直接会いに行ってしまうことで、それだけ避ければ何とかなりそうな気もするが・・・。


「シェルフトの報告によると、帰還する魔法陣はあと1週間ほどで準備ができるそうだ。」

結局3人の出した結論は、「言わない」ではなく「知らなかったフリ」をすることとなった。

もちろん、城のものたちには口を閉ざすよう言いつけておかなければならないことも付け加えて。



「あとの問題は・・・1ヶ月後の姫のお披露目よね~たぶんそのタイミングでまたあの黒い渦がくるわね。」

「それまでに黒い渦の正体を突き止めねばな。」

「はい、姫のためにも、この世界のためにも。」

3人とも厳しい顔つきなり、まだ見ぬ敵に対して睨みをきかせていた。

お披露目は、1ヵ月後に取り行われる。召還された優華を民衆の前で紹介する行事である。

世界の各地から民衆が集まり、優華をひと目見ようとお祭り騒ぎ状態のイベントになる。

この事はまだ優華には伝えておらず、友人達が帰還したのちに本人に伝えることになっている。


深刻な話の最中に、王の執務室である扉にノックをする兵がいた。

「王!お話中失礼いたします。姫様ご一行は無事城に帰還されました。ですが・・・」

兵は、言葉を詰ませて、これ以上は話したくないという雰囲気をだしていた。

「なんだ?かまわぬからそのまま続けよ」

「えーー恐れ多くも町で姫様を強引に連れ出そうとした輩が1名いたため、捉えております。」


その場の空気が急に冷えて、会議どころではなくなった。


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