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もう一度異世界へ  作者: 池田 真理奈
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12 訪問者

知り合いのイラストレーターの方に挿絵を描いて頂けることになり、近日中にアップできればと思っています。

ディーの面会から2週間ぐらいたった頃、優華はすこしづつリハビリをかねて、ベットから起きるようになった。


優華が友人達の面会を強く希望したため、室内の客間にて行われた。短い時間だったが、久しぶりに話す友人達の会話に笑顔が幾度もこぼれた。ただし、ひとりをのぞいては・・・。



次の日の朝、友人達の面会を聞きつけたのか、いきなり扉を開けてストラヴィンが登場!

周りは前回同様、青ざめてオロオロするばかりで、ストラヴィンの行動を止めれなかったようである。


「姫~~会いたかったぜ!」

初めて会った時同様、ストラヴィンに抱きしめられ、ひょいと持ち上げられ、お姫様だっこをされた。


「あ、あの姫さまはまだお身体が」

ひとりの勇気あるメイドが、おそるおそるストラヴィンに話かけた。よく見ると、小刻みに震えている。

ストラヴィンは、眉をあげて不機嫌な顔になり、優華の眼をじーと見た。


「城の中庭ならいいだろー。な!姫は外にでたいよな?」


あいかわらず、自身の我を押し付けるストラヴィンは、優華の意見を聞かずに勝手に中庭に行くことを決めていた。しかし、行動的で優華への不器用な気遣いを感じられたので、前回のように動揺することはなかった。

勇気を振り絞って、ストラヴィンに対してくれたメイドの彼女の眼をみてにっこりとお礼を述べた。


「そうなんです。ちょうど外に出たいと思っていたので」


優華の言葉に「ぱーと」笑顔になったストラヴィンは、そのままかかえて城の中庭に出た。

優華はこの2週間、ベットの友達化していたため、少々憂鬱な気持ちがあった。強引であったが、外へ連れ出してくれたストラヴィンに感謝していた。世話係のメイドは腫れ物でもさわるように、何かをしようとすれば、その行動を制限されたり、自身でできることも「わたくしがいたします」という言葉で遮られてしまった。優華の家の家訓は『できることは自分でする』をモットーにしているため、小学生の頃から家事をさせられていた。そのため、今のお姫様状態には正直慣れないでいる。


城の中庭には、噴水があり、花が咲き乱れていた。その花の中を通ると、東屋があり、その椅子にふたりで腰掛けた。

たわいない話をして、優華の気持ちをほぐそうと、不器用ながらも時には愉快な話を聞かせてくれた。

その気遣いが、優華にはとても心地よくて、ありがたかった。


「やっぱ、姫のその顔、笑顔がいいよなー」


ストラヴィンは、満足げに優華の顔を覗き込んで、先日のことが嘘のような和やかな時間を過ごしている。


その様子を、すぐ側から伺っていた人物が、痺れを切らして物陰から現れた。


「ちょーと、そろそろいいでしょ~姫はアンタだけのものじゃないのよー、後ろにいっぱい待機してるんだから~。気をつかいなさよ~」

ベンダーバールだった。手を腰にあてて、見えない花をしょって仁王立ちしている。


「まだいいじゃねえか・・・」


ばつの悪そうに下を向いて、ストラヴィンはいつもの強気とは違っていた。


「あのねーアンタが姫と朝一番に会うのをみーんな目をつぶっていたのよー!あの王でさえもよ!ストラヴィンも心配してるだろうって、遠慮したのよ~あの王がよ!?」


しばらく無言だったストラヴィンは、「しかたねえなあ」とボソとつぶやいた。その顔は、まるで子どもがお気に入りのおもちゃを取られたような表情になって、優華はクスと笑ってしまう。


「ハイハイバトンターチ★」

「さー姫!お部屋に行って、エステしましょう~♪たっぷりお肌パックして、エステしてあげるんだから~ふっふ」


ふっふーーってなに?その笑みが怖いです。

びくびくとなっている優華を無視して、ベンダーバールのお付のメイドに身体を持ち上げられてしまった。

「ストラヴィンさんーありがとう」

それだけ言うのが精一杯だった。赤毛の剣士は、その言葉を聞くと、笑顔になり、満足そうに優華を見送った。


ベンダーバールに連れられて、優華は、ベットに横たわり、肌のエステを受けていた。

部屋は、とても心地よいアロマの香りがして、リラックスできた。

ベンダーバールのエステが心地よく、ウトウトとした頃。


すると、扉の外から突然声が聞こえてきた。

「姫、失礼します!文献をあさりましたが、残念ながら記憶に関しては、詳しいことは分からず。申し訳なく」

声の主は、土の精霊王と契約せしシェルフトだった。


「もー姫はエステ中なんだからさーリラックスさせてあげてよん。」


「いや、一刻も早く姫に伝えなければと!ではのちほど書庫へおこしください」

「ハイハイ!終わったら連れていくから!もうシェルはほんとクソまじめなんだから、ハゲるわよ?」

バタバタと掛けていく音が聞こえて、バンダーバールは大きいため息をついた。


優華は、念入りに行われたエステのあと、ベンダーバールにエスコートされて、長い廊下と階段をおりて、よやく書庫にたどりついた。

扉を開けると、部屋全体にぎっしりと本が置かれており、幾人も人が作業しているのか、活気にみちていた。

「あいかわらず色気もなんもない部屋ねー。はあ、姫・・・名残惜しいけど、ここでお別れね。」

「あ、はい。ありがとうございました。」

「そんな他人行儀なお礼なんていらないわよー」

いきなり優華の額に口付けをして、「じゃあねえ~」と投げキスをした後、去っていった。

いきなりの出来事に、拒否することもできずに優華はぼーぜんと立っていた。


「姫!大丈夫ですか!ベルの毒気にあたられましたか?」


その様子を見ていたシェルフトが心配してかけより、ぼーぜんとしていた優華の肩をゆすった。

その後は、シェルフトから長い~眠い講義を受けて、何度か意識を飛ばしそうになった。そのたびに右手で左の手の甲をつねって、意識を持ちこたえた。

「姫、ですからこれはですね」

「ハイ。」

うーん、これはかなりの拷問だよ~~!!大学の講義を聞いているみたい!!

シェルフトの話している内容の半分も理解できていなかったが、優華の記憶を戻す糸口を探そうと必死になっていることは理解できた。不器用な優華は、やんわりと断れず、必死になっているシェルフトに言い出せず、メイドが迎えにくるまでの2時間ばかりの間、講義を聞く羽目になった。


同じ書庫にいた優華の友人一樹は、部屋奥の隅にある机を陣取り、真剣な眼差しで書を見ていたことは、ふたりとも気づいていなかった。



ディーは、最初に優華の見舞いをしたということで、今日の訪問を遠慮をしたようだ。

3人の『守り人』から解放され、部屋にもどって、メイドにお茶を入れてもらい、リラックスしていると

笑みをうかべて、銀色の髪の王が優華の部屋を尋ねてきた。

優華は立ち上がって、王のお茶を自身で入れようとしたところ、メイドに先を越されてしまった。


「少し落ち着いたか?『守り人』はかなり姫のことを心配していた。許してやってくれ」


銀色の王は、ゆっくりと優華に話しかけ、慈しむように愛おしい眼でみつめた。おそらく今日は一番初めに優華と面会したかったであろう王。王の傷を癒しの力で治すことによって、優華の命が危険にさらされたことへの責任を感じていた。そのため『守り人』が優華にそれぞれ面会をしても、責任感からか、口を出すことはしなかった。


「あ、はい。みなさんに心配して頂いて、申し訳なく・・・王様の身体の方は、ほんとに大丈夫ですか?」

「うむ、姫の癒しのおかげでもうなんともない。心からお礼を申す。」

「いえいえ、あの、私をかばってケガをされたのに、こちらこそ申し訳ないです。」

「しかし、二度とあのような、無茶はしてくれるでない・・・これは王としてではなく、私自身からの頼みだ。」

力強い手で、優華の手を握り、自身の額にあてて、いつもの切ない眼でまっすぐとみつめる。

『はい』と返事をするもの忘れてしまい、その眼に吸い込まれてしまう。

私、この切ない眼に弱いみたい。心臓が、バクバクいって、王様に聞こえないか恥ずかしいよう。

耳まで真っ赤になっている優華に気づいた王は、そっと手を離し、本題に戻った。


「それと、今回の黒い渦の件だが、現在調査中でまだ何も分かってはおらぬ。この城自体に結界は張ってあるのだが・・・信じられないことだが、結界の中に入れる術を使ったようだ。引き続き調査する。」

王は、決意を込めた言葉を発し、その眼は見えない敵に対して睨みをきかせていたようだった。


しばらくすると、すーとその表情は王から消え、優華に目線が変わる。

「以前から話のあった町の散策についてだが、3日後ではどうだろうか?姫の友人の『一樹』というものがかなり痺れをきらしているようでな。このままではひとりで出かけてしまいそうな勢いなのだ」

王は少々困った顔をして、クスっと笑みを浮かべて、先程の表情とはあきらかに違う顔を見せた。


かずきーーーーーーほんとに今のこの状況分かってるの??

優華は、また一樹に対してあきれてしまった。



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