11 目覚めたときには・・・
また知らない天井・・・
そして身体は鉛のように重い、頭もズキズキする。
えっと、私は何をしてんだっけ?と考える。
「お目覚めですか!姫様! もう二度と起きないかと心配したんですよ!!」
メイドは涙を流し、優華にしがみついた。
「みなに知らせてきますね!」
すばやく部屋をでていった。
どうやら私は、「癒しの力」を使いすぎたようで、意識を失った。
一週間たっても目覚めない私を心配し、シェルフト筆頭に城の学者や魔法使いが書物をあさり、対処法を探っていたらしい。
「癒しの力は、使いすぎると自身の命を奪いかねませんからね。しかも姫は、精霊神様の力も使われた後で・・・ご無事でなによりです。王は、あれから2日ばかりで全快され、今回の調査のために走り回っておられます。黒い渦は、ゴトボルクが閉じて、事態は収拾しました」
ディーは、優華が意識を失っていた間にに何が起きたのか丁寧に説明し、話して聞かせた。
よかった。あんな血だらけだった王様が無事だったんだと、優華は心からほっとした。
優華を見る切なそうなあの眼が、なぜか頭に浮かんでいた。
目覚めた私は、まだ体力が完全に戻っていないため、大勢の面会を受けるのはドクターストップがかかった。『守り人』の中でも、一番冷静で、姫と話ができるということで代表としてディーが見舞うことになった。ストラヴィンはその決定に最後まで不服で、周りに八つ当たりしているとか。
「ところで、姫様、記憶は戻られておられないのですか?」
「・・・・残念ながら・・・」
「そうですか・・・あの時は一時的に記憶が戻ったということですね・・・
姫にお話してなかったのですが、この世界から他の世界にいくときは、記憶を消去しないと戻れないのです。しかし今回は異例で、戻った場合というのは、古い書物にも記載がなく、記憶が完全に戻るかどうかも分らないのです。」
ということは、もしかしらこのまま戻らないという可能性もあるんだ。
私は覚えてないけど、この世界の人達はなぜか私をとても大切に、大切にしてくれる。
そんな人達のためにも、思い出してあげたいけど。
そうだ!友人たちはどうしてるのかと急に心配になった。確か優華とともに玉座の間にいたのだけは、覚えていた。友人達より王の心配を真っ先にしてしまうなんて、恥ずかしく思った。
優華を守って瀕死の状態だっため、仕方ないことかもしれないが・・・。
「友人達は無事なんですか?!」
「ご無事ですよ。アウルスがかかえて部屋の外へ出しましたからね」
「あの、せめて、私の友人だけでも元の世界に帰ることはできないでしょうか?」
今回のようなことがあれば、いつ友人たちの命が脅かされるとも限らない。
この世界の王様さえも、命の危険にさらされた。
何も分からない友人達は、防御する術すら知らない。
「姫にお伝えしようと思っていたので、ちょうどよいですね。」
「実は、以前姫が元の世界に戻られた時の魔法陣があるので、ご友人達は戻ることができます。ただ、今から準備したとしても、最低でも1ヶ月はかかるかと・・・」
「なんだか色々気を使わせてしまって、すいません。ディーさんのせいじゃないのに」
ディーは突然目を丸くして、クスっと笑った。
どうして??なにかおかしなことをいったかな?
「失礼、姫の口から『ディーさん』という言葉をまさか聞くことなるとは、こっけいだったので、思わず笑ってしまいました。」
クスクスと笑うディー、それを見ていた優華が突然凛とした雰囲気になった。
「ディー、私はだいじょぶ。心配かけてごめんなさい」
「姫・・・」
我に戻った優華は、美しいブルーの瞳からぽろりと涙があふれていたディーの手を握っていた。
「姫・・・どんなに心配したか!」
この人の心を痛めるぐら心配させてしまうなんて、申し訳ないなあ。
ディーの気持ちが落ち着くまで、記憶が戻ったフリをしていた。
私と面会したあと、ディーさんは友人達に元の世界に戻る準備をしていると伝えると、雄也と友香はほっとした顔だったが、一樹だけはものすごく思いつめた表情になったらしい。
「せめて帰る前に『街』を見たい!この世界を見たい!」
一樹のあまりの勢いと、切実な懇願により、もう少し体力が戻った優華と街に行くということになった。
一樹って、自分の置かれている状況を認識してるのかなーと話を聞いてため息をついた。