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もう一度異世界へ  作者: 池田 真理奈
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10 闇夜

黒い禍々しい気配だった。

真っ先に気づいたのは、『守り人』と王だった。


玉座の部屋は、いきなり黒い渦を巻いた空間が広がり、そこから風が入り込み「ゴウゴウ」と激しく音をたてていた。城のものたちから悲鳴があがる。


「なんだよこれ!」


「驚いている場合ではありません、この部屋に早く結界を!このままでは城の外にも被害が!」


「わかってるって!」


ディーとストラヴィンの発せられた言葉が終わったと同時に、『守り人』の4人は、揃って結界の呪文を唱え、玉座の部屋全体を結界を張ることとなった。

玉座の間は広い、結界というのは敵の攻撃を受け流すため、普通は自身の周りのみに張るものである。広い空間に結界を張る危機に陥ることなどあり得ないのだ。

結界を部屋全体となると、いくら『守り人』の力をもったとしても、時間と集中力が必要になる。


「他のものをこの部屋から外へ!」

王が素早く命令したが、激しい風のため身動きが取りずらいく、非難するにもできない困難な状況。

王は、1人、1人の城のものたちの周りに結界を張り、風からの抵抗をなくそうとしているが、人数が多すぎて、王ひとりでは焼け石に水という状態であった。


戸惑っていた優華の友人たちは、ぼーぜんと立ち尽くすばかり、目の前の出来事と頭が追いつかない。

友人たちと一緒におろおろしていたはずの優華は、すばやく結界を張っているベンダバールにかけよった。


「ベンダバール!風の力をとにかく緩和させましょう!」


ベンダバールは無言でうなずき、表情は先程のオネエコトバの同一人物とは思えない。

「アンタタチ!結界はまかせた!」


「アウルス!この部屋から早くみなを非難させて!あなたなら数人ぐらいかつげるでしょ!」


「しかし!姫様が!王が!」


「城のものたちを守るのも、あなたの使命でしょ!」


「はっ!」

激しくうなずき、屈強なその身体で城のものを何人かかつぎあげて姿がみえなくなった。

その姿を見送って安心の表情から一気に険しい顔になった優華。


「ベンダーバール!」

「おおせの通りに!」

『風の精霊王シルフよ、我の言葉に耳をかたむけ、我の願いに答えよ』

『精霊神王よ、我の願いに答えて』


ふたり同時に精霊魔法を唱えると、まばゆい光が発せられた。

精霊王と精霊神王の力を借り、風を和らげ、今開いている空間を閉じるためだ。

精霊王の力は強力で、そのため力使い終わると、かなりの体力を消耗してしまう。

しばらくすると、徐々にではあったが、風はおさまり、大きく開いた空間の闇は少しづつ小さくなっていった。

ふたりが、精霊魔法を唱えている間に、非難は終わったのか、メイドや騎士たちの姿は見えなかった。

『守り人』の結界についても、時間がかかったが張り終えたようだった。


「ふう、なんとかこの部屋のまわりの結界は張り終えたか」


「しかし、まだ安心できません。空間は小さくなったとはいえ、まだ開いています」


「精霊王と精霊神王の力をもってしても、渦を閉じれないというのか・・・」


『守り人』4人は、その事態を深刻に受け止めているが、思い当たる手立てがない。

部屋に結界を張った為、体力はほとんど残ってはいなかった。



その時だった

『この世界に召還せし、異界の女・・・邪魔だ・・・』


頭の中に低いかすかな、背筋がぞくーとする気味が悪い声が聞こえたと思った途端、黒い空間から黒い渦が優華に向かってまっすぐのびた。

一瞬の出来事だった。王は優華の前に立ち、守りの結界を張ったが、黒い渦はそれ以上にすさまじい力で

王の身体は、はげしく傷つき、口から血を吐き、身体からは大量の血が流れおちた。


「王!!」


優華が傷ついた王の口元に手をあてると、かろうじて息をしていることは確認できた。

癒しの言葉を唱えて、王の身体に手をあてると、光が放ち、王の傷がみるみるふさがっていく。

白いワンピースは王の血で染まり、優華の顔は青白くなっていた。


「姫!それ以上はいけません!」

「姫!危険だ!」

「やめろ!」

「姫!」

『守り人』が焦って優華をとめるも、癒しの力を止めることはなかった。

癒しの力とは、相当な自身の体力を削る。しかも、かなりの重症の傷であれば、それだけ体力を消耗してしまう。重症の患者であれば、2~3人がかりで癒しを行うこともあるぐらい癒しの力というはとても命を削る力なのだ。

『守り人』が優華の癒しを手伝おうにも、膨大な結界を張り、または精霊王との力を使ったため、強力な癒しの力を使う余力は残っていなかった。


「よかった・・・・」


優華は、王の傷があらかた癒えたのを確認し、床に倒れこんだ。


「姫?!」「姫!!!」


遠くからそう呼ぶ声が微かに聞こえていたが、ゆっくりと意識を失った。


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