第一章 第15話 風闇
【現象型 その5】
あと2回位ですかね?
現象でもかなり特殊な物が存在します。
例えば、自然でも地獄の炎や溶けない氷とか、8つの雷とかですね。概念なら、天地や星とか、災害です。
それらは一応2つのどれかに分類されますが、微妙なのもあるのでまとめて特質と呼ばれることもあります。
1つで複数の能力が多いです。
それと特質は制約が重かったり、複数ある場合が多いです。
主人公もこのタイプです。
* * *
「最初は白兵戦か……」
「つまらなそうですね。先生……」
「だってそうだろ?てっきりドンパチするのかと思ってたしよお」
「一応2人とも単純な魔力操作は使ってますけど」
魔力はただ纏ったりするだけでも、身体機能強化が可能だ。
こういう魔力操作の技術ができるようになって魔法使いと言える。
閑話休題。
「いやよお、オレ的にはもっと派手にやると思ってたんだ」
「……ジョーカーが皆派手なわけではないですよ?」
「んまあな。でもせっかく派手な現象同士の対決なのになあ」
「え」
……聞き捨てならないことを聞いた気がする。
「何でわかるんですか?」
「この間の映像見てな。予測した」
この人やっぱり優秀だな。生活態度はヒドイけど。
「融合型という可能性もありますけど」
「ない。能力が結構安定してたしな。反動もなさそ……お、やっと動きやがったか!」
先生から視線を移すと、戦況が変わっていた。
戦場はクロト1人になっていた。
クロトが刀を振るい、攻撃を避ける。見えない何かを防いでいるようだ。
「風で光の屈折操って不可視になっているようですね」
「ウインドウズの得意技だな。人って生き物は目に頼るからな」
「クロトは防いでますけど」
「気配読んでいるんだろ?……それにしても」
ニヤニヤし出したグレス。
「お前にも春が来て、おっさん嬉しいよ」
「なっ……アイツとはそんな関係じゃ」
顔が赤くなる。
「とぼけるなとぼけるな。これでも心配してんだぜ?オレは一応副担任だからな」
因みに担任がアレな為、専ら副担任のグレスが生徒の相談やらなんやらを引き受けている。その分事務作業はセレンが引き受けている。Win-Winの関係だ。
「……いい加減にしないと風穴開けますよ?」
「悪かった。謝るから、発動している魔法は止めてください」
「……次はないですからね」
「ああ」
発動しようとしていた魔法をキャンセルする。
「彼とはただの友達です」
「そうかい。まあそういうことにしといてやる」
「先生?」
「……状況動いているぞ」
露骨に話がずらされる。
戦場を見てみると、確かに状況は変わっていた。
さっきまでは、見えなくなったディーネの攻撃をクロトが捌いていただけだった。
だが、今再びディーネは姿を再び現している。
無駄な事は続けない主義である。
距離を保って竜巻や風の刃、空気弾を放ち、時には風を纏って接近戦を挑んでいる。
まるで舞を舞っているようだった。
しかも先程までの防御主体の魔法ではない。
———自然属性 『風』 補助魔法 風陣強化
風を纏い、身体能力を強化させる補助魔法だ。
ディーネの得意技であり、その気になれば他者にも付与可能である。
一方クロトはと言えば相変わらず剣1本で攻撃を捌き続けている。……時に拳と脚も使っているが。
だが彼はその身体と武器に黒い闇を身に纏い始めた。
闇が風を取り込んでいく。
どうやら、魔法を飲み込む特製を持つようだ。
「へえ……」
「自然系の闇ですかね?」
「うーん、まだ判断出来ん。もしかしたら、概念っていう可能性もある」
そんな会話をしながら、2人は戦場をみている。
一方野次馬はと言えば。
「すげえ、あの新入り。十傑と渡り合ってるよ」
「元素使いと渡り合っているだけあるな」
「でもさあ、あいつの能力なんだ?」
「……さあ?現象じゃね?」
相変わらずの野次馬達。
それにしても……。
「先生」
「ん?」
スルメを齧る教師に尋ねる。
「クロトの能力は一体何だと思いますか?」
「……予想は付いたが、まだ判断材料が足らん。もう少し見守っていろ。お互い決め手がないからな。そろそろ」
スルメを咥えながら、ビールを飲んで、息を吐きだした。
「動くぞ」
その言葉と同時に……
ポツ、ポツ、ポツ
戦場に雨が降り始めた。
これが第3ラウンド開幕の合図だった。
【現象型 その6】
これで最後です。多分……。
特質の具体例と行きましょう。登場予定の能力を上げていきます。
相手の魔法を喰らいつくす闇を操る。
この世に存在する不可視の力関係全てを操る。
特殊な炎を操る。決して消えない。
あらゆる物を滅ぼす力。
などなどです。ただし強力な分制約も大きいです。
次からは個人のジョーカー解説もやります。お楽しみに。