朝が来る
理央は何度も何度も、手紙を反復して読み返して、一か月もかけてやっと決心を固める。そして、もう二か月以上も連絡を取っていない、神山にメッセージを送る。
「今度の土曜日に、神山さんに教えて頂いた最寄りの駅で会って頂けませんか? 20時に改札近くでお待ちしてます。勝手言ってごめんなさい」
文字を打ち込んでも送信するまで何度となく迷い、躊躇して、やっと送り出した。しかし返事は来ないまま、読まれた形跡もなく、その日を迎えてしまう。
一方的に連絡を絶ったのだから、もう相手になどしてもらえないのかもしれない。第一大人なのだし、
今まで相手にしてくれていたことすら奇跡だったのかもしれない。
それでも理央は、弱気になる自分を奮い立たせて、潤の手紙を手に待ち合わせの駅に向かった。
正直に。やれることをやってみたいと思う。本当はずっと、神山さんが好きだった。
会いたい。会いに行きたい。
神山は来ないメッセージを待たない様に全ての通知を切っておいた、理央とよくやり取りしたアプリを何気なく開く。そこで見間違いかと思って暫く固まった後、理央からの届いていたメッセージを開く。
そして、部屋で寝そべっていた状態からがばっと起き上がる。慌てて時計を見上げると、理央の言っていた時間をとっくに過ぎていた。
君はまだいるだろうか。
焦る気持ちからスマホを持たずに靴を履いて引き返し、財布を持ってないことに気が付いて、また引き返す。
そして、夜の街に飛びだして行く。
君に会えたら伝えたい言葉がある。言わなかったことを後悔してそんな気持ちを封印してスマホを見ない様にしていた。
でも、君に会えるなら伝えたい言葉が。
君の指から光ものが消えたら伝えたい言葉があるんだ。
「ずっと、君が好きだった」
そう伝えたい。だから、ずっと君を待って居た。伝えられなかった言葉、口にできなかった想いをいつか伝えたい。伝えられる日まで、君を見失いたくない。
だから、待って居て。今、行くから。
長い夜を超えて、君に伝えたい言葉があるんだ。
終わり