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夕刻
理央は電車のゴトゴトという揺れに身を委ねながら、向かいの窓から外の景色を見ていた。
流れていく景色がオレンジ色に染まっていて、初めて見る景色は切ないほど美しく、胸を震わせる。
過ぎて行くビルも空も、オレンジ色に染まって、もうすぐ夜を迎えようとしている。
理央は膝の上に置いた手紙に手を添えている。
薄い何の飾りもない封筒に添えた手は、真っ新で、微かに汗ばんでいる。
その時が一刻一刻と近づいてきている。
快適な温度に設定されている車内で理央は一人、手に汗を掻き、そして指先が震えている。
理央は大きく息を吸うと手をスカートになすりつけてから、手紙の上に置きなおした。
もうすぐ夜。何があっても時間は過ぎるし、明日は来る。結果は、必ず分かる。
真っ直ぐ、誰も居ないシートの向こう、窓を超えて、見たことのない風景を見つめている。