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06:みんなで

管理迷宮最下層ボス部屋:

それは、一見すると人の姿に酷似していた。

しかし、その顔は獣のそれであり背には大鷲の翼を四枚広げ、手は獣の足は鷲の鉤爪を持っていた。



風の王が現れた!!!



「魔王じゃんかー!」

「マイルフィックなのだ!」

「パズズだろ!」

「風の王としか鑑定できないの!」


激レアどころか、本当に魔王が出てきてしまった。

特別な強い魔物の性質か風の王は静かに立ったままこちらを見つめている。


「こちらから仕掛けないかぎり戦闘が始まらないタイプだね」

「リン、私は全然鑑定通らないけど貴女は()えてるのよね?」

カーサがこちらを見てくる前から、ツイッと目を逸らしておく。先制攻撃だ!

「鑑定出来てるのね? リン!」

真っ赤な顔で頬をプクーっと膨らませこちらを睨んでくる。

可愛いじゃないか、膨らんだ頬をつんつんつつく。つんつんつん、クロも加わる、つんつんつん。

藤原君も「むっきぃぃぃ!」豪快に拒否された。寂しそうにこちらを見ている。私を見つめられても困るよ!


「リン、逝けるか?」

ワクワクが止まらないという顔のクロ君が聞いてくるけど。

「あー、うん。そっちの意味の逝けるならそうかもね」

「マジで!?」

「んー、というか。目が青いよね」

「え? これって...」

「じゃあ、今日の迷宮探索終了ね...転移!」

有無を言わさず転移を発動する。青い目は魔物ではないのだ。


このタイプには一度会っているから判る。ボス部屋にロックの魔法はかかっていないので転移が可能なのだ。


護符がぁぁぁあああ!

魔よけだろ?

何で倒してないのにドロップがわかるのよ!?

カーサ...クロと藤原君の会話に突っ込みを入れては負けなんだよ!


とにかく不確定な要素があるなら手を出さない。避けられる戦闘は避ける。

じゃあボス部屋入るなって? そうもいかない、あのような存在が逃げられない敵として出てくるかもしれないのだから。





管理迷宮一層転移魔法陣前:

討伐組の主力が待機している。

現在各層に盗賊や狩人を主軸にした探索部隊が展開して冒険者と魔物の探索を行っている。

討伐隊は高位魔物の報告があった階層へここから転移し戦闘を行うことになる。


最大戦力であるテレスは当然ここにいる。そして彼女の単騎突撃の無謀な戦闘方法に対応できるウィリアムも同じパーティーにいる。

ローランの冒険者ギルドは質が良いといわれる所以(ゆえん)がこれ、ギルド長自らが戦闘に参加できる戦力を持っているという事。

ある男の離脱によって数多あるギルド最強という称号はなくなってしまったが、それでもウィリアムとテレスが存在する限りこのパーティーは最強であることに代わりはないのだ。


「それで、彼を蘇生したのはリンさんという事なんですね?」

「ええ、そうよ」

「彼女はどうしたんですか?」

「フジワラ達を迎えにいったわ、もう街に戻ってると思う」

どこにどうやって迎えにいったかは聞かない、答えないと解っている問いだから。

「で、彼女の見立てはどうなのですか?」

「さあ、私から貴方に情報が流れるのは分かっているのだから何でも全て話してくれるわけないでしょう。リンちゃんが何を見て何を考えているか...少しでも支えられたらと思っていたけれど、どちらが支えられているのか...」

「貴女らしくありませんね」

「この前の件もリンちゃんが絡んでいるのでしょう?」

先頃あった大規模な戦闘、いや戦争の事だ。その戦争で英雄が誕生している。

「そういう話です。彼女もそれとなく事情が分かる様に立ち回った節がありますし」

「探るなという事でしょう? そういう事なら私から話す事は無いわ」

「扱いづらいですね」

「リンちゃんもそう思ってるわね」

「似た者同士ですか、だからなのか踏み込んではいけないラインは判るのですがね、どうにも...」

「ギルバートがいなくなって焦っているの? らしくないわね、それほど依存していたのかしらね」

「…………感謝していますよ」

「なにが?」


おぃ、お前が行けよ!

やだよ喧嘩してるじゃないか!

お前こそ行けよ!

俺、殺されたくないよ!


「なんですか?」

「は、はひぃぃぃ!」


もう少し踏み込んだほうが良いのでしょうかね。





魔道具屋:

貴族街にカーサと買い物に行くので藤原君も誘う、というかついて来る気満々のようだ。

「藤原君も服買う?」

「別に俺、着る服に困ってはないかな」

「んーと、普段着じゃなくて礼服みたいな奴買っておいたら?」

「えー、俺そういうとこに出る気無いからなあ、ギルドの集まりとかはこれで問題ないし」

「あー、大地の鎧は結構いいよね。シリーズ装備だけあって見た目も格好良いし」

「楠木は、その陰陽浄衣ってやつならどこでもいけそうだな」

「うん、こういうとき後衛の装備はいいよね」

「だなあ、俺も後衛用の装備揃えようかなあ」

「普通の服買うっていう選択肢は無いんだね」

「そりゃあな、錠剤船上(じょうざいせんじょう)の心得ってやつだぜ!」

「常在戦場だよね?」

「そうとも言うな!」

クロと先に飛び出していったカーサが扉の外から呼んでいる。

「リンー、早くするのだ!」

「置いてっちゃうよー!」

「はーい、いこ藤原君」

「おう!」


フジワラは留守番なの!

小僧ついてくんな!

うっせ! 俺は楠木に誘われたんだからな!

クロ、藤原君貴族街行く途中の屋台で美味しい丼物(どんぶりもの)教えてくれるってさ。

なん、だ、と...それを先にいえよーほらほらいくのだ!

単純だなネコよ。

あ゛?

あ゛?

ふたりとも置いてくよー?

まっちくりー!



ゆっくり買い物をするなんて、凄い久しぶりな気がする。


たくさん食べ物を買って。


たくさん飲み物も買って。


四人でたくさん美味しいものを食べて。


カーサとお揃いの寝巻きを買って。


宿まで付いてこようとする藤原君をクロが追い払って。


カーサとクロと私で一緒に夕ご飯を食べて。


一緒にお風呂に入って、大きなベッドに皆で一緒に寝て。


翌日、なるべく早く帰ってくるからと言い残し。


カーサは里へ帰って行った。

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