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70:狂乱の迷宮

四層で得体の知れない獣が出現した。


その報告に管理迷宮事務所は騒然としている。


市民街ギルド所属のBランク冒険者が訴えている。

「頼む救出してくれ! あいつらは俺達を逃がすために残ったんだ」

感情的になっている冒険者に落ち着いた声で語りかける。

「まず、詳しい報告をしてください」

「そんなことより!!!」

「そんなことではない。順番を間違えるな。俺の部下は容易(たやす)くやられたりはしない」

「あ、あんたは...」








迷宮が紅く脈動した後に現れる魔物。

それから取れる素材だけでも莫大な利益をもたらしてくれる事から、一攫千金ではなく確実に狩れる編成で迷宮探索が行われる様になった。


冒険者だけで行われていた狩りは、より確実性を求める冒険者ギルドと強大な敵を倒す事により得られる膨大な経験値を求める王国の騎士団により、狩りと実践訓練の場となりつつあった。


管理された迷宮からの絶え間ない供給が街を(うるお)す。

迷宮の異変により危惧されていた供給ストップが杞憂(きゆう)に終わった事に管理者達は胸をなでおろした。その矢先おかしな噂が立ち始める。


突然現れる魔物の属性は悪魔(デーモン)族がほとんどであるが、巨大な獣を見たという報告が僅かながらに混じり始めてきたのだ。


己の命を天秤にかける者達は噂を(ないがし)ろにしない。

冒険者ギルドの長であるウィリアムにより迷宮に潜る各パーティーに斥候要員が割り振られる。

主に裏の舞台で活躍する者達。敵の監視や要人の陰からの警護など熟練したスキルが求められるそれを完遂して来た者達。



噂が現実として報告されるようになる。



魔獣。

それは、獣の姿をした魔物。

しかし報告では、その大きさの桁が違うと言う。


まるでドラゴン。

レッサーデーモンの上位種がグレーターデーモンであるようにレッサードラゴンの上位種は属性ドラゴン、(ファイア)(アース)などの属性を持った巨大竜。それに引けを取らない大きさの獣だったという。


獣は最下層近くに出現し、一定時間暴れ回り消えるという。

最下層への侵入を禁止し対策を練る。情報収集を得意とした冒険者に依頼を出し更なる情報を集めつつ高ランク冒険者にその情報を提供し討伐依頼を出す。



討伐に成功するが、獣の亡骸は掻き消えたという。



獣の報告がなくなったと思い始めた頃にまた噂が立ち始める。


巨大な双頭の獣を見たという噂が立ち始める。


魔獣オルトロス。幾つかの報告の中にその名が刻まれる。



ある危惧があった。

迷宮は成長する。何を糧に成長するのか?


管理迷宮の異常を聞きつけローランに集まってきた冒険者の数はどれほどか?

管理迷宮から戻らなかった冒険者の数はどれほどか?


獣は中層に出現すると言う。十層以下への侵入を禁止する。

ギルド長ウィリアムの(めい)にローランの冒険者は従うが、外から来た者達は己の判断で行動する。




この現状を明確な危機と判断する。

この危機はローランの危機と判断する。


ある者に依頼を出す...が予定が狂った。


ギルドの最大戦力とローランの英雄を軸に組むはずだった討伐隊。

ラムダ殿が作戦中との事で実行日が大幅にずれこむ。作戦の決行日、テレスが志願というか行かせないと殺すと脅してきたので送り込んだが、なにかやらかしてきたようだ。








冒険者がその者の名を呼ぶ。

「英雄ラムダ!」

「報告をしろ。お前は十層までの露払いを行う部隊の者だな?」

無駄な戦闘を避けるため魔獣オルトロス出現階までの魔物を討伐しておく為の部隊。

高ランク冒険者と王国騎士団と教会の僧侶達で構成された戦線維持も目的とした部隊。

「ああ、だが俺達は維持部隊だ。先頭の部隊は既に下の階層へ移動した後だったんだ」

「どういうことだ?」

「突然現れたんだ」

「迷宮が紅く輝いたのか?」

「違う。いや、そうなの...か」

混乱する冒険者。


「まあいい、四層なら近い。ウィリアム殿今すぐに向かおう」

「…………待ってください。報告の続きを」

ある危惧があった。


「うん? まだ何かあるのか...」

「双頭の獣でしたか?」


「ち、違う! 三つ首の獣だ!!!」

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