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53:悪夢

目を覚ます。

何か悪い夢を見ていたようだ。

内容は思い出せないが何かとても嫌な夢だ。


身を起こそうとしたら体が重い。

ガチャッ! 金属同士がぶつかる音がする。ああ、鎧を着けているのか。


手に何か...剣を握っている。

周りでは戦闘と思しき音が...戦闘中に気を失ってしまったのか。


ハハ、死んでいないとは運が良い。

そういえば、悪夢を見たときは現実で良い事が起こるという。


ついている。運が良い。ツキがある。そう思いつつ顔を上げる。


そこには、赤と白を基調とした美しい。神事を行う巫女のような服を纏った女、というにはまだ若い少女が立っていた。


どこかを見つめているその美しい横顔と立ち姿は、そこだけ時間が止まったかのような静謐な神聖な美しい。まるで絵画のような空間がそこに存在していた。


その幼さの残る美しい横顔に見惚れていると、突然ふっとその横顔が微笑む。


その微笑にドキリとしながら、その微笑を向けられた相手に嫉妬を感じその視線の先を追おうとしたところ。こちらを向いた少女と目が合う。


少女は優しく微笑み。そう、先ほどと同じなのに決定的に何かが違う顔で優しく微笑み聞いてくる。

「おはようございます。良い夢はみれましたか?」

「あ、あ、」

悪夢が。

「まだ戦う気力はありますか?」

「あ、あ、あ、」

溢れ出して来る。


後ろから叱咤が飛んでくる。

「戦え! 隙を突いて俺を助けろ!」

振り向けば両の腕と両の脚を地面ごと剣で突き刺され、さらに腹も木の棒で貫かれたトリン様が叫んでいる。


その状態でなぜ生きていられるのか...ゴッ!

ベキッ! ボキッ! と自分の腕とあばらが折れる音を聞きながら横に吹き飛ぶ。


「戦闘中に余所見はダメですよ」

青白く光るひのきの棒を振りぬいた状態で悪夢が微笑む。

「グッ!」

気合と共に立ち上がり。スキルを...無い! スキルが無い!!!

「あ、スキル消えちゃいました?」

背後から悪夢の声がし、ゴッ!!!

横から膝を殴られ。嫌な音の後に前ではなく曲がらない筈の横に倒れつつ膝をつく。

「アヒャヒィヒッ」

引きつった喉が変な音を発する。


絶望の中で横から声がする。

「俺を助けろ!」

ブチッ。頭の中で何かが切れた音がし。

「ウルサイ! 黙れ! お前こそ、そこで寝てないで俺を助けろ役立たず!!!」

「なっ...」

絶句する無能者。こんな事になったのはお前のせいだ!


耳元で悪夢の声がする。

「仲間割れ?」

「ヒッ! たす、たす、たすけ」

「助けて?」

「はひ! たすけ」

「そう言った()達を助けた事ある?」悪魔が耳元で囁く。

「あり、あります! あります!」

「へぇ、優しいね」

「はひ! はひ!」


ズッ...


何か冷たいものがわき腹から差し込まれる感覚がする。

「ア、ア、ア、たす、け、てくれないの?」

内臓を貫きながら心臓へ向かう自分の剣を感じながら悪魔に質問する。

「ん? 今までも助けるって言って助けなかったんでしょ」

「ア、ア、ア、」

全ての獲物を助けると言ってささやかな希望を持たせておいて、陵辱し心を折り、殺してきた。

「納得した?」

納得しない。自分が同じことをされるとは夢にも思っていなかった。

「ヤダ、ヤダ、ヤダ、たしけて?」

「安心して。後五回殺してあげるから。そういえば、回数の意味解る?」

「わかりまえん」

「そう、別にいいけど。じゃあね」

「たし……け……」

騎士が息絶える。






役立たずさんが声を荒げる、

「キサマ! こんな事をしてどうなるかわかっているのか!?」

「んー?」

役立たずさんの後ろに移動する。

「………………」

姿が見えない場所に移動しただけで怯えて黙り込む。

「いやいや、何で黙るの?」

「ダ、ダマレ」

「声、震えてるよ。その名の通り手も足も出ないんだから口だけ出していいんだよ」

「ダ、マレ」

「……」

無言でアイテムボックスから錆びた剣を取り出す。

「ヒッ! 父上助けて! 助けて! 誰でもいい助けてくれたものは貴族にしてやる! 誰か!?」


ズッ...錆びた剣が体を貫いていく。

「ガアッ!」

「自分でどうにかしようと思わないの?」

「ガアアアアアア! 誰か!!!」



悪魔が囁く。

「ちなみに、ちょっと前からこの周りに静寂(サイレス)展開してあるから、外に声届いてないんだよね」

「ア?」

「ざんねん」と、悪魔が微笑む。

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