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17:大図書館2

三秒ルールというものがある。


最初に思いつくのは、食べ物をおとしても三秒以内に拾えばセーフというものだろうか?


他には、人の第一印象と言うものも会って三秒で決まるというし、逆に三秒以上はストレスを感じるともいわれ、ゲームなどでは次のアクションに三秒以上かかる処理はNGとされ、苦肉の策として砂時計のマークを出したり読み込み中の画面を出したりする。


匂いというものもそれにあてはまる。

新しい空間に入って三秒、呼吸にして一呼吸か二呼吸だろうか、新しい匂いを強烈に感じそれ以降はその匂いに慣れてしまうものだ。


例えば外出先から自宅に戻った時、生き物を飼っている家に入った時、長めのお花摘みしていた人の後に入った時。


ただ、先の例であるようにその新しい刺激を受け入れた者は問題ないが、受け入れる事ができなかった者はその時点からその匂いがストレスとなる。


この少女はどうなのだろうか?




地上より少しひんやりした空気と鼻を突く独特なにおいが全身を包む。

「本の匂いだ、なんか懐かしいなぁ」

(臭いのだ!)

「おや、お若い方でこの匂いを不快で無いというのは珍しいですね」

司書さんが意外そうに言ってくる。

「そうなんですか?」

「ええ、私も若い頃はこの匂いが苦手だったのですが、面白い本を読むために入り浸っているうち、いつの間にか好きになってしまいましてね、今ではこの通りですよ」

好きが高じて司書さんですか。



ファウストの迷宮(1/1):

魔眼に映る大図書館の鑑定結果。

(めいきゅうやーん! って突っ込みを入れたくなる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?)

(リンさん、ここ迷宮で御座いますのかしら?)

(ええ、そうですのよクロさん。ファウストの迷宮ですって)

(マジ刑事(デカ)!)

(クロさん、なんですのそれ?)

(お気になさらないで下さいましですことよ!)

(そろそろ止めない?)

(うむ!)



「入り浸るというのは、もしかして本の貸し出しはしていないのですか?」

なんというか、入り口見た時点でそんな気がしていたんだよね。

「ええ、貸し出しをしていないと言うよりも本を外に持ち出せないといったほうが正しい答えなのですけどね」

本は迷宮の一部という事ですかね?

「凄い広いですけど、魔物とか出たりするんですかね?」

「は? ここはただの図書館です、本以外は何もありませんよ」

本が魔物なのかな?



「光魔法の書籍はこの辺りの棚になります。蔵書の質も量も専門である教会に引けをとらないと自負していますよ」

「神器とかも光魔法の分類であってますか?」

「神器、ですか...」


まずったかな?


「街ではこのまえの大戦で英雄の人が神器を使って戦いを勝利に導いたという噂が流れてるので、神器と言うのに少し興味が湧きまして」

「ああ、街ではその様な噂が流れているのですか、学園からは見る事ができなかったのですがもしかすると市民街からは神器の発動が見えたのかもしれませんね」

「ええ、公式発表は大規模魔法という事ですが、聖騎士の方も出陣してたと言う話もあって神器の発動ではという噂がですね」

「ははあ、市民というのは噂好きですからね。神器については神話の部類に入りますので...こちらへ」


少し場所を移動し、テーブルと椅子が並んでいる読書スペースの端。

「見取り図ですか、大きいですね」

「ええ、困った事にこの見取り図は我々が確認できている範囲しか記されていないのですよ」

「はあ、なんですそれ?」

職務怠慢ですかね? なんてね、勝手に増えてるとかかな。

「いつの間にか、本が増えてまして...」

「はあ、ミステリーですね」

「ええ、ここは元は学園の創始者である大賢者様の書庫だったのですが、色々と不思議な事がおきまして...」


(リン...)

(うん、これ以上は止めておこうか)


「えっと、図書館の使用上の注意みたいなのを教えていただけますか?」

「はい、わかりました」


それほど厳しい制限は無かった。

入館と退館のチェックのみで、閉館前にはアナウンスがあるので必ず退館すること。

地下の図書館内は広大過ぎて、わざわざ残っている人を探すという事が不可能なので、呼びに来たりはしないという事だ。

時間が過ぎたら扉は閉ざされ、取り残されたものは図書館内で夜を明かす事になるのだという。

行方不明になった生徒とかはいないのかと聞くと、いないと明言された。


(いるな!)

(まあ、いるだろうね。けど死体とかは残らないよね、おそらく)


迷宮は死体を吸収する。


(入館の記録を消せば行方不明者無しという事か!)

(だね!)

(ホラーだな!)

(だね!)


そういえば、人の名を冠した迷宮と言うのは初めてだ。

(大賢者ゲオルク・ファウストね)

(ボスはあいつか?)

(いやぁ、ボスとかいないんじゃないの?)

(夜になると魔物が出るとかか?)

(んー、じゃあ夜来るの止めよう)

(はんたーい!)


(まあ、多分探索する事になるだろうから転移魔法陣の設定はするし、調べ物が昼間だけでは無理なようなら夜も来てみよう)

(おおぅ、闇時間!)

(闇時間?)



神器は神話という事で神話関係の書籍の位置と魔道具の書籍にも載っているかもという事でそこも教えてもらい、受付に戻る司書さんに礼をいい別れる。



光魔法の棚に行こうかね。

隠密を発動し他人から認識されないようにして移動する。

読書スペースには少ないながらも人がいるし司書さんに案内されている最中も何人かの学生とすれ違った。

最近は顔見知りとしか会っていなかったから気にしていなかったけど、私の服装は目立つ。

真っ白のローブに真っ黒の髪。ローブの下は陰陽浄衣、これは狩衣(かりぎぬ)といえばわかりやすいのか、いやマジックアイテムなので女の私に合わせて巫女服に千早(ちはや)を羽織ったような見た目になっている。神事に舞を舞う正式な服装の巫女さんと言えばわかりやすいか。

冒険者の全身鎧姿や金糸銀糸の派手なローブ姿などなかなか派手な装備の中に混じっているとそれほど目立たなかったけど、学園指定の制服が主流のこの場では結構人目を引く。


(うーん、ローブはフード被ると逆に怪しさ満点で悪目立ちしそうだし、だからといって目立たないために普通の服着て弱くなるとか本末転倒だし)

(おい、お前いい装備してるなよこせ! とかいわれそうだな!)

(さすがにそんな傍若無人な人はいないと思うけどなー)

(その装備でスキルの効果をアップしてるのね卑怯よ私によこしなさい! とかいわれそうだな!)

(えー、じゃあ、この程度の装備も手に入れられないほど貧乏なんですか? とか返そうかな)

(きぃー、決闘よ! だな!)

(別に決闘とかならいいや、さくっと倒せばいいし)

(人前でさくっと倒すのか?)

(うん、別にランクアップ試験で強いの広まってるしいいでしょ)

(つまらんのだ!)

(まあ、そんなこと起きないから大丈夫さ!)



えーと、ここだったかな。

通路から棚を覗いて見ると先客がいる。私と同い年くらいの女の子。

鑑定っと、マウラさんか、光魔法1のスキルがある。


私が教える光魔法の生徒さんかなぁ...

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