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16:大図書館

学園内にある寮の私にあてがわれた部屋へと戻る。


室内を()る。


「…………はぁ」

思わずため息が出る。

「どうしたリン?」

フードから顔だけ出してクロが聞いてくる。

「また増えてる」

「魔道具か?」

「うん」


魔眼で色の見える部分をそれぞれ回り、新たに設置された盗聴や盗撮の魔道具を回収する。

「ここは、ゴミ屑どもの巣窟か? 本当に吹き飛ばした方が良いのではないか?」

クロ君少しお怒りモード入ってますね。

「んー、どうしようかね」

取り合えず、扉についている鍵というものが何の役にも立っていないという事と回収した魔道具の種類から相手は複数という事がわかる。


「魔道具なのだ、高価なのだろう?」

そうだね、一介の学生風情が簡単に買える物ではない。

普通の学生の懐事情はウィン君達に聞いて知っている。冒険者と兼業している彼等でもそうそう魔道具には手が出ない。

この学園でもウィン君達は裕福な部類に入るという事だし平民出身や普通の貴族関係者ではこれをそろえるのは無理だろう。それにこういう諜報系の物は魔道具の中でも高価な部類に入るとカーサが言っていた。


「これは学園自体が仕掛けたと見た方が妥当かなぁ。あとはなんだろ、まだ教師として活動してないから私の存在自体は学園内に知られていないと思うんだけど」

「前任関係じゃないか?」

「あー、そっち関係の何かをしにきたと警戒されているとか?」

「うむ」

「失踪とかいってたし、そっちもあるのかぁ。面倒臭いな」

「どうするのだ?」

「まあ、数に限りもあるだろうから仕掛けられるたびに回収すればいいよ。今、この街で新しい魔道具は購入出来ないからね」

ある一族が運営する、街にひとつしか出店されない魔道具屋は今休業中だ。


「リン、前任の失踪については調べるのか?」

「ん、別に調べないよ。だいたい教師自体がついでだしさ」

最初に部屋に入った時回収した魔道具に何かヒントが残っているかと思ったけど何もなかった。

まあ、少し部屋を留守にしただけで新しい魔道具が仕掛けられているくらいだ、頻繁に回収しに来ているのだろう。


まめな事だ。


「ついでのことで労力割くのは面倒なんでそっち関係はあんまり自重しないでいこうか」

「皆殺し?」

「んー、まあ、殺しにきたら殺すけど」

「おぉぉぉ! リン、とうとう世界征服か!」

「いやいや、どう解釈したらそうなるのさ? 殺すといっても生き返るんだし、まあなんか色々と面倒くさいよね」


貴族の関係者ならば、死んだとしても確実に蘇生される。彼らにはその手段も財力もあるから。


逆によそ者で何の後ろ盾も無い私は死んだらそれで終り。

おそらく死んだら蘇生する前に後見人となっているローラン王家に引き取られ色々と生き返った後の束縛の処理が施されるだろう。

奴隷として戦争の道具になるか、戦争じゃない道具になるのか。まあ自分の意思で死ぬという事も出来なくなるのだろう。


それ以前に、私が死んだらクロとはお別れだ。

もし運よく何の束縛も無く生き返ることが出来ても、再度召喚するクロは今のクロではない、今までの記憶も何もかも忘れた別の生き物。



学園というのは何でもありの迷宮内とは違うのだ。死体も何もかもを吸収しその存在自体を無かった事にする迷宮とは...


迷宮内で、魔物に殺されそのまま迷宮に吸収されて終るのを理想の死に方と思っている私は...


「……少しでも」

「ん?」

「我が少しでも危険と感じたら、そいつを蘇生など出来ない灰にする」

「ん。目撃者は少なめにね?」

「目撃者も灰にするのだ!」

「それはダメでーす」


学園ごと灰にするのだぁぁぁ!

フードの中で暴れだしたクロを取り押さえ腕に抱く。




大図書館に行こうか。


部屋に入った時に掛けたロックの魔法を解き、扉を開ける。

「……こんにちは」

扉の前にいるメイドさんに挨拶をする。

中の音何も聞き取れなかったでしょ? 残念でしたね喋るネコとかいたんですよ?

ちなみに天井にも誰かいましたよ。忍者屋敷か! ってね。


(リン、取り合えずこいつから引き出せる情報を全て引き出すのはどうだ?)

クロが念話で話しかけてくる。引き出すというのは光魔法の洗脳と闇魔法の魅了で色々とあれするという事だ。された側には当然弊害が出る。

(敵か味方かわからない状況だから、まだこちらからは動かないよ)

(味方などいるのか?)

(冒険者ギルド関係と、おそらく今回からはローラン国の諜報関係者がいる可能性があるね)

(面倒だな!)

(だね!)


「な、何か御用はございませんか?」

おっと、一瞬で動揺を抑え込んだ。

「特に無いです。えーと、メイドさんって」

「はい、わたくしはリン様専用のメイドになります」

「専用ですか」

(三倍速いのか?)

なにそれ?


「私の留守中に誰か部屋に入ったようなんですけど、どなたが入ったかわかりますか?」

取り合えずメイドさんが入ったのは確実だろうから置いておいて聞く。

「存じ上げません」

「そうですか、わかりました。私の気のせいだったのかもしれません」

愛想の無いメイドさんです。


どちらに? ときかれたので学園内を見て回りますといいその場を離れる。



貴族も入る寮だ。色々な設備が整っているため人も多い。

「ごきげんよう」

「ごきげんよう」

「ごきげんよう」

「ごきげんよう」

「ごきげんよう」

ごきげんようの中を隠密スキルを発動し通り過ぎる。


(うふふ、クロさん、ごきげんようですって)

(うふふ、リンさん、ごきげんよう)

(うふふ、クロさん、ごきげんよう)

(うふふ、リンさん、わたくし、このいい匂いのするほうに行きたいですわ)

(うふふ、クロさん、ダメよ今日中に図書館で光魔法の指導方法を調べなくてはいけませんの)

(あらあら、リンさん、指導方法も知らないのに教師をお引き受けになったんですの?)

(てへへ、クロさん、実はそうなんですの)

(いけませんわね、リンさん、お仕置きよ!)

ぷにぷに、ぷにぷに、苛烈な肉球によるお仕置きが始まる。



クロさんの苛烈なお仕置きに耐えつつ大図書館へとたどり着く。


「大図書館?」


一見するとそれは、ただの平屋建ての建物にしか見えない。とても大が付くような建物には見えないし、むしろ小をつけたほうが良いような?


疑問に思いつつ開かれた両開きの扉を通り抜け館の中へ入る。


中は、仕切られた受付らしき所に司書というのかな? のひとが数人。

そして、奥にはおそらく地下へと続く大きな扉がひとつ。


……これはどこかで見たことのある光景。


「学生さんかな?」

司書さんのひとりに声を掛けられる。

「えっと、いえ、はい」

と、教員カードを提示する。


「これは失礼しました。新しい光魔法の先生でしたか」

司書さんがこちらを見ながら言ってくる。

「はい、光魔法についての書籍を見たいのですが」

クロさんには隠密のままフードに隠れていてもらうことにする。

「わかりました。こちらへ」

地下へと続く大きな扉へとうながされる。



ギギギッと開かれた扉の先は、無限とも思える広さの書庫。


そこへ一歩足を踏み入れると、古い本特有の匂いが体を包む。

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