第7話 話せばわかる
カズラさんは、かわいいと思うんだよね。身長はどれくらいかな。俺が175? とかだから、うーん、160チョイかな。ポニテだよね。ポニテ。顔だちは、わりと派手なんだよな。目は一重だけど、俺、けっこうそういうのも好き。切れ長な感じの。表情はちょっと暗めだけど、翳があるっつーかな。いいよね。そういうのも。左のほっぺたの、花? 四つ葉のクローバーとかかな? の、タトゥーは、ちょっとドキッとさせられて、いいと思う。あと、おっぱいはちっちゃそうだけど、それもまたよし、だしね。俺はなんか、どっちでもいけるっていうかね。大は小を兼ねるってもんじゃないと思うんだよね。それぞれの良さがあるっていうか。うん。男慣れしてなさそう? なとこもいいし。いちいちビクビクして、かわいいよね。ついつい、いじめたくなる、みたいな。いや、いじめないけど。いじっちゃいたくなる、みたいな。何があったのかなー? みたいなね。まあ、何があったにせよ、覚えてないのかもしれないけど。笑えるよな。覚えてないとか。マジか。
マジョリーはなあ。うーん。何だろ。まず、顔がよくわからん。前髪、長すぎて。だけど、髪が黒くて、きれい。これは間違いない。それから、色白。肌、きれいそう。ちょっとなー。微妙に若干怖いけどなー。アブナイ感じだよなー。話しかけれっかなぁー? いやぁー。とっかかりがなぁー。やっぱり占いとか? 占いは好きだけど。女の子と盛りあがれるし。だけど、占いじゃないとか言ってたからなー。占いとか言ったら怒るかもだよな。ああいう子は、いきなり怒らせるのはまずそう。まずはアレかな。距離かな。うん。ちょっとずつ、だよな。たぶん、話したら話したで、かわいいとこ、けっこうあったりすると思うんだよね。かわいいとこ一切ない女の子なんていないしね。かわいくないとこも、見ようによってはかわいかったりするし。あと、マジョリーもおっぱいはちっさいね。ていうか、ないかもね。いいけど、ぜんぜん。細い子も好き。
あとは、アムロっちか。アムロっちは、まだほんのちょっとしか話してないんだけど。髪、細かく編んであって、お団子にしてあるアムロっち。顔、かわいめ? 背はわりと高いんだよな。アムロっち。アムロっちなあ。アムロっちも、おっぱいはないね。だけど、下がすごいよね。むっちりだよね。たぶんだけど、アムロっち自身、あのむっちり脚、好きなんだと思うんだよね。だって、思いっきり出してるし。むしろ、誇らしげに見せつけてるし。ホットパンツだし。おしり出そうだし。いいケツしてんなぁー、ホント。舐めたい。いや、舐めないけど。いきなりは。いざとなったら知らんけど。やりかねない。俺なら。まあ、そりゃやるか。やるよな。
あ、あと、ムサシにひっついてる子は、最初、俺も女の子なのかなーと思ったけど、なんか俺のセンサー的なもの?がビビッと働いた。この子はやめとけ的な。おっぱいは一番大きいっつーか、他の女の子たちは無乳か微乳かそれに毛が生えた……って言い方もどうかと思うけど、まあとにかくそんなレベルだけど、あの子はでかい。が、どうも違うぞ的な。
そうしたら、義勇兵団レッドムーン事務所で例の「ぼく」発言があって、あれ? ぼくっ娘ですか……? みたいな空気が流れて、でも、ムサシは訊きたそうだけど訊けなくて、代わりってわけじゃないだろうけど、アムロっちがナチュラルに驚いた系の反応を示して、
「あれ? あんた、男?」
直球、ドストレートな質問をぶん投げたら、あの子は平気な顔でうなずいて、
「うん。そうだけど。どうかした?」
オウ……そうきましたか。男だけど、胸あるっていうのは考えづらいから入れてんだろうけど、それがどうかした? ときましたか。顔はねー。まあねー。かわいーっちゃーかわいーけどねー。赤系の髪のおかっぱとか、似合ってっけどねー。うん。ぱっと見じゃあちょっとわかんないレベルだけどねー。声だってねー。若干低めだけども、それくらいの低さの声の女の子がいないかっつーと普通にいるだろくらいだし。それに、べつに声を作ってるわけじゃない感じで、わざとらしさ的なものはないから、何? きもくないしさ。ナニがついてると思うとちょっといけないけど、ついてなきゃ余裕でいけるよねって感じだし。何だろ。男の娘ってやつ?
まあしかし、そのときのムサシの顔っていったらなかったよね。ガビョーン! みたいな。むしろ、バビョーン? ギャッヒョーン! みたいな? あれはウケた。それ見て、男の娘はどうすんのかなーと思ったら、ちょっと予想外だったよね。
ムサシの腕に、自分の腕を絡めてったからね。腕を組んでったよね。自分から。そんで、じっと見つめたよね。見上げたよね、ムサシの顔を。
ムサシは困っただろうね。だけど、結果的には、ムサシは振りほどかなかったよね。振りほどけなかったのかもしれないけど。
男の娘、にこっと笑ったよね。あの笑顔はかわいかったね。男の娘だけどね。
ムサシも、ぎこちなく笑い返したよね。俺的には、いいの?って思わなくもなかったけどね。まあ、ムサシがいいならいいわけだけど。あ、そういえば、そのとき名乗ってたっけ。男の娘。
「ぼく、カオル。言ってなかったよね?」
「……き、聞いてなかった……かな」
ムサシは、やっぱり笑ってみせたよね。
「い、いい名前……だね」
「でしょ?」
そんなわけで、俺たちは硬貨的なモノ? 何だっけ? 見習い章? だっけ? 見習い義勇兵の証明的なモノ? と、銀貨十枚入りの革袋をブリちゃんからもらって、外に出たわけだけども。
なんでかっていうと、ブリちゃんに、そんでこれからどーすれば、みたいなことをヒサヤだかヒノトだかが訊いたら、
「そぉーんなの自分で考えなさいよお」
とかいう無責任な答えしか返ってこなかったんで、ここにいてもしょうがなさそうってことで、出ることになったんだけどね。
そんで、俺たちはどっかに向かってる。
どっか。
どこよ?
わっかんね。なんか、ケイタがずんずん歩いてる。いかれちゃってる系のケイタくんが。そんで、俺らはついてってる。他に行くとこもないし。あてもないわけだから。
「……なんか」
ちょっと距離をとって俺の隣を歩いてるカズラさんが、表情を曇らせている。まあ、だいたい暗い顔してんだけど。そこがよかったりするんだけど。
「いいのかな。こんなので。あたしたち」
「え?」
俺は頭を掻く。
「んー。どうなんだろね。どうかな。あ。てことは、アレ? カズラさんは、よくないと思ってるってこと?」
「……そういうわけじゃ」
「いやあ。どうだろ。俺はねー。うん。あんまりよくないかも? とか思ってるかな?」
「そう……なの?」
「なんかねー。まーねー。方向性? みたいなの、欲しいかもなーとか?」
「……だよね」
「思うよねー。やっぱりさあ。まあ、俺はノーアイディアなんだけどね。今のところ」
「あたしも、そうなんだけど……」
「お、思ったんだけど……!」
突然、きのこカットくんが立ち止まって叫んだ。
俺らも足を止めて、きのこカットくんを見た。
「どうした、キノコ……?」
ケイタが顔の間に右手をかざした。
「闇の瘴気にでもあてられたか……?」
「キ、キノコって呼ぶなよ……!」
「フッ……では、名を名乗れ。それが貴様の魂に刻印された真の名だというのなら、呼んでやらんこともない……」
「な、名前は……名前……は……」
きのこカットくんは下を向いて拳を握りしめ、それなりに長い間、名前は、名前は、と繰りかえしたあげくに、ガバッと顔を上げて、
「キノコだよ……! ああ、キノコですよ! 悪いでしょうか!? 悪いですか!? 悪いか、くそッ! キノコだよ……! 案の定、キノコなんだよ……! キノコすぎるくらいのキノコだよ……!」
「言われてみれば」
と、もくもくふとっちょくんがキノコを凝視した。
「おいしそう。シルエットが」
「食べないでよ!?」
と、キノコ。
「フフ……フフフ……」
マジョリーが魔女っぽく笑いだした。
「煮てもよし……焼いてもよし……」
「だから、食べないで!?」
いいぞキノコ。
「あたしー」
アムロっちが顔をしかめた。
「きのこ嫌い。なんか、菌っぽいから?」
「嫌わないで!? きのこは菌類だし胞子で増えたりするけど、嫌わないで!? お願いだから! ねえ!?」
がんばれ、キノコ。
「それより」
ヒサヤだかヒサトだかヒノトだか……いや、背が低いほうだからヒサヤか、ヒサヤが眼鏡を押しあげながら言った。
「思ったことって? どうせなら、言っておいたほうがいいんじゃない?」
「言うさ! 言わせてもらうさ!」
鼻水出てるぞ、キノコ。
「こっ、こんな、あてどなく歩いてるんじゃなくて、ちゃんと情報収集したほうがいいんじゃないかな! 僕はそう思うけどな! 菌類的に! 誰が菌類だよ! たとえば義勇兵って戦う人みたいだからいかにも戦ってそうな人を探して訊くとか! そういう目的をちゃんと持って行動したほうがいいと思います! なんで敬語使わなきゃいけないんだよ! 菌類だから!? だから僕は菌類じゃないってば……!」
「おー」
ヒサヤじゃないほうの眼鏡が拍手した。
「キノコ、おもしろい」
「そこじゃないだろ……」
ヒサヤがツッコんだ。
「おれはキノコの意見に賛成かな。一応、目的くらいは決めたほうがいいと思う」
「目的……」
ムサシは男の娘カオルに腕をとられたままだ。
「じゃ、じゃあ、決めようか。目的。ええと、情報収集。そうだね。つまり、義勇兵に関する情報を収集するってことで」
「うん」
カオルがうなずきながら笑いかけると、ムサシも笑い返した。やや引きつってっけど。なんのかの言って? 仲いーなー。あいつら。やるのかな。そのうち。やれんのか?
「情報収集かー」
俺はそのへんを見まわした。ちょうど女の人が通りの向こうから歩いてきたもんだから、俺はふらふらっとそっちのほうに歩きだした。恰好は野暮ったいけど、たぶん二十二、三歳の、地味だけど磨けば光りそうな女の人だ。
「え、ちょっ……」
カズラさんは俺のことを呼び止めようとしたのかもしれないけど、俺はもう止まらない。だって、女の人が俺に気づいて、若干引きつつも、逃げないってことはいけるってことだよね。まあ話くらいはオッケーでしょ。これ。だったら話しかけない手はないでしょ。
「あのー、すいませーん。ちょっといいっすか? いやいや、ぜんぜん俺、あやしい者とかじゃないんで。あれ? あやしい? うっそ。まあ、ちょいあやしめかも? だけど、悪いこととかしないんで。しそうもないでしょ? 大丈夫っすよ。大丈夫、大丈夫。ほんと、ちょっと訊きたいことがあるだけなんで。何だったら、どっかでなんか、奢りますけど。あ、店とかわかんないんで、教えてもらえれば。立ち話でもいいんですけど、かえって失礼かなって。疲れません? 立ったまま話すのって? で、ええとですね……」
明日も更新する予定です。




