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大英雄が無職で何が悪い  作者: 十文字青
Soul Collector編
3/120

第2話 先立つものがいつも



「高ぇっ!」


 叫ぶ俺の目の前で、とんでもなく筋骨隆々のいかつい顔をした男が腕組みをしている。


 男はたぶん、露出狂だ。


 下には革のビキニみたいなものをはいて、上半身には革帯を巻きつけたような、それ意味あんのか的な防具をつけている。


 こんなに堂々と、恥ずかしげもなくビーチクを露出している男は露出狂に違いない。


 きもいので、俺は露出狂に詰めよらないようにしながら、

「八シルバーなんて、ボッタクリだろ。値下げしろ。一シルバーでどうだ」

 と迫る。


 露出狂は、

「ふむ」

 と鼻から息を吐いて、

「だが、これは決まっていることなのだ」


「変えろよ。それじゃあ。変革しろよ。改革しろ。オッサンが時代の先駆けになれよ」

「私はオッサンという名前ではない」

「いや、誰もあんたの名前がオッサンだなんて言ってねーよ。オッサンだからオッサンって呼んだだけだよ」

「私はオッサンではない」


「じゃあ、ニーサン」

 と、俺が呼び方を変えると、露出狂はなぜか、ほんの少し頬を赤らめた。


 そこで俺はさらに、

「兄貴」

 と呼びかけてみた。


 すると、露出狂の頬がゆるんだ。


 もう一押しか?


「なあ、兄貴」

 俺はわざと馴れ馴れしく、露出狂との距離を少しだけ狭めた。

 きもいが、まあ、耐えられなくはない。

「戦士ギルドの、何だっけ? 初心者合宿だったか。七日間の。戦士ギルドだけじゃないよな? どのギルドも一律八シルバーなんだろ。談合か? そういうの、古いんだよ。体質が。構造改革だよ、構造改革。わかる? ここは兄貴がさ、バーンと変えてかなきゃ。ドーンと値下げして、新規参入者のハードルをボーンと下げるわけ。そうすることによって新しい血が業界にどんどん入ってきて、活性化するわけだろ。競争力だよ、競争力。やっぱ切磋琢磨しなきゃだろ。風を起こそうぜ。な、兄貴?」


「いや、しかし……」


「しかしもかかしもないって。今がチャンスだよ。やるんだったら、今やらなきゃ。八シルバー? ちゃんちゃらおかしいね。一シルバー? いいよ。オッケー。こうこなくっちゃ。兄貴の鶴の一声で。兄貴ならできるって。世界を変えられるって」


「だ、だが……」


「迷うなよ。迷ってなんかいたら、変わりつづける世界に兄貴は置いてかれちまうんだぞ。いいのか、それで」


「い、いや……いや、待ってくれ、兄弟」


 露出狂はでかくて分厚い右手を前に出して、左手でこめかみやら眉間やらを揉んだ。

 誰が兄弟だよ。露出狂め。


「……だめだ、兄弟。やはり、規定料金は俺の一存で変えられるものではない。そんなことをしたら、保たれるべき秩序が……」


「革命より、秩序のほうが大事なのかよ、兄貴」

「面目というものがあるのだ、兄弟よ」

「もういい。あんたには頼まねーよ」


 俺は露出狂に背を向けて、戦士ギルドの建物から飛びだした。

「……くそ。これで暗黒騎士ギルドに聖騎士ギルド、狩人ギルド、戦士ギルドもだめか。どのギルドも、そろいもそろって銅貨一枚まけてくんねーなんてな。結託しやがって」


 俺はオルタナ南区を歩く。

 早足で歩く。

 歩きまわる。


 南区にはさっき行った戦士ギルドや、鍛冶や革職人、機織り、服飾職人、石工、大工といった職人たちが住み、腕を振るう工房がひしめく職人街、それから、義勇兵団レッドムーンの事務所も南区の中にある。


 北区には辺境軍司令本部、探せば何でも見つかりそうな大きな市場、市場の近くには宿屋が建ちならぶ花園通り、天空横丁という名の飲み屋街、あとは神官ギルドと聖騎士ギルドがその中にあるルミアリス神殿、狩人ギルドもある。


 北区と南区を分けているのが天望楼という、オルタナの中心にそびえるやたらと高い、立派な建物だ。ここにはオルタナの領主、辺境王とも呼ばれる辺境伯、ガーラン・ヴェドイーが住んでいる。

 天望楼の前は広場になっていて、市場はその近くにある。


 東の端のほうは閑静な高級住宅街といった趣で、東町と称されている。魔法使いギルドはこの東町にある。


 その反対側、西のほうは、雑然としていて汚らしい貧民街だ。西町には盗賊ギルドと暗黒騎士ギルドがある。


 城壁にぐるっと囲まれているオルタナは決して広い街じゃない。

 というか、わりと狭い。

 東町は別だが、他の地区ではみんな身を寄せあうようにして暮らしている、と言ってもそんなに大袈裟じゃないだろう。


 外にどんどん出ていって住む場所を確保することが、難しいからだ。


 なぜかというと、どうも俺たち人間はどっちかというと弱小勢力らしい。

 壁の外では、人間以外の種族やら化物みたいな生き物やらが、幅を利かせているようなのだ。

 俺たち人間は、このオルタナと、その周辺、あとは、いくつかの砦にへばりついているだけの、ヨワヨワな虫けら同然の存在らしい。


 まあ、オルタナの南に、ものすごく高くて険しい天竜山脈があって、その向こうには、人間たちの王国があるらしいのだが。


 王国の名は、アラバキア。


 オルタナはその出張所みたいな、そういう扱いになっているらしい。


 だから、人間たちにとって、天竜山脈の向こうは「本土」で、こっち側は「辺境」なのだ。

 オルタナに拠点を置く辺境軍の任務は、辺境で人間の支配圏を広げることで、義勇兵団レッドムーンの位置づけは、その別働隊か、独立愚連隊といったところらしい。


 俺は、その見習いの一人なわけだ。とりあえず、今のところは。


「ギルド、ギルド、か……」

 呟く俺の足は、自然と天空横丁のほうへと向かっていた。


 もう日が暮れはじめていて、オルタナ唯一の盛り場といってもいい天空横丁は、なかなかのにぎわいを見せている。


 俺は一軒の酒場に目をつけた。

 それは天空横丁の奥にある、あからさまに豪華で、見るからに高そうな店だった。

 金文字で、バーンズクラブ、とある。

 俺はその店に入った。


「いらっしゃいませ」

 と、黒い上着を着て、首に赤いスカーフを巻き、白いタイツみたいなズボンをはいた、上品そうな、あるいは上品ぶった口髭の男が、俺を出迎えた。

 ウェイターか何かか。

 口髭男は少し腰をかがめて、笑顔で、そっと手を差しだしてくる。

 何だ?

 よくわからないが、俺は笑みを浮かべて、口髭男の掌を、自分の手で、ぽん、と叩いた。


「……は?」

 口髭男は、なんでか知らないが、唖然としているみたいだ。


 かまわず、俺は店の中に入った。

「お、お客さま!」

 追いかけてくる口髭男を、

「いーから、いーから。気にするなって」

 と適当にあしらって、俺は店内を見まわす。


 壁には、絵だの何だの。天井には、きらびやかな飾りランプ。床には、絨毯。

 刺繍入りのソファーだのカウチだの、重厚なテーブルだのが並んでいて、着飾った女たち、男たちが、酒を飲んだり、何か食ったり、ぺちゃぺちゃ喋ったりしている。

 どこからどう見ても、高級店だ。


 俺はあいているソファーに腰を下ろして、懲りずに追ってきた口髭男に、

「とりあえず、そうだな、酒、持ってきてくれ。うまいやつ」

「いえ、で、ですから、お客さま」

「早く持ってこいよ」

「ですが」



「おいおい」



 と、酒杯を手に、ツルツルした生地の服を身につけた男が、歩みよってきた。腰に剣を吊している。体格もいい。

 義勇兵なのか。

 いや、違うな。


「この店は、いつから義勇兵ごときが立ち入れるようになったんだ」

 男は、嘲るような表情で、俺を見おろしている。嘲るような、というか、完全に嘲っている態度だ。

 むかつく。

 が、突っかかっても、こういうやつには逆効果だろう。


「今からだよ」

 俺はゆったりと脚を組んで、ソファーの背もたれに腕を回した。

「ところで、あんたは?」


 男は、すぅっと目を細めた。

「口の利き方を知らないようだな」

「まあね。よかったら、教えてくれよ」

「何だ、それは。喧嘩を売っているのか?」


「ぜんぜん」

 俺は肩をすくめてみせる。

「マジで言ってる。まさか、右も左も知らないガキに因縁つけて、袋叩きにするのがここの流儀ってわけじゃないだろ? あんたは、そんなことしそうな野蛮人には見えねーし」

「当然だ」


 そう言いながらも、男はちょっと戸惑っている様子だ。

 俺の反応が男の予想に反していて、どうしたらいいか迷っている。

 そんなところか。


「義勇兵がくるような店じゃないんだな、ここは」

 俺はもう一度、店内を見まわす。

 女たちは接客係で、男たちは客か。

 だいたいのやつは、俺と男のやりとりに聞き耳を立てるか、うかがっている。


 しかし、この店の女たちの恰好はすごい。胸元が大きく開いているだけじゃない、スカートにスリットが入っていて、脚の付け根まで見えるようになっている。それに、美人ばっかりだ。


「どうりで、いい眺めだ」

「知らずに入ったのか、貴様」

「ああ。ざっと見て、一番よさそうな店に入ってみた」

「ふざけたやつだ」

 男は、ハッ、と笑う。苦笑いだが、敵意は感じない。


「あの、アントニーさま……」

 と、口髭男が口を挟もうとする。

 アントニーと呼ばれた男は、

「今日はいい。俺の連れということにしてやれ」

 と言って口髭男を下がらせ、俺の隣に座った。


「俺はアントニー。アントニー・ジャスティンだ。辺境軍第一旅団戦士連隊に所属している。おまえたち義勇兵とは違う、正規の軍人だ」

「俺は、キサラギ。よろしくな、アントニー」

「生意気な小僧だな」

「そうでもない。ただ、礼儀ってのを知らなくてな」

「お望みどおり、教えてやってもいいぞ」

「そのうち頼むよ、アントニー」

「貴様……」


 アントニーには逡巡がある。

 腹は立つが、ブチキレるより余裕ぶってみせたほうが度量の広い男を演出できて、女にもモテるだろうとか、まあおおかたそんなところだろう。


 こいつは本当に器の大きい人間じゃない。大物ぶりたい小物だ。

 せいぜい大物ぶらせてやればいい。


 酒が運ばれてきた。

 無色透明に近いグラスに、褐色の液体がたたえられている。量は少ない。


 俺はそれをほんのちょっとだけ口にふくんでみただけで、咳きこみそうになった。

 なんとかこらえて、溶かすように少しずつ飲みくだす。


「どうした」

 アントニーが意地悪そうな目つきで言う。

「そいつは、なかなか悪くない蒸留酒だぞ。うまいだろう?」

「まあまあだな」

 俺は笑ってみせた。

 これが、うまい、だと?



 クッソまずいわ。



 というか、こんなもん、うまいとかまずいとか、それ以前の問題だろ。あと一口飲んだら、きっとぶっ倒れるぞ。


 雰囲気で頼んでみたが、酒なんて飲むもんじゃない。だいたい、飲んだことあるのか、俺?

 ないような気がする。

 思いだせないから、はっきりしたことは言えないが。


「まあ、よく味わっておけ。貴様がこの店でそんないい酒を飲めるのも、これが最後かもしれんからな」

 アントニーが笑い声をあげると、周りの客や接客女も何人か、つきあうように笑った。


 俺が平静を装って黙っていると、アントニーはテーブルにグラスを置いて、

「いいか、キサラギ。貴様は何も知らんようだから、教えてやる。義勇兵は所詮、使い捨ての駒にすぎん。義勇兵の中にも、いくらか名の知れたやつはいるがな。やつらとて、俺たち正規軍にとってのいい人柱になるのが、せいぜいといったところだ」


「でも、ここは辺境なんだろ? 本土の人間にとっちゃあ、あんたら辺境軍の連中だって、使い捨ての駒なんじゃねーのか」

「知ったような口を叩くな、義勇兵風情が。本土の腐った軟弱者どもには、勇気も、野心も、誇りもない。俺たちこそが、人間族の精鋭だ。本土の馬鹿どもは、俺たちに物資を送るため、馬車馬のごとくせっせと働いていればいいのだ。やつらはそれしかできん、惰弱な無能者どもだ! なあ、そうだろう!」

 アントニーが声をかけると、何人もが大きな声で応じた。


 よくわからないが、オルタナからも見える天竜山脈は、辺境と本土を完全に隔てているわけじゃないということか。


 まあ、当然の話ではある。

 隔てられていたら、本土から辺境に侵出することもできなかったはずだ。

 きっと何か、山を越える以外のルートがあるのだろう。


「飲め、キサラギ」

 アントニーが俺の肩をつかんだ。

「どうせ、貴様のような義勇兵は、すぐ死ぬ。今日は幸運だったな。会員の証を見せないと、この店には本来、入れない。そして、義勇兵なんぞ、この店の会員にはなれない。この店で一杯やった思い出を胸に、貴様は死ね。だがな。死ぬ前に、オークの一匹くらいは殺せよ。貴様にも、その程度の仕事はできるだろうさ。度胸はあるみたいだしな」


「オーク、ね」

 俺はグラスを持って口をつけ、酒を飲むふりをした。

「ま、やってみるよ、アントニー」


「そうか、そうか。がんばれ、義勇兵。おい、みんな!」

 アントニーはグラスを掲げた。

「明日にも死ぬだろう、この若き義勇兵に乾杯だ!」


「乾杯!」

「乾杯!」

「乾杯!」

「乾杯!」「乾杯!」

「乾杯!」「乾杯!」「乾杯!」

「乾杯!」「乾杯!」「乾杯!」「乾杯!」

「乾杯……!」


 軍人どもは酒を飲んで、女たちを抱きよせる。

 口づけをせがむ者がいる。

 ドレスを引っぱり、もともとこぼれそうな女の胸をポロリッとさせて、手をひっぱたかれる者もいる。


 俺のところにわざわざやってきて、声をかけてゆく者もいた。

「さっさと死ねよ、義勇兵」

「死んだら、ちゃんと燃やしてもらえ。そうしないと、不死の王の呪いで、ゾンビになっちまうからな」

「楽な死に方を教えてやろう、義勇兵。なんでも、死ぬときは笑ってるといいんだとよ。死んだやつの話は聞いたことがねえから、本当かどうかは知らねえがな」

「くたばったら戻ってこいよ、義勇兵。一杯奢ってやる。無理か」

「おまえらは、死ぬぐらいしか能がねえからな、義勇兵」

「死ぬのは能がなくたってできるから、能なしってことだな、義勇兵」

「明日死ね」

「今日死ね」

「今、ここで死んだっていいぞ。義勇兵がくたばったって、誰も気にしねえからな」

「乾杯!」

「義勇兵の無様で無価値な死に!」

「乾杯だ!」

「乾杯!」



 ゲス野郎どもめ。



 俺は適当に相槌を打って、アントニーもそばにいなくなったので、こそっと出口に向かった。


 そうしたら、口髭男がやってきて、慇懃無礼を絵に描いたような態度で、

「お会計をお願いします、義勇兵どの」

「……いくらだよ」



「お席代とあわせて、五シルバー頂戴いたします」



「五……」


 ブリちゃんにもらった革袋には、銀貨九枚、九シルバーと、銅貨八十枚、八十カパー、入っている。二十カパーは、市場で飯を食ったり何だりで、使った。


 五シルバー、だって……?


 オルタナには、ギルドというものがたくさんある。

 ようは、同業者組合みたいなもので、ギルド加入者以外は、鍛冶でも、革職人でも、大工でも、異本的にはその仕事ができない。

 物を商う場合も、ちょっとした露店や屋台くらいなら問題ないみたいだが、新品の武具だのパンだの嗜好品だのになると、ギルドがあるらしい。

 ギルドに入らないで仕事をすると、ギルドの連中がいちゃもんをつけてきたり、実力行使で潰しにきたりするのだという。


 で、そのギルドだが、戦士だの魔法使いだのといった「職業」のギルドも、存在する。

 戦士ギルドなら、剣やら何やらを扱う技術、魔法使いギルドなら、魔法を使う技術を、加入者に教えるわけだ。

 そして、門外不出ということにして、技術を独占している。


 というわけで、義勇兵は何らかのギルドに加入して、戦うすべを身につけるのが常道、というか、そうしないと物の役に立たない、とされている。


 実際、イチカは神官ギルド、モモヒナは魔法使いギルドに入った。というか、あいつらが入るギルドは、俺が独断で決めた。


 俺自身も、どこかのギルドに所属するつもりではいた。

 すべてのギルドが、加入希望者に八シルバーも要求するボッタクリ体質じゃなかったら、もうとっくに入っていただろう。


 だって、高すぎるだろ。八シルバーなんて。十シルバーもらって、そのうち八シルバーがギルド加入代で飛ぶなんて、ふざけすぎた話だろ。


 ギルドに入るのに八シルバーはいかにも高いが、席について、酒を一杯注文しただけで、五シルバー?


「ちょっと待て、おまえ……」

 俺は抗議しようとしたが、口髭男の後ろに、めちゃくちゃガタイのいい、抜き身の短剣を携えた男が二人もいることに気づいた。

 服装こそ、口髭男と大差ない気どったものだが、明らかにやつらは役目が違う。

 ウェイターなんかじゃない。用心棒のたぐいだ。


 目が、やばい。


 冷たくて、濁っていて、十人か二十人は殺してきました、みたいな、凶悪きわまりない、鈍い輝きを宿している。


 俺はため息をついた。革袋から銀貨を五枚出して床に放り、大急ぎで、振り返らずに店をあとにする。クソ。


 クソッ。

 クッソッ。

 クソッタレ。


 屈辱だ。

 何がバーンズクラブだ。

 会員制だ。

 何が正規軍だ。

 軍人だ。

 舐めやがって。あいつら、俺をコケにしやがって。

 絶対、見返してやる。見下してやる。

 今に見てろよ。ものっすげー義勇兵になってやるからな。義勇兵の域を軽く、遥かに超越した義勇兵に。あとあとまでの語り種になるような、英雄になってやる。大英雄になってやる。あいつらを鼻で笑ってやる。ついでに、めちゃくちゃ金を稼いで、あの店を買いとってやる。あの口髭男も、用心棒も、女たちも、顎で使ってやる。見てろよ、クソどもめ。


 俺は、天空横丁を抜けたところで立ち止まった。


 ポケットから、革袋をとりだす。

 中を確かめる気には、なれなかった。


「……でも、ギルド入るのに金足りねーし。どうしよ」


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