↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大英雄が無職で何が悪い  作者: 十文字青
Soul Collector編
22/120

第21話 彼女の献身


 ミリリュが逃げまわる。というか、命からがら、なんとかかんとか逃げ惑っている。


 イチカはショートスタッフを手にキマイラに近づこうとするが、腰が引けていて、てんで無理だ。

 まあ、ビビリちゃんには期待してないし、変に頑張って危険を冒されても困る。

 神官だし、な。


 つーわけで、モモヒナだ。

 どうもカンフーか何かのマスターかどうかは知らないが少なくともそれなりの使い手で、これはたぶん生まれつきだろう、やたらと肝が据わっていて、行けと言われればどんな相手にも喜んで突っこんでゆく。


 そんな魔法使い。


 なんで魔法使い?

 とか訊かないように。


 魔法使いになれとモモヒナに命じたのは俺だが、そのときはまさかあいつがカンフーマスターだとは想像だにしなかった。いや嘘。知ってた。マジでマジで。知っていて、魔法使いにした。


 だって、そうとしか思えねーだろ。普通に考えて。この結果からすると。見ろよ。


「デルム・ヘル・エン……っ!」


 モモヒナが杖の先でエレメンタル文字を描きながらキマイラに追いすがる。ぱっと見、キマイラに追いつくなんて無理っぽいが、ミリリュがジグザグに逃げていて、それを追うキマイラは機敏で身軽だといっても身体がでかい。けっこうロスがある。それでキマイラに食らいついたモモヒナが、ジャンプ一番、魔法を発動させる。


「イグ・アルヴぅ……!」


 杖の先からモモヒナの頭くらいの大きさの火球が放たれて、キマイラの股間に命中した。


「ギャガァァッ……!?」


 どれくらいのダメージかは知らないが、キマイラもこれは熱かったようで、跳びあがって振り向いた。

 でも、そのときにはもう、モモヒナは木の陰に隠れている。

「にししー」


 キョロキョロしているキマイラに、すかさずミリリュが斬りかかった。

「やあッ! やあッ! やあァ……ッ!」


 まあ、後肢をちょちょっと斬られただけなので、キマイラ的には痛くも痒くもなさそうだが、頭にはきたみたいだ。また振り向いて、今度はミリリュを丸かじりにしようとしたら、モモヒナがひょいっと出てきた。


「デルム・ヘル・エン・バルク・ゼル・アルヴぅ……っ!」


 ボオォンッ……!


 と、キマイラの股間あたりで爆発が起こった。


「フゴオオオォォ……ッ!?」


 これはキマイラもたまらなかったようで、飛んだり跳ねたりしながらモモヒナから距離をとった。

 いいぞ、モモヒナ。つーか、股間集中攻撃だな。キマイラはオスなのか。そのへんはよくわかんねーけど、そうだったらアレはきっついだろう。容赦ねーな、あいつ。いいけど。キマイラだし。


 チャンスだな。


 キマイラはちょろちょろしてうるさいミリリュと、執拗に股間を狙ってくるモモヒナに気をとられている。俺のことなんか眼中に入っていない。思ったとおりの展開ってやつだ。


 俺はこっそりキマイラの後ろをとろうとする。


 その間にも、ミリリュがキマイラを牽制して、モモヒナは火炎弾だの爆発だのの魔法でキマイラの股間を攻撃している。


 ただ、ミリリュとモモヒナがキマイラの前後に位置しているから、気づかれずに背後をとるのは難しいか。

 だったら、側面でいい。横からだ。


 あと七メートルか、八メートルか。


 そこまで行ったところで、俺はまたあの声を聞いた。山羊だ。

 山羊頭が何かごにゃごにゃ言っている。

「……魔法か!」


 ライオン頭は今、ミリリュのほうを向いている。

 ところが、山羊頭は違う。

 山羊の目はモモヒナのほうを見ている。


「おい、モモヒナ、下がれ……!」


「ひゃいっ!?」

 モモヒナは今まさに魔法をぶっ放しかけていたのだが、中断して跳びさがろうとした。


 そこにズガゴォーンと雷が落ちた。


「……あきゃっ!」

 直撃……、

 じゃあなかったらしい。

 それでもモモヒナは、三メートルくらいぶっ飛んでゴロゴロ転がった。


「イチカ!」

 俺が叫ぶと、

「はい……!」

 と、妙にいい返事をしてイチカがモモヒナのほうへと走ってゆく。


 状況を把握したのか、ミリリュが、

「こっちです……! キマイラさん……!」

 とかなんとか言いながらキマイラに迫る。そうだ。注意を引け。

 キマイラは前肢の爪でミリリュを引き裂こうとしたが、ミリリュは横っ跳びしてなんとかよけた。

 しかし同時に、尻尾の大蛇がモモヒナを……!


「ふにょ……っ!」

 モモヒナは這って逃げようとしているが、だめだ、間に合わない。


 俺がここからソウルコレクターを振ったって、届かねーし。


 どうする。

 ……どうしようもねーのか。


「えい……!」


 って、おまっ……、


 イチカ……!


 ショートスタッフを振りあげて、イチカがモモヒナの前に飛びだした。


「やめ……!」

 俺の声が届く前に、大蛇がショートスタッフごとイチカを薙ぎ払った。


 イチカが背中から大木に叩きつけられる。

「っ……」


 地面に転げ落ちたイチカはぴくりともしない。


 ……おまえ。

 さっき言ってただろ。

『わたしが、死なせないっ!』

 って。

 半べそかいて、

『わたし、これでも、神官だもん……!』

 って。

 死なせない、とか。

 その前におまえがくたばったら意味ねーだろうが。


「イチカァァァァァ……ッ!」

感想、評価、レビューなどいただけますと、励みになります。


よければ励ましてください。( ´▽`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。