EP2 ファーストコンタクト そして託されたネガイは目覚めた
ーーー”遺跡天体イルフⅡ”突入から20眠目。ザライレムたちは目覚めない”エルイム”を見守りながら休息をとっていた。残り食糧も少なくなり、贅沢ができるのはこの時が最後のチャンスだった。ザライレムがコオネルという青くて酸味のあるヨツリ族ではポピュラーな暖かい飲み物を飲んでいると、エルイムを包む毛布がもぞりと動くのを目にした。
「……!」
エルイムの目覚めを感じ取ったザライレムがほかの2人を振り返るが、長い疲労感からか両方とも眠りについてしまっていた。仕方ない、と心の中で呟いてザライレムはひとりでエルイムに向き合うことにした。毛布をおしのけてエルイムは瞼をあける。その目には緑色の眼が収められている。
「ーーーおはよう、エルイムくん。きぶんはどう?」
エルイムは何も知らない幼子のように、開ききった目でただザライレムを凝視するだけだった。それもそのはず、ザライレムが得た情報によるとエルイムは何の知識もない状態で生まれ落ちると確定していたからだ。
「……答えられない、か。根気強く言葉を教えるしかないか」
ザライレムはそう覚悟してタブレットを取り出し、ファイルの奥深くに挟まっていた言語訓練用のアプリを立ち上げてエルイムの隣に座る。ヨツリ族の文字と発音を何度も何度も、根気強く続ける。ザライレムが眠気に襲われ始めるとオーギュストが交代し、そのつぎはレイヴィスが交代した。休息を取り終えると3人はエルイムを連れて、歩きでの探査を継続する。
遺跡天体イルフⅡに突入してから23眠目。ーーーエルイムが言葉をしゃべり始めた。
「ざら、いれむ。……よろ、しく」
その言葉を聞いて最初に歓喜したのはザライレムだった。4つの手全てを満開にして破顔する。ほかふたりもそれぞれ手のひらを広げることで喜びを表す。
「そう、そう! 私がザライレム! ……エルイムくん、喋れるようになったじゃない!」
「俺がオーギュストだ、エルイム。よろしくな!」
「僕はレイヴィス。喋れるようになるのがはやいなあ……」
みんなでひとしきり喜び合った後、エルイムが自らを指してひとつの疑問を発する。
「エルイムは、なに?」
3人は答えに窮した。代わりにザライレムが彼女たちの今までの経緯と現状を全て話してエルイムが遺跡の培養槽から産まれ出た存在だと説明した。
「……つまり、エルイムのことは、なにも、わから、ないんだ」
「うん、そうなるね。一応、君のデータに関しては記録してあるからもっと文字読めるようになったら読ませてあげる」
「……じゅうぶ、ん、よめる。かして」
エルイムがタブレットを受け取り、メモアプリに記載された彼自身のデータを読む。しばらくしてエルイムが文章の中の1ワードに指を伸ばす。
「この、”細胞群体”って、なに? ぼくは、”細胞群体”って、いうみたい、だけど?」
「それは流石に私も詳しいわけじゃないから分からない。なにか別の機器で君を診れたらいいんだけど」
エルイムの追及はそこで終わり、遺跡の探査が再開する。エルイムが時折何かに指さしては何か言葉を発する。ヨツリ族の探査メンバーたちはその様子を微笑ましく思い、メンバーがもう一人増えたような嬉しさに胸が満ちた。そして、あと7眠目で食料が尽きてエルイムと別れなければいけないという現実に切なくもなった。そんなヨツリ族たちの気持ちを知らないかのようにエルイムはヨツリ族たちの持つ道具を目を輝かせて観察する。
25眠目。突然エルイムがヨツリ族たちの故障したセンサーデバイスを手に取ると故障箇所を分解し、ほかの壊れた道具から部品を拝借して組み替えてしまう。
「オーギュスト、どうぞ」
「なんだ? 壊れたモノを渡されてもなあ……うおっ、動いてる?!」
「え……。エルイムくん、どうやって直したの?!」
ザライレムが信じられなさそうな目でエルイムを振り返る。
「どうやって? みて、さわって、なんとなくおぼえた」
「はっはっは!!! これは天才というものです!」
突然レイヴィスが笑い出し、エルイムの頭に手を添える。
「エルイムは好奇心旺盛ですね。言葉はすぐに覚えたし、我々の使う機器の仕組みもすっかり覚えてしまった。……探求は楽しいですか?」
「うん? ……うん!」
エルイムが満開の笑顔になり、レイヴィスが微笑む。
27眠目。代り映えしない景色にヨツリ族たちの顔から再び疲労が見え隠れするようになった頃、突然エルイムがとある通路の先を指し示す。
「……よくわからないけど、なにかある。りゆうは、せつめいできない……」
「いいの、いいの。折角だし、そっちに進んでいこうか」
計画を変更して一行はエルイムが選んだ道を進む。すると次第にヨツリ族たちもなにか誘われているような、こっちの方に進みたいと思わせるような仕掛けを仕掛けられているような気分に陥った。
「心理に働きかけるような道のつくり……罠では?」
「それでも進むしかあるまい」
オーギュストとレイヴィスが議論しているさなかにエルイムがある建物の入り口の瓦礫をどかす。その建物は大掛かりで儀式的な雰囲気を思わせる。真っすぐ進んだところに下に続く階段があった。長い下り階段を下り、ドアを開ける。
そこには、剣があった。
正確に言うと、剣の形状をしている機械のようなものが地面の人工のくぼみに刺さって立っている。
まずオーギュストが抜こうとするが固くて抜けない。そこでエルイムが取っ手を握る。すると、それまで沈黙していた部屋が”起動”して空間を照らし、剣の機械に電気が点く。
『……エイアス宇宙軍DNA照合……NO、軍人ニ適合ナシ……特別指令コード、確認……特別指令DNA”エルイム”ヲ認証、”ネガイノツルギ”ノ使用権ヲ”エルイム”ニ移譲』
機械音声が旧文明言語で流れ、剣の機械の固定が外れてエルイムの手元に収まる。オーギュストはこの現象に困惑してザライレムに問いかける。
「おい、今のなんだ? 色々音声が流れたが、ザライレムは古代言語分かるんだろう?」
「……私でもよくわからない。でも少なくとも、あの剣は古代文明の宇宙軍のもので、エルイムは特別にあれを使える権限があるみたい」
「……そう、なんです、ね。いまのおと、ぼくには、わから、なかった」
エルイムが首を振りながら手元の剣の機械を見る。途端に、エルイムが何かに気づいたように顔を上げる。
「……けんが、おしえて、くれる……」
ザライレムが「どうした?」と声をかけても気にもくれず、エルイムは壁の前に立つ。壁に丁度空いていた穴に剣の機械を挿し込み、180度に回す。すると壁が左右に二分して分かれる。
ーーー開け放たれた扉の先には、宇宙船があった。
「な、宇宙船……?!」
「……まじか」
「みんな、船があったよ、亡くなったみんな…!」
ヨツリ族の3人がそれぞれ歓喜する。その歓喜の横をすり抜けて、エルイムはまるで最初から分かっていたかのように船のハッチの位置に移動し、剣の機械をかざす。ハッチが開き、船内の通路が灯る。刹那、ヨツリ族の3人が船内に駆け込む。ヘルメット内に映し出された表示を見たザライレムがヘルメットを脱いで叫ぶ。
「ーーー呼吸できる! おいふたりとも、ヘルメット脱いでいいぞ!」
「かーーー!重苦しいヘルメット卒業だ!」
「……やった、ここまで生きてきて良かった……!」
ヨツリ族たちがひとしきり抱き合って喜んだ後、ザライレムが拳を高く上げて叫ぶ。
「食料があるか探せよ二人とも!」
「うっせえな興奮せずにいられるかザライレム!」
「まだ3眠ほど食料あるし、技術のほうを確かめさせてもらいます!」
興奮するヨツリ族たちを横目に、エルイムが剣の機械に問いかける。
「……なぜ、ぼくに、おしえてくれる」
剣の機械は沈黙したままだ。ただエルイムに情報を流し込むだけだ。剣に人格はない。
「……おまえを、つくったのは、だれだ」
剣は沈黙したままだ。定められた主に定められた情報を流し込むだけだ。剣に人格はない。
「ーーーおしえては、くれないのか」
剣は黙ったままだ。エルイムは聞きたい情報を諦め、バラバラになったヨツリ族たちの背中を追う。
結局、ヨツリ族の3人は3眠ほどかけて船内を観察しまわった。剣の機械を介してエルイムに与えられた権限が無ければ入れない部屋が多くあり、その度にエルイムはヨツリ族の誰かに呼ばれた。
「みんな見て! 食料があった……!」
ザライレムが数多の食料の詰まった食糧庫と広大な水耕栽培室を発見したときはヨツリ族の3人が諸手をあげて抱き合った。喜び合い、泣きあった。そうして死の運命から解き放たれたことを分かち合った。
「この船、動くぞ! データを確認したらいつでも発てるって!」
オーギュストが駆動装置を確認してそう報告したとき、エルイムもなんだか嬉しくなってヨツリ族のみんなとハイタッチした。
「船のあらゆる箇所を検証したところ、ナノマシンが低起動状態でずっとメンテナンスしてましたよ。ーーーきっとこれで、この船を何千万陽周もの間持たせていたでしょうね」
レイヴィスがサンプルを示してそう言ったとき、エルイムはナノマシンにおもわず感謝した。その頭をザライレムが撫でていた。
「ーーーエルイムくん、これから君を調べる。この宇宙船に本格的な医療設備があって良かったよ」
船内を見回り終えたとき、ザライレムがそう告げた。
「うん、おねがい。ぼくは、ぼくのことをしりたい」
「5分で終わるからね、そこに立ってて」
ザライレムがそう指示してエルイムが医療室の赤い点の上に立つと、ザライレムが何やら機器を操作する。床からエルイムを円柱状に取り囲むようにして壁が迫り上がる。円柱状の壁から様々な機器が飛び出し、体内透視や細胞片採取、成分解析など様々な検査を一度に行う。たったの5分で検査は終わって円柱状の壁が床に戻り、ザライレムが手招きする。
「ーーー”細胞群体”がどういうことか分かった」
ザライレムがディスプレイをエルイムに見せる。ーーーそこにあったのは、脳や心臓などあらゆる全ての器官を有しない、ただ細胞のみで成り立っている身体のデータだった。
「……え、と、つまり、どういうこと……?」
「お前は人の形を模しているが、ゲームで言えば”コアなしスライム”と同類ってことだ」
「こらオーギュスト、エルイムはまだゲームに触れたことないのよ」
分かりやすく説明したはずなのにザライレムに突っ込まれるオーギュスト。ふたりが言い合うのをよそにレイヴィスがエルイムの横に立つ。
「僕たちヨツリ族には様々な働きをする器官がある。それは学習アプリで知っているね」
「はい」
「その僕らと比べて君には器官が存在しない。代わりにそれぞれの細胞が思考や消化など全ての働きをするんだよ、君の場合」
そう言われて初めてエルイムは自分とザライレムたちとの決定的な違いを自覚する。ヨツリ族とそうでない自分、というだけではなかったのだ。
「エルイム、なんで人の形をしてるんだ? スライムみてえな身体してるのによ」
「……?」
オーギュストに言われて首を傾げるエルイム。エルイムにとっては培養槽から生まれた時から人の形をしていたのだからそれが普通だと思っていた。ーーーと同時にある思いも芽生える。もし他の姿にも成れるなら、何に成ろうか。そう思って、ザライレムの手元にもつ水筒を見る。
(ーーーみずはとめどなく、じゆうだ。みずになれるならーーー)
そう念じていると、身体が形を失って床へと溶けてゆく。緑の髪やサーモンピンクの肌が透けて水色に変わる。ピチャ、と水音を立ててエルイムは液状のスライムになった。”視界”を動かすと、ザライレムたちが驚いているのが見えた。
「……変身能力があるって知ってたけど、ここまで変われるのね……」
「おいおい、本当にスライムになりやがった」
「興味深い。旧文明の細胞工学は進んでいたようですね」
「……もとに戻れる? エルイムくん」
ザライレムが震える指でスライムのエルイムを突つく。その願いに応じたエルイムは液状化した身体をもう一度纏め上げて、人の形に戻る。
「良かった……取り返しがつかなかったらどうしようと思ったわ」
「……ぼく、なんにでも、かわれる、みたい」
「分かったけど、勝手に姿変えないでね。こっちがエルイムくんのこと分からなくなるかもだし、取り返しのつかないことになりたくないから……」
「……うん」
ザライレムが抱き着いてきて、彼女の頬に流れる涙がエルイムの肩に落ちる。エルイムはなんだか居心地が悪くなってオーギュストやレイヴィスの方に視線を向ける。
「なあザライレム。そろそろブリッジに向かおうぜ。まだなんだろ、この船のシステムの解明は」
「……そうだったね。一応権限の問題もあるから、エルイムも連れていくか。いい、エルイム?」
エルイムはこくりと頷き、ブリッジに向かうザライレムのあとについていく。
「……なんで、何度も試しても航行データが変更できないんだ!」
オーギュストが、ダン、とコンソールを叩く。何度コンピューターをいじっても、旧文明の人が宇宙船に元々入力していた航行データから切り替えることができないでいた。
「そもそも、元から入っていたデータってどこ目指してるんでしょうかねえ」
オーギュストに変わってコンソールを操作しながらレイヴィスが首を傾げる。このままでは、ヨツリ族の3人は彼らの母星である”風の星”に進路を向けることができない。
「……だが我々にはこの宇宙船しかない。そこに行くしかないなら、行くべきだろう。ーーー旧文明が行けと言っているんだ。旧文明探査隊として、行かない手はない」
ザライレムの決断にオーギュストとレイヴィスは黙りこくり、ゆっくりと縦に頷く。
「エルイムくん、話がある。私の部屋に来てほしい」
宇宙船の内部、ザライレムが我が物とした部屋にエルイムが入る。ザライレムは神妙な、真剣な眼差しでエルイムを迎える。
「……エルイムくん。単刀直入に言おう。君は旧文明に”何か”を託されている」
「え」とエルイムが頓狂に驚く。
「その”何か”が何なのか私には分からない。だけど、その”何か”のために旧文明はエルイムくんを作り、エルイムくんにしか使えない剣の機械を置き、船が発進しやすい外側ではなくわざわざ遺跡の真ん中にエルイムくんの権限が無ければ動かせない宇宙船を隠した。そう、全ては作為的に用意されている」
ザライレムの目がエルイムを突き刺す。
「エルイムくん、君は私たちが思った以上に大きな運命を背負っているかもしれない。今はまだ実感がわかないかもしれないが、それだけは分かってほしい」
ザライレムの目が揺れ、僅かに迷いを見せる。
「……それさえ分かれば、進むも引くも、運命に乗るか降りるかも、きっと選べるだろうから」
エルイムはザライレムの言葉を飲み込もうとするが、ハテナに支配された思考に首を傾げる。
「うんめい……。わからない。だって”きゅうぶんめい”はなにもいってこない」
「……旧文明は何も言ってこない、か。我々探査隊も、今まで旧文明が痕跡を残さないから散々苦労したよ。そこまでして隠したいものがあるのかねえ……」
宙に泳ぐザライレムの眼を見てエルイムは彼女も答えを持っているわけじゃないと思い直し、無言になる。
「……すまない。重い話はここまでだ。エルイムくん、出発する前に来てほしい場所がある」
一応の見張りにレイヴィスを宇宙船に残し、ザライレムとオーギュストはエルイムを連れて何眠分かかけて遺跡天体の地表に出る。人工の景色を抜け、洞穴から地表へ出たとき、エルイムは天を仰いだ。
「ーーーあれ、なに……?」
「どれ?」
エルイムが天高く指をさす。その先にあったものは、いや、その指の指し示す遥かな果てにあるのは”壁”だ。あらゆる星よりも宇宙の遥かな遠くにあり、宇宙の一方面を塞ぐようにして広がり、左右上下どこまで見渡しても果てがない”壁”。視界を埋め尽くし、あまりにも巨大すぎる”壁”。少なくともヨツリ族にとっては、空を見上げれば視界のすべてが”壁”で埋まった経験は当然にあるものだ。
「……あ、”壁”か。あれはずっと宇宙の遠い果てにあるものなのよ」
「……? ザライレム、どういうこと?」
「あ、説明になってなかったか。でもヨツリ族も”壁”について分かってることは殆どないのよ。なんせ何故か目に見えるのに距離を測ることさえできてないんだから。……唯一分かっているのは少なくともヨツリ族が大地の上で言葉を得た瞬間からそこにあるということ。殆どのヨツリ族は”壁”を空の上にあって当然だと思ってるけど、科学者の私たちからしたら冗談じゃないわ」
そう言うザライレムの眼は遥か遠くの”壁”をいつか解明してやるというような決意に満ちていた。だがエルイムは”壁”に見下されるような居心地の悪さを感じていた。
「さあエルイム、着いたよ」
いま彼らの眼前にあるのは、殆どが大破して未だに黒煙を吹き上げる、ヨツリ族の探査隊が乗っていた宇宙船。ザライレム達が探査に出てから崩壊が進み、今では宇宙船としての原型を留めていない。ザライレムとオーギュストは四つの手を合わせて死者を弔う。
「……エルイムくん。私たちは宇宙巨獣に追いかけられてこの天体に緊急着陸した。その時には船をだいぶ壊されてたから、着陸の時にエンジンが爆発したり制御が効かなくて船の中身がだいぶ揺すられたりした。……探査隊の仲間の殆どはここに来るときに亡くなったんだ」
淡々と語るザライレムやそれを後方で聞いていたオーギュストの目には涙が溜まっていた。死の概念をまだよく知らないエルイムであったが、その様子に少し心が動いたのかザライレムのやり方を真似して黙祷する。
黙祷のあとは宇宙船から遺体の回収を行なった。腐敗の進んだ遺体を船から引きずり出し、指や歯などの残っている身体のパーツを切り取る。
「ヨツリ族の文化で、亡くなった人の小さい骨や歯はそのまま取っておくんだ。肉の部分は焼いたりそぎ落としたりして取り除く」
ザライレムが解説しながらナイフで腐敗臭のする指の肉をそぎ落とし、白骨をラベルの貼られた小さな瓶に封じる。遺骨を納めた瓶が数多に並べられる。処理し終え、残った遺体たちは大破した宇宙船の前で一体ずつそれぞれの穴に納められる。最後に穴を埋めてその上に目印として宇宙船の破片を突き刺させる。
「……これを言うのは二回目だが、こんどこそお別れだ。あなた方の魂が風と共に在りますように」
ザライレムとオーギュストが同じ言葉を唱えて黙祷し、エルイムもそれに続く。
旧文明が遺した宇宙船に戻り小部屋に亡くなったヨツリ族の遺骨を保管すると、宇宙船発射まで秒読みの段階に入った。最高効率の核融合推進灯火装置が火を噴き、遺跡天体の地の底から天へ発射するための道が開く。
「デルタブイの計算ヨシ、武装ヨシ、食料ヨシ! 発射前最終点呼をとる! オーギュスト、いるか!」
「おう!」
「レイヴィスはいるか!」
「はい!」
「エルイムくん! 君もいるな!」
「うん!」
「全員確認! ーーーこれより射出、開始!」
宇宙船がマスドライバーの上を滑り、上へ向かって推進が加速する。地表に出たと同時にマスドライバーを離れて風を切り、あっという間に真っ黒な星々の世界へとでる。
「……ここが宇宙……」
エルイムがディスプレイ越しの景色に目を輝かせる一方、ヨツリ族の三人は集まってセンサーに注目して険しい顔をする。
「ーーーやっぱり現れたか、宇宙巨獣サーペントⅠ型!」




