…神を視ている
ハロルド刑事は教会で困惑していた。
周りにではなく、先ほどの撃ち合いで、目が見えなくなってしまった自分自身にだ。
先ほど、教会の孤児、ルナ・ポートマンから父親に殺されると通報を受け、ルナが立てこもってる教会に出向いた。
中に入るとルナと慌てた様子の子供達がいたので、ルナ以外の子供達を避難させマフィア…レオナ・ポートマンを待ち伏せたが、部下を引き連れたレオナと対峙した瞬間何が起きた?数発の銃声がなったあと両目に刃物で切られたような激痛を感じ、すぐに銃声がやんだ…。
レオナ・ポートマン。あいつに娘がいるのは驚いたが、なぜ今になって殺す?
その時こちらに向かってくる足音が聞こえた。
「レオナか?」
「………」
返答は無い。
「なぜ…ルナを狙うんだ?」
「何度も言っているだろ……」
「…………ッ!!」
胸を刺された痛みを覚え、ハロルドは絶命した。
そしてその男…レオナは満面の笑みを浮かべ
「神の…導きだ。」
打撃音とともに橘がふっ飛ばされる音と、周りの利用者達の悲鳴が聞こえた。
「ふざけんなよ…お前。」
今のは間宮が橘を殴った音だ。
今までに無い位怒りに満ちた形相で、橘に掴みかかり、睨んでいる。
「自分が何をやったのか、分かっているのか…!」
「…ゲームか?」
もう一発の打撃音がなんかの青春ドラマみたいに響きわたる。
「殺人に手を貸したんだぞ?橘。お前がルナの父親に手を貸したせいで、あの子は何度も死んだんだ!何故救わなかった!お前のせいで…ルナは!」
もう一度掴みかかろうと間宮は橘の元に詰め寄る。
「ルナルナってうるさいんだよ!」
しかし橘はその手を払い除け、さっき殴られたのが嘘のように、切れた顔をしている。
「何がルナだ!ゲームの中のキャラクターなんかに感情むき出しにしやがって。お前…気持ち悪いよ。」
その言葉を聞いて、一線を越えられた人間のように目が見開く。これ以上話したら、取り返しのつかないようだった。
「聞こえなかったのか。お前は…何度も死んで体が汚れきってる2次元の子供なんぞに恋する、気持ち悪い変態野郎だって言ってんだよ!!」
「お前…」
「何が良いんだあんな女。子供なんて他にいくらでもいるんだ。それなら、ゲームの中くらい人を殺したって良いだろ!!」
「おぉまえぇぇえ!!」
全てが吹っ切れて、橘に殺意のこもった拳を振り上げようとしたが、それは突然のパァンッ!という銃声にかき消された。
「「!?」」
そこには成宮先輩が、持久走の審判のような格好で、銃を上に掲げていた。
現実で銃をみるのは半年ぶりだった。
戦争で一番大変だったのは、民間の訓練でも、いつ死ぬかという恐怖でもない。やっぱり、友達や家族が死んでしまうことだ。成宮志乃は戦争が始まって、日本がまだ劣勢状態の時に、空襲で妹を失った。
死んでもやり直せるルナをみて、私は…嫉妬してたのかもしれない。
「そこまでよ。もう、このゲームは私達の手に負える代物じゃない。」
シリアスな顔をした成宮の手にはどこの国の軍にも採用されてない古いリボルバーだ。その隣には発売したばかりにのPlayStation4の箱が置いてある。
「どういうことですか?」
橘が不思議そうに問いかける。しかし、その声を無視し、隣に置いてあるゲーム機の箱を机に置き、本体を開封する。
「なんですかその銃は…つかそのゲーム機」
「えぇ。さっき買ってきた。これでしばらく節約生活確定ね。」
愚痴を漏らしながら本体を取り出し、何を思ったか銃で本体を狙い始めた。
「何してるんですか!」
「このゲーム機を分解する。分解方法が書いてないから、これで壊す。」
「ふざけないでください。国から発売されてる機械は分解および中をみることは禁止と法律で禁止されてます!それも1年や2年ですまない重罪ですよ!」
橘の静止に対して成宮は疑問を問いかける
「なんで…なんで分解しちゃいけないの?私達、戦時中は銃の分解だってしたことあるのに。」
確かに…俺達は昔にそういった訓練を受けた事がある。しかし、それも戦争が始まって2年で終わってしまった。もっと良い兵器が開発されてしまったから。
「それは……」
橘の答えを待たずにゲームに向けて発砲する。あまり、気にしたことなかったが、二人はゲー厶機の中を見てみる。
「うっ……」
その中身は3人が…いや、この世で誰も見たことのない、歪な見た目をしていた。
「なんだ…この緑色の…板?」
「線で繋がれているのか?どうなってやがる…」
その中身を見て、成宮は動揺をごまかすように笑った
まるで何かを見つけたように。
「これで、私の仮説が当たりそうね。」
教会の倉庫。ここで、ルナと生き残った警官隊10人が、籠城している。そのうち3人は重傷を負ってしまった。全てはレオナとかいう化物のせいだ。
「君は…逃げなくて良かったのかい?」
「えぇ。あの人の目的は私ですから。」
封鎖した扉の前にもたれかかっている警官がルナに話しかける。このピリついた状況を少しでも和らげるためだろう。
そういえば、さっきからマミヤの声が聞こえなくなってしまった。
久しぶりに聞いた声はとてもいい声だった。
「それにしても、神話に書いてあった話が、まさか本当だったとはな。にわかには信じがたいが、さっきの神父の書斎の記録を見てあれが当てずっぽうだったとは考えにくい。」
「お父さんは…何故、私を殺そうとするんでしょうか?」
「分からない。そもそもレオナポートマンは全体を通して、何も分からない奴だ。私達は何度もそいつを逮捕しようとしたが彼の経歴、家族、マフィアの構成など何も出なかった。しかも、彼について分からないのはその容姿だ。」
「容姿?」
「彼は老けない。歳をとってないんだ。民衆の目の前に度々現れるが、印象が全く変わらない。」
歳を取らない?若く見える人ならごまんといるが、そんなの存在するのか?
「だから、かれはアンデット(不死者)マフィアなんて呼ばれてる。」
「ここにいる人は、生き残れると思いますか?」
「……分からない。でも、血も涙もないやつだ。彼の容姿を噂出来るのは、レオナと戦ったことのない者だけ……!!」
「失礼だな。血も涙もあるさ。」
突然扉の向こうから剣が、出てきてルナと話していた警官の頭を貫く。その直後、扉から何本もの線が浮かびが上がり扉が崩れ去る。
「ただし、血の涙だがな。」
「……っ!」
扉の向こうから出てきたのはレオナポートマンその人だった。
レオナにとって5年、ルナにとって約1時間ぶりの再会である。
先ほど成宮先輩にとって最悪な事件が発生した。先輩が買ってきたゲーム機がドロドロに溶け出したのである。その溶解液は机を巻き込み、弁償するハメになってしまった。しかし、先輩は話を続ける。
「まず聞きたいんだけど、間宮君。貴方はルナちゃんの事が好きなの?」
「なっ…」
突然何を言い出すんだこの人は。
「好きなの?愛してるの?一緒にいたいと思う?それとも嫌い?あまり関わりたくない?殺してしまいたい?」
「それは…」
「別に恥ずかしがらなくていいの。人間に感情移入するなんて、別に普通の事なんだから」
「……!?」
「成宮先輩!どういう事ですか。」
「貴方はどう思ってるの?橘君。ルナちゃんの事を」
「嫌い?殺したいと思ってる?ただのゲームのキャラクター?」
「あたり前でしょ。あんなわけの分からない、超能力もってる奴、現実にいるわけがない。」
「まぁ…それでもいい。次に、これを見てほしいんだけど。」
そういうと成宮先輩は橘が使ってるテレビの方を見て、手を伸ばす。画面には剣をもって扉の前に立つ、ルナを殺し続けたマフィアがいた。
あの扉の向こうに、ルナがいるのか?
「先輩、ちょっと待っててください…!」
「待ってほしいのはこっち。」
「でも…ルナが…!!」
そういうと、成宮先輩は硬貨を見せてくる。
「間宮君。これは何に見える?」
「……!なんだ…これ?コイン?でもこんなの…見たことない。」
「まぁ、まずはあの男がもってる、剣を消しましょう。」
「何言って…」
間宮が、言葉を言い切る前に先輩の手には突然剣が魔法で出したかのように現れた。
画面の方を見ると、レオナの剣が消えている。
現実の0が1になり、画面の向こうの1が0になる。
言葉で表すと、そんな感じだ。それでもわけがわからないが。
「これは……どういう」
「さっき使った銃も、このテレビの中から手に入れたものよ。そして、さっきのゲーム機で分かった。なんで疑問に思わなかったんだろう…そもそも、この日本は1991年からおかしかった。平和だった国が、急に、帝国主義になり、1993年からいきなり勝利を重ね、文化、軍隊、衣食住などが、いきなり発展した。私達の理解が追いつけないくらいに、」
「何言って…」
これ以上は辞めて欲しかった…まるで、自分達の信じたものが崩れ去るような気がして。
「そして私は今画面の中から、実物の剣を出した。このことから言えることは…」
「やめろ…」
やめてくれ……いうな……
「私達がゲームだと思っていたのは現実の異世界。そして、私達がいる日本は……別の異世界から盗んだ技術で発展してきた…ペテン師国家…!!」
父親の顔…たしかに父親というには若々しく、お父さんというよりはお兄さんというのが、しっくりくるのかもしれないとおもいながら、私は父親から、殺されようとしている。後ろにいる警官も、拳銃すら持てないほど怯えている。
「やっぱ剣はねぇよな…おい、お前の銃を貸せ。」
そう言いながら、レオナは後ろにいる部下に命令し、銃を受け取る。
「珍しいですね。貴方があの銃を使わないなんて…」
「失くした…というか消えちまった。」
「は…?」
「まぁ、いいさ。ところで、ルナ。聞いてもいいか?お前…何回俺に殺された?」
「………っ!」
「隠さなくていいさ。お前がこの世界で繰り返し俺に殺されてることは、もう聞いた。少年の声がする、神からのお告げだ。」
少年…神?あの人にもマミヤと同じ…いや、別の人と通じているというの?
「……で?お前は何回殺されたんだ?」
「……6回」
「6?おかしいな。俺はさっき98回死んでると言われたんだがな。」
「え…!そんなのおかしい。私は確かに……貴方に……6回…」
後ろの警官隊が、不思議そうな目でこちらをみている。私は確かに6回殺された。それ以前は覚えなどない。
「まぁ、良いさ。俺が、あとお前を94回殺せば良いだけだからな。」
「なっ……なんで…どうして私を殺すの?」
「お前さ、俺のこと何歳に見える?」
「……?」
「19から20くらいだと思うだろうが、俺は今200年の時を生きている。」
そう言うと今度は着ていたベストを脱ぎ、シャツのボタンを外す。その中に現れたのは、女性の華奢な体だった。
「俺はな…いや、私は神話に書かれている繰り返す能力をもっていた少女だよ。」
「何!」
後ろの警官達が、動揺する。それはそうだ。彼が…私の父が、神話に登場する少女だって?しかし、なぜここにいる?
「あの本に書かれた神話は、半分事実で、半分シナリオだ。確かに、私は確かに繰り返す力を与えられた。そして、死にたいと思いそれを弟にやった。やり方は自分でも分からなかったが…しかし、死ねなかった。いや…歳を取らなかった。この力を誰かにやると、後遺症で歳を取らないらしい。自殺も無理だ。しようとすればするほど、何かが許してくれない。まるで私に罰を与えてるように……」
「…………」
全員が何も答えられない……こんな理由のわからない話をどう受け取れというんだ。
「私はね、ただ…死にたいだけなんだ。人として、消えたいだけなんだ。その為なら…私の力を取りす!」
語り終えると銃をルナに向け
「だから…死んでくれ……ルナ。」
今度こそ終わる。まだ全部わかっていないのに…
マミヤの名前を呼ぼうとした時……昔の小説のように表現するなら…信じられないことが起こった。ルナ以外の動き…いや、時が止まった。
なぜ自分だけが動ける?私がやったの?でもそんな感じはしない。とにかく今は逃げるしかない。私さえ逃げればこの警官は無視される…と願うしかない。
自分の無力感と恐怖で逃げ出した。
部屋から出て、廊下を走り抜けた先にある礼拝堂に出た所でルナの時も止まり、画面は完全に動かなくなった。
「本を焼くものは、やがて人を焼くようになる。その事を思想弾圧を掲げる野蛮な敵に思い知らさなければならない。」
1991年、日本の大統領が宣戦布告をする際に言ったセリフだ。でもこの野蛮なやつらは本当に敵の事をさしているのか?
画面の時が止まった。そして、なぜかどこのボタンを押しても何も反応はない。成宮はこれをチャンスととらえ、3人は図書館で新聞を調べている。成宮先輩が言っていたことの辻褄を合わせるために。
「まず明らかに今までと違うページを探して。兵器。文化。人。なんでもいい。今まであったものと明らかに違うものが、他の世界からの技術よ。」
ルナの画面が見える位置で、宣戦布告した年から新聞をめくる。
ルナになにがあった?なぜ時が止まった…そう考えながらあるページにたどり着く。
1992年 空襲の新聞だ。この空襲で日本全土は火の海になった。
俺や成宮先輩、橘も家族や大切な人を失ったはずだ。
その次の日の新聞、そこに新型の戦闘機が出てきたという、欄があった。見つけた。
「ありました…きっとこれだ。」
3人で集まり、戦闘機の写真を取り出す。前機体はプロペラなので、こんなメタリックな戦闘機になるのはおかしすぎる。
「私も見つけた。というかこれなんだけど」
そう言って、成宮先輩は自分が愛読する1998年の映画雑誌を広げる。
「俺もこれを」
橘が持ってきたのは俺達の学校の文春だ。
「まず、確認したいんだけど、私達はあのテレビ…いや、その中に入ってるディスクが異世界と繋がっていて、そこから物を取り出すことができることが証明されている。それから考えてみましょう。」
成宮先輩はルナの画面に映っている礼拝堂の皿を取り出す。
「改めてみると、魔法ね。私はルナちゃんが今ループ
してる時間からレオナとかいうやつの銃を取ってこんなことができると分かった。それまで色々やってみたんだけど、手をかざして取り出したいものを思い浮かべるだけでよかった。間宮君。貴方もなにか異世界から取り出し損ねたものがあるんじゃない?」
取り出し損ねたもの?前の行動を振り返り、自分の手を見る。そこで思い出したのは血に染まった自分の手だった。
「あの血……!」
「私も後ろで少し見えてたけど、あれ血だったのね。この異世界の物は取り寄せをキャンセルできることが証明された。」
「あの世界は…現実だって言ってましたね。でもあんな所、テレビや雑誌で見たことありません…どこなんですか?」
橘がテレビの方向を指さし、口を挟むあの世界の人々はとても作り物と思えないほど、リアルな動作をする。とても現実じゃないとは言い難い。
「それは分からない。でも、説は色々ある。まず第一に、大きすぎるドームの中にある映画のセット説。「トゥルーマン・ショー」の世界ね。」
成宮先輩は、あの世界を大きいドームの中にあるセットで、優秀すぎる俳優が演技しているというのだ。
「でも、それじゃあ色々矛盾します。」
橘が意見を出す。今こいつの言う事なんて聞きたくないが、一応耳を傾ける。
「そうね。もし本当にドームの中だったら、ループする世界全ての、つまり私達もループしないとおかしい、ドームの中だけループする実験なら、これをこんな所に置くのもおかしい。それに、そんな大きいドームがあるならもう知られてるしね。」
ドーム説が否定されたなら他になにがある?
「もう一つ考えられるのは…あれも、また一つの現実だということ。こことは違う。無数にある一つの現実。」
間宮はハッとしたように口を開く。
「マルチバース(多元宇宙)……!」
「!」
橘がそれがあったかという顔をして間宮を見る。
「そう。マルチバースなら、あっちの世界がどうであろうが、ループしようが説明がつく」
マルチバース 宇宙はいくつも存在し、そこには多種多様な世界線がある。SFで散々こすられたネタだ。
「待ってください。マルチバースなんて、そんなフィクションみたいなことが…!」
「でも、そうとしか説明がつかない。今映っている世界には新聞や雑誌に載ってる作品や兵器が存在していないのよ。」
マルチバースなんて物はただの説やフィクションだと思ってたが、こんな物見せられて否定する根拠が見つからないな。じゃあ、この世界はどうやって他の世界に干渉してるんだ?
「機械でこんなことしてるとは考えにくいわ。剣を出した時もとてもこんなことができるとは考えられない。」
「じゃあ、どうやって…あっちから干渉してるとか?」
「いや、間宮。あっちから干渉してるなら、わざわざ俺達が取れるようにはしない…考えられるのは…」
「魔法…」
成宮先輩が割ってはいる。さっきまで、マルチバースだなんだと言ってた人が突然ファンタジーに逃げ込むのは違和感があった。
「ルナちゃんが使っていたあのループよ。あの子の話では、間宮君の画面を見てたけど、神話の話に似てるんだって言っていたわよね。」
「もしかしてだけど、ループに似た神の力が、この世界にもあると?」
「ただの可能性だけど、私達が出来ることはほんの一部でもっと深く他の世界に干渉出来る人がいるんじゃないか……これを科学云々で説明できないならね。」
「そんな、ふざけた話が…」
「「この世界は神話と現実の境目にある」なんかのゲームであった名言よ。それを証明するには、実際に見ないといけない。それまでこれは悪魔の証明なの。
だからこそ他のことに目を向けなきゃいけない。」
そう言うと今度は俺達が集めた新聞の方を指さし
「この世界に干渉できる魔法が、いったいいつこの国に生まれたのか」
「1992年 日本は空襲にあった。その空襲では、全土に見境なく爆弾が放たれ、私達の住む街や施設。大統領府まで攻撃を受け、壊滅的な被害を受けた。誰もが負けを認めた時、最新の戦闘機が配備され日本は戦線を広げることに成功。私達には……それが英雄に見えた。」
新聞を見ながら、成宮先輩が補足を入れる。
「その後、文化は急速に発展した。急ピッチで復興を進め、昔以上の街になった。これが俺達の知る歴史だ。」
「日本が戦争で勝機を見いだしたのは、この戦闘機があったからだ。でもそれじゃおかしい。」
そこに成宮が補足を入れる。
「もし、この魔法で戦闘機や原子爆弾の技術を盗んでいたのなら、もっと早く盗めばいい。というか戦闘機そのものを盗めばだれにもバレない。戦争が始まる前。もしくは戦争が始まった直後。」
「そうだ…そうすれば、こんな空襲で死ぬことなんて無かった。」
この空襲はなぜ起こった?なんでこのの国は一度死にかけなきゃならなかった?
その直後、間宮の中で何かを閃く。それが正解なら俺も悪党の仲間入りというわけだ。
「なぁ…こうは考えられないか?」
二人がこちらを向く。
「仮にこの戦争を始めるちょっと前にこの国が魔法を手に入れたとして、それが原因で戦争を始めたのなら、国民は納得しない。圧勝しすぎて、怪しむものが出てくるだろう。でも空襲の絶望後に戦闘機が来たら…国民はどんな反応をするのかと考えるだろう。」
「なにが……言いたいの。」
この仮説が本当ならNeed to Know(情報共有の原則)を犯すものだ。俺達日本国民が無意識に課された、最悪の情報。
「だからさ、先輩。あの空襲は、意図的なんですよ。
空襲で死んだ人達は、俺達が自然にこれを受け入れる為の……生贄だったんです。」
ルナが消えた。俺が使ってる銃のようではなく。突然消えたのだ。
どうなっている…
「動くな…レオナポートマン。お前を逮捕する。」
怪我をしていた警官の一人が俺に銃をむける。
他の警官もそれに合わせて銃を向ける。その中の一人は自分の死期を悟り、涙を浮かべている物もいた。
「馬鹿な奴らだ。俺を通して、少女一人差し出せば、命は助かるのに。」
「馬鹿?……まぁ、そうだな。しかし、君も言えた義理か?あの少女を殺せば君は死ねる?まさか。それならその前の力の持ち主はどうして死んだ?君がやったんだろ?」
図星らしい顔をして警官を睨む。
「言ってやろうか?お前は、元に戻る方法を知らない。ルナを殺してもお前は歳をとらない。」
レオナから見たことない形相で睨まれる。かなりの線を踏み越えたらしい。
「お前のやってることはな…腹いせさ。繰り返す力を他人に譲ったせいで、後遺症をもったお前が、どこにぶつけたらいいかわからず、今繰り返してるやつらにぶつけた。ただの自業自得だ!」
その後警官の頭はで銃で撃たれ、フッ飛ばされた。
その後、他の警官を持っている武器で殺し続ける。
終わった後床には血の海ができていた。
「……っ」
血の涙を流すたびに思い出す。相手を殺そうとする時、反射的に流してしまう血だ。始めて出たのは弟を殺した時だ。私は年を取らないのに、弟は年をとっていく。ついには私の年齢を越してしまった。それが羨ましく、恨めしいとさえ思え、それが積もりに積もってどうせ繰り返すだろうと、殺してしまった。
でもそれが誤りだった。これで気づいた。繰り返す力には回数制限があると。弟は、生き残るため何度も繰り返し、私から逃げていた。
そしてその繰り返す力は、弟が入れ込んでいた女の子に受け継がれ、鬱憤を晴らすように、その子に近づいて殺した。今度は、その息子、嫁…その子供。追い続ける内に、私は女性を捨てていた。
繰り返す力を持つものを…殺すために。
警官の銃を奪い、弾をこめる。今度こそ、ルナを殺すために。
図書館
「じゃあ……私達の身近な人達は、無意味に死んでいったの…?」
「あくまでかってな解釈です…震災でも、古い田舎街が崩れ、復興により、今まで以上に綺麗になった例もあります…それに、この技術は、俺達の見たことないものです。「本を焼くものは、いずれ人を焼くことになる」これは、アメリカという蔑む対象を国民に用意することによって、俺達に優越感を与えるための罠なんですよ…本を焼いていたのは、俺達だった。」
「くっそぉ!戦争のための犠牲じゃなかったのか?なら…弟は…なんで死んだんだ…」
橘が机を叩く。そこには同情しかない、救いようのない物があった。
「この世の中は、正義か悪かよりも、やったもの勝ち…私達は……負けた。ねぇ…2人とも。」
そこには涙を浮かべ、無理やり笑みをつくる成宮先輩がいた
「私達が…異世界の人達と戦ったら、どっちが勝つと思う?」
考えたくなかった……そんなこと…………勝ちは見えてるじゃないか。
橘の目に見えているのは血まみれになった男の子だった…自分はドレスを着ていて、手は血で濡れている。目からなにかの液体が流れそれが太ももにかかる。
あぁ…こんな気持ちだったんだな……レオナ。
「………っ!」
突如橘が成宮先輩が取り出した銃を取り、先輩に撃ち込む。
「橘?」
「本を焼くものは、人を焼く?良いじゃない……」
橘の顔は…目から血を流し、不気味な笑みを浮かべ、まるでレオナのように、こちらを見ていた。
「だったら…全部焼き尽くしてやるよ…!」
教会の門は瓦礫でふさがれていた。
なのでルナは、礼拝堂の長椅子の下に隠れ、やり過ごす。下から見える神の像は…私を嘲笑っているように見えた。
突如カチッと音がなり、背筋が凍った。死にながら何度も聞いた銃のハンマーを鳴らす音だ。
ゆっくり歩く音が聞こえる。一歩一歩足音が聞こえ立ち止まると一番手前の椅子に銃弾を撃ち込む。
悲鳴が聞こえないことが分かると次へまた次へと椅子に銃弾を撃ち込む。もう少しで自分の番が来てしまう。どうする…その場から離れるか?そのままとどまるか?私の手には武器の変わりに咄嗟に手を取った本しかない。
私…死んでしまうのかな…?
ある光景が浮かんでくる。
男の人が泣いている姿だ。画面には、よく分からない映像が流れている。高い塔に棒のような物が刺さっているのだ。その男の人は誰かの名前を叫んでいる。
あぁ…貴方はこんな風に泣いたんだね……マミヤ
その後の光景は私が起こしたものだが私には信じられなかった。
銃で撃たれていない椅子の下をくぐり抜け、本を自分の父親に投げつけたのである。
そして父親とは反対方向に走る。私はなんて馬鹿なことをやっているのだろう……きっと彼の性格がうつったのだ。彼のおかげで今は何でも出来る気がする……先にある別の部屋まであと1mもない。
マミヤ……もう少しで、貴方に……
その思考は直後に起きた銃撃にかき消された。腹の部分に激痛が走る。その痛みを抱えながら、彼女は礼拝堂から脱出した。
「クッソっ……ふざけるなよ。ループするなんて……それを政府はなんで回収しなかった。回収したらやり直すこともできたのに……っ!」
悔しそうな顔をしながら、銃を撃つ少年が見える。
橘が銃を持ち、図書館にいる人々に発砲した。ゲームだったら何でもない光景が現実にある。間宮は、撃たれた成宮を引きずり、物陰に隠れる。
「間宮君……わ……私は…もういい」
「何言ってるんですか!橘を止めないと。警察ももうすぐ来るはずです。まぁ…世界の秘密知った俺達がどうなるかわかんないけど…」
「聞いて…貴方にさっき見せた硬貨なんだけど……あれはただの…貴方から貰った……500円硬貨よ。」
「……え?」
どういうことだ?俺は確かに、全く別の柄に見えた。
「貴方がこれを返せって…言った時、これを円とは言わなかった……」
先輩500ルー返してくださいよ。あんな仕事で流石に払えませんって。
…は?
数日前に言ったことが思い出される。確かに俺は、そんなことを言っていた。でもそんな通貨俺は知らない。
「あのあと……あのテレビを見て…わかった。あれはルナちゃんが買物をしてる時似使ってた……通貨だって……」
「仮説ばかりだけど…私達があれを使えば使うほど、あっちの世界の人に……シンクロしていく。橘は……きっとあっちの男に思考を蝕まれている。私も……さっきから、男の人が見える………私の体を…………弄んでいる……………」
「もう……喋らないでください………」
「聞いて………ま……宮君………私は……あの子を、羨ましいと思った……過去をやり直せるなんて………これ以上の奇跡は……ないから。だから………」
「…………っ!」
叫ぶことなんて、今は許されなかった。橘と決着をつけなきゃならない。気づいた時には周りがあっちの世界のように血の海になっている。利用者や、職員が悲鳴を上げながら死んでいったのだ。
橘が使っていたテレビを見る……そこには銃を持っているレオナが見えた。
「ルナ……」
成宮先輩がやったこと同じ動作をして、テレビに手をかざす………そして手には銃が魔法のように現れる。成功した。
「…………」
成功するだろうか…銃は俺達の年なら皆撃てる。訓練されたからだ。でも、人なんか撃ったことない。
クッソ……なぁ……俺は、あの時なんの為に生き残ったんだ?
その直後頭の中に何かが浮かびあがる。その光景は、間宮が今までスクリーン越しに見えた悲劇の数々だ。
それを見てしまったら迷いなんてなくなる。
「うああああーーーっ!!」
絶叫しながら物陰から身を乗り出し、銃を橘に向け、撃とうとする。しかし、一瞬、左手から手が離れない
成宮先輩を掴んでいたからだ。重さで銃で狙えない……そのせいで、一発目を外してしまう。
「…………っ!」
その後橘は笑みを浮かべ、今度はこちらに発砲しようとする。その後別々の銃から銃弾が2発なり、どちらかの銃は永遠に放たれることはなかった。
「クッソ……ルナ!!どこにいる!!」
レオナの不快感は最高だった。銃がまた突然消え、その一瞬を利用して廊下から姿を消してしまった。
ここからは廊下が複雑になっている。この廊下からルナを見つけるのは至難な技だ。どうやって見つける…部下を呼んで…ダメだ遅い。なんとかここでケリをつけなきゃ…
すまない…少し立て込んでいて、報告が遅れた。
「っ!お前…」
あぁ…いまルナの位置を教える。
「何をしていた!!さっさと位置を教えろ!!」
うるさいハエを排除してたのさ。
まず、まっすぐ進め。
「ハハッ!」
そしてそこを右折突き当たりを左、そうしたら出るはずだ。
「出る?……おいここは出口だぞ。ここになにが…!」
後頭部に激痛が走る。後ろに手を当てると自分の血が出ていることが分かる。
その後今度は前から、銃弾が何もない空間から突然現れこちらの頭を撃ち抜く今度は右膝、左腕、脇腹、足
カメラのアングルが変わり続け、そこに銃弾がいたるところから撃ち込まれる。
「…………」
喋ることができない。これで生きれることが奇跡だ。
俺は……何故か死ねなかった。銃弾飛び交う戦場に言った時も、何回抗争を続けても、一度も怪我を負ったことはなかった……なのに何故
「これを思いついたのは俺が成宮先輩に説得を頼んだ時だ。あんたの世界から物を取り出せるなら、逆にこっちから送れると思ってな。」
……ッ!誰の声だ?あの神ではない。ルナを殺す時、いつもついてきてくれていたはずのあの声が……
「ルナは、一度も成宮先輩の話題を口にしていなかった……何十回というループを忘れているみたいだが…それどころか、女の人と話したという話題すらな。」
「つまりさ……俺達が頭で会話する時は文字を送っていたのさ。そしてその文字は共通の声に翻訳される……!」
………
「ついでに言ってやるよ……レオナ・ポートマン…」
そこにはヘッドホンを付け、撃ちきった銃を持ち脇腹を押さえている間宮がいた。
「神は……死んだ…!」
……もう何も聞こえない。でも、これで良いんだ。私の目的は………これで…………
「…………クッソ……痛い」
もう立ち上がれない。それでも張って進んだ。ルナのもとに行くために……その道中に今までやった行いを思い出す。橘を2発目の銃弾で殺す前、左手に持っていた成宮先輩の遺体を物陰から投げたのだ。
それに一瞬動揺した橘を……撃った。
「ごめん……俺………なんてことを……」
こうなったのは俺の責任だ。俺が…あんな軽い気持ちで、他の世界に干渉したから……もう、思い出さなくていい歴史を掘り起こさせた……なんで……俺は生き残ったんだろう。
もう…死んでしまう……ハハ……これも……報いなのかな?
「貴方も……撃たれたんですか?」
「………え?」
ありえない。目の前に、少女が……ルナがいるのだ。
しかも、いつの間にか俺が使っていたヘッドホンをつけている
ルナはこちらを見ていない。俺がもっと声を出さないと…出来るだけ、情報を伝えないと……
「ルナ……君は今から死ぬ………でも、君なら大丈夫だ。あと2回残っている。これで…死んだら、公衆電話なんか行かず、教会の電話を無理矢理にでも……使ってもっと早く警察に連絡するんだ………そうすれば………クソ………どうすればいい……せっかく、あの化物を殺せたってのに、俺が死んだんじゃ……」
あっちの世界でループしても、こっちの世界はループしない。そんなこと…わかりきってるのに
「………………」
「!」
ルナの手が間宮の頬に触れる。そこには確かに、温もりがあった。
「そんなこと………する必要は……ないよ……」
「何言ってるんだ……君は生きなきゃいけない…まだ2回も繰り返せるんだ……対策は……何度でも立てられる。」
「違う……私、分かったんだ……さっき持っていた本に、それは書いてあった。この力を……他の人に渡す方法………それは……生きることを諦めればいい……そして、渡したい人を思い浮かべるだけ……」
「ルナ……駄目だ。そんなこと……俺は……そんなことの為に、君を生き延びらせたんじゃ………」
ただ……君に生きていて欲しいから……
その顔はどんな痛みを忘れる麻酔のように美しい笑みを浮かべていた
「ただ……貴方に生きていて欲しいから……」
ずるいよ……そんなこと言われて………なにも言い返せるわけないじゃないか…!!
「マミヤ……ありがとう……!」
「ルナ……やめてくれ……そんなこと聞きたくない……俺の側に…ずっといてくれ……」
その後、視界が真っ黒になり、今までの出来事を溶かしていく。
そうして彼は、過去に戻った………




