祈る少女は…
そこには怪我をして地面に倒れ込むあの頃と変わらない不自然に若々しいギャングの父と大人びたあの時の少女。ルナがいる。
「フフ…ハハハハハハ!!ルナ…やっぱりお前は俺の娘だよ。あの時殺さなかったのを後悔してる。」
「だまれ…聞きたいことがある。なぜお前はあの時。私を殺そうとした?」
「…………」
男は悔しがる子供のように答えない。
「なぜだ?私はお前に近づかなかったはずだ…存在すら知らなかった。ろくでなしめ。」
男はゆっくり口角を上げる。
「へ……へへ……ろくでなしか。確かにそうだなたくさん殺してきたし、お前はそれを教えてもないのに実践した。お前は…見た目は母さんに似てるが性根はただの…人殺しさ。」
お母さん…なぜ今その名前が出てくる?
「答えろ!なぜ今お母さんの名前が出てくるんだ!」
男は答えない。ただ笑っているだけだ
「答えろ!いや…答えてくれ!!なぜ皆殺されなきゃならなかった!!なぜ!!」
何故か教えろと言った気がするが引き金の音で聞こえなかった。ルナは気づかない内に復讐を終えてしまった。
「あぁ…あァァァ…!」
後悔の感情が込み上げる内に後ろからルナは銃で撃たれ、即死してしまった。そのごスタッフロールが流れて映画が終わる。
57
1998年図書館
怒りだけ来て、それを相手に発散させる方法はない場合というのを橘明日は今日学んだ。
「マフィアハンターG」上映時間1時間。教会で暮らしていた少女ルナがマフィアに家族を殺され軍に入って復讐する話だ。
しかしこの映画、1年前に出来た映画にしてはストーリーというのがあるが、本当に酷い。
まず少女がなんで命を狙われたのか分からない。というかラスボスであるマフィアがルナの父親であることが分かるのは、さっきの話からだ。それまで情報が一切ないため、ここだけ二度見してしまった。とにかく話が雑で、なにがしたいのかわからない。
1年前、カメラを使って映画というものが作られた。
戦争が日本の勝ちに近づいて、人々が娯楽に力を入れられたおかげだろう。
その中でも話がある映画は数本。
一般には図書館でしか見れずあまり人気がないが一部のマニアなんかが、視聴する。橘や成宮もその一人だった。
「あれ?橘君。その映画見てくれたんだ。」
ヘッドホンを外したら高校1年の時の成宮さんが俺に話かけてきた。それもいつものセーラー服じゃなく、説明が難しいが会社員のスーツに色をつけたみたいな服だ。
「なんですか?その服。」
「あぁ…これ?良いでしょ。友達が着てて国から新しく発売された学校服なんだって。」
なんでそんな物国が売るんだ?
「友達って言ったけど、クラスの大半がこの服に変えてるし、遅れたくないじゃん?」
「ふぅん…ミーハー」
「うっさいわね。」
成宮さんとは図書館で知り合った。1つ歳上の映画マニアだ。毎週ここに集まってこの映画のここが面白くないというのが戦争中の僅かな楽しみだった。
「しかしなんですかね。これ、世界観は小説のファンタジーって感じで良いけど、話が破綻しすぎですよ。」
「さぁ?作り始めたら引き返せなくなったんじゃない?」
やっぱ金の問題か…
「それじゃあ仕方ないか。他の映画でも見るか。」
「なに見るのよ。「歩く男」?「女」?」
「それ前も見たでしょ。あれはただの映像。」
それもそうねと言って成宮は愛読書である映画雑誌を読みに書籍コーナーに行ってしまった。
そして俺はなにか話のヒントになるものはないかと思い、冒頭10分。街中でマフィアがルナとすれ違うシーンを見ていた。
自分の娘が見つかりマフィアがルナを見ている。
その眼差しは僅かに怒りが混じってるようだった。
(こいつなんで娘を狙うんだ?)
「だれだ!」
マフィアが後ろを振り返りながら叫ぶ。今までこんなシーン見たことなかった。
(お前……もしかして聞こえてるのか?)
ダメ元で今思ってることを
「聞こえてるって…何処だ!どこにいる!」
街中で喚き散らしたため他の人がマフィアの男を見ている。
わけがわからない…こんな事が起こるなんて。映像の人物が話しかけてくるなんて前例がないぞ。
しかも俺が思ってることを聞かれてるなんて。
「くっそ!拉致があかない」
問いかけてくる人物がいないと分かると自分のポケットにある銃を取り出し構える。
「出てこい!さもないと…」
(落ち着いてくれ。そんなことしても俺はお前の前に現れないぞ。)
「…!」
(俺は…そうだな。この世界の神様だよ。)
後々この言葉に対して死ぬほど恥ずかしくなり、自分のギャグセンスは無いということを学んだ。
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その後俺はその男を説得し力を貸した。この映画を面白くしてない原因はその少女だとおもっていたから。
それに…
「君はなんでルナを追っているんだ?」
「それはな……」
この理由で、俺はルナを許せないと思ったからだ。
2000年春
間宮はアメリカの空港にいる。友達と中学の旅行にいっていたが何故か間宮がパスポートを無くし、友達は先に飛行機に乗ってしまった。
そして今必死になって鞄の中からパスポートを探している所だ。
(くっそ。何処いった?)
その時携帯から電話がかかってきた。
「田中?」
「やぁ、間宮。旅行の続き楽しんでる?」
こいつめ…俺をからかうために電話したのか。
こいつに国際電話という概念はないのか?
「あぁ。今パスポート掴み取り大会の真っ最中だよ。」
鞄の中からパスポートを探しながら電話する
「そっか…突然で悪いんだけどさ。俺、自殺するよ。」
……は?何を言ってるんだこいつは。
「もう会えないからさ、せめてあと3日くらいお前と旅行を楽しんどきたかったな…」
「何馬鹿なこと言ってるんだ?おま…」
電話が突然切れる。どういうことだ?気づいた時に、慌ただしい様子の人だかりが、テレビの前に出来ている。なにか嫌な予感がして、人だかりをかき分け、テレビを見てみた。
「今日午後8時頃テロリストと思えるグループが飛行機をハイジャックし、東京タワーに墜落しました。」
は?
訳が分からなかった。戦争は終わったんだぞ?なんだって今更…
「この5分前に東京に飛行機が墜落したと情報が入りました。」
嫌な予感がよぎる
「こちらがその映像です。」
そこには間宮の友人が乗っていた便が映っていた。
「おい!嘘だろ…あれには友達が乗ってる!誰か!嘘だと言ってくれ!」
取り乱しテレビにすがりついてしまう。必死に取り押さえられても間宮は離れない。
その後田中の鞄に間宮のパスポートがあることがわかった。
2000年11月9日間宮の友人は自殺した。
1998年図書館
「ルナちゃーん聞こえてるー?」
「あ…貴方は?」
「私わね。貴方を救おうと思って来たの。」
ハハハ。なんだよその話し方…いってぇ!
「ほ…本当に?」
「えぇ、本当よ。指示どうりに動いて。まず…」
40
このゲームは戦争で娯楽がボードゲームと映画くらいしかない俺達にとってはかなりぶっ飛んでて面白かった。
成宮さんにもこのゲームを教えて見せるとすぐに夢中になってくれたよ。それだけこの映画と少女にヘイトが溜まってたみたいだ。
もう何回殺しただろうか。ただ殺して貰うだけじゃ面白くなかったため成宮さんと工夫して殺し方を変えていった。
銃で撃たせたり、ギャング達に車で轢かせたり…あっそうそう、アメリカ軍がやってるっていう拷問を試してみたりもしたっけ?
祈る少女を神は見ている。死の姿をだけどね。
ディスクが2つあり、片方がルナに指示を出せると分かると簡単にならないように成宮さんと対戦もしてみた。(まぁ、殆ど成宮さんが自爆させたり、嘘情報教えたりしたんだけど。)
でも新しい物にも終わりがあるみたいで、全部で40回くらいやって2人とも飽きてしまった。最後は…ギャングがルナを撃って終わったんだったかな?
図書館で椅子に気だるそうに座りながら、雑誌やら本を散らかしている2人組は、周りには近づきがたいオーラを放っていた。
「なぁんか、あんなに面白いものやっちゃったら、映画なんて見る気になれませんね。」
「そうね。あっ、新しいものといえば、新しい施設が出来るんですって。」
興味が湧いて、耳を傾けてみる。
「施設ってどんな?」
「なんか映画を大画面で見れるって施設を国が作ったんですって。そこで新しい映画が上映されるそうよ。たしか…エ……エイリアン?とかショ…ショーシャンクの空に?っていうんらしいんだけど…」
「は?なんだその変な名前。もう酷い映画確定なんですけどー」
「まぁ、見てみない?チケットくらい出すよ。どうせ一人で行ってもつまんないもん」
まぁ、良いですよ。と何となくで言ったものには大体良いことがある。
この映画が橘と成宮の…いや、全人類の映画人生を大きく変えた。
このことで、俺達はルナのことを忘れた。
2000年6月8日
アメリカに原子爆弾が落とされ、戦争は日本の勝利に終わった。
現実がフィクションを超えた初の例である。
日本西暦年表
1991年 日本がアメリカに宣戦布告
1998年 6月 日本政府により「エイリアン」「ショーシャンクの空に」「チャイルドプレイ」などの映画およそ20点を公開。一ヶ月単位で続編が公開される。
1998年 7月 前10点の続編と新作10点が公開
1999年 8月 日本がアメリカに本土侵攻を開始
2000年 6月 アメリカに原子爆弾が落とされる
2000年 5月 万博に初のテレビゲーム「PlayStation4」が国により発表。
2000年 11月 東京同時多発テロが起こる
6
「そういえば…貴方の名前を聞いていませんでしたね。」
「ん…間宮だよ。マミヤ」
「ねぇ…マミヤ。あなたは…神様じゃないなら、もしかして幽霊とか?」
「ハハハ…やめろよその冗談。俺は君の目に見えてないけど、人間だよ。」
「フフフ。貴方が幽霊なら…幽霊と話せると思ったのに…残念です。」
「なんだ?幽霊と話したいのか?」
「マミヤは…どう思う?幽霊と話せるとしたら、誰か…話したい人はいない?」
「そうだな…友達と話したいよ。俺の命を助けてくれた…友達に。」
「その人と…どんな話を?やっぱり…謝りたいんですか?」
「そんなんじゃない……お前は、どうなんだ?謝りたい人がいるのか?」
「えぇ…私のお母さんに。」
「お母さん?」
「貴方と同じ…車に轢かれそうになった私を助けてくれたお母さんに」
「話せるといいな。」
「……」
「でも、話すのは謝ることじゃないぜ?」
「え?」
「お礼さ。どんな形であれ、助けてくれた奴にはお礼だよ。」
「……そうですね。




