8 幽霊
東瀬たちが異世界で調査をしている頃、俺は校舎とは別に建てられた古びた図書館に来ていた。学校の歴史を調べている際に知ったことだが、どうやらこの図書館は学校が建てられるよりもずっと前に建てられたらしい。
年季が入って良い感じに腐食している木製のドアを開け中に入ると、視界には収めきれないほどの大量の本がずらりと並んでいた。いつ見ても壮観である。図書館に来ている人物は見渡す限り2人程度しかおらず、あまり人気がない様子だ。しかし人気はないが一部の生徒はこの図書館を目当てに入学しているという噂もチラホラと聞く。なんと言ってもこの図書館は異世界含めた世界で一番でかい図書館であり、出版されてる本はもちろんされていない作品も置いてあるらしい。
そんな大量の本を管理している司書は量に見合わずたったの一人。白髪を腰まで伸ばし一つに結んだ60代くらいのおじいさんである。その風貌から学校内では「幽霊」というあだ名が付けられている。一人でこの膨大な本を管理しているのだからすごいものである。
俺は大量の本には見向きもせずに、その司書の元まで向かう。司書はただジッとこちらを見つめているだけ。俺も彼の目を見て距離を詰めていく。そしてその距離がわずか50センチほどになったところで足を止めた。
「こんにちは。ご無沙汰してます」
「ああ。本当にご無沙汰だよ。〝アレ〟以来来ないから失敗に終わったのかと思ったんだがな」
そう言いながら不敵な笑みを浮かべる司書。
「ははっ、まるで失敗してて欲しかったみたいな顔をしますね」
「私は元からこんな顔だ。それは侮辱か?それに私に限って失敗などあり得ないことだ」
「いやいやあり得ますよ。だって1回失敗してるし」
俺はニッコリと笑みを作ってそう答える。そしてその瞬間空気が一変した。
「ふんっ、嫌なことを。しかしそこまで知っているなら、アレは私のミスなどではないということも知っているはずではないか?」
もちろん知っている。だがここで知っていると答えるのは得策ではない。
「いいえ、知りません。言い訳でもするつもりですか」
「お前わかってるのか?誰のおかげで」
「わかってますよ。今日はそのお礼を言いに来たんですから。」
「お礼をするにはずいぶんと遅い。態度もなっていない」
何か心の中で整理がついたのか目を瞑りながら話し始める白髪の司書。
「それは失礼しました。こちらにも事情というものがあったんです」
「事情、か」
「知りたいですか?」
「いや、短命のお前の事情なんか心底どうでもいい」
その時、携帯の着信音が鳴った。
司書のことは気にせずに携帯を取り出し画面を見てみると咲羅部長から呼び出しのメッセージが届いていた。時刻は18時を回っている。
この時間にメールが来るのは珍しい。緊急だろうか。
「すみませんがお話しはまた今度に」
「好きにしろ」
俺は司書が返答するより前に体を反転させ、扉の方までゆっくりと歩いて行った。
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