7 眼前
右につられちゃん、左に猫布、今の俺を表すのにぴったりな言葉「両手に花」。最高すぎるだろうよコレ。
「東瀬・・・先輩、何いやらしい顔してんですか」
「キモい東瀬」
花は花でも腐ってる花かもしれない。
「つられちゃ〜ん、嫌なら先輩つけなくてもいいよ」
「つけろと言ったのはそっちでしょ」
「そうだけどさぁ」
嫌々つけられても全然嬉しくないんだよな。むしろ、つけない方が距離感近いみたいで嬉しいかもしれない。
そんなことを思いながら歩いてるうちに、転移装置『テレポ』が見えるところまで来ていた。
俺はあんまり異世界が好きじゃないから、部活動以外でほぼ異世界には行かない。だからあんまりアッチの世界に詳しくはないけど、咲羅部長からジュエリーショップの位置を記してある地図を貰ってきたから、まぁなんとかなるだろう。
「よし、じゃあ俺は最後でいいから、つられちゃんと猫布が先行ってよ」
「いや、東瀬が先行ってください」
「は?なんで?」
「私たちを行かせた後に帰る可能性ありますから」
「んなことしねぇよ。ただのレディーファーストっ」
「どう思う?半琶流さん?」
「確かにコイツならやりかねませんね。危ないところでした」
つられちゃんだけじゃなく猫布からの信用も無いことを知り、意気消沈の状態で俺は先に異世界へ向かった。
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「被害に遭った店舗、何も収穫ありませんでしたね」
「ですね」
数時間かけ、被害に遭った店舗を全て見てまわったが、これといった手がかりは得られなかった。そもそも半分ほどの店が休業中だったため、実際に店内を見れたのは数店舗だけ。
「で、帰ります?」
眠そうな顔をして帰宅の提案をしてくる猫布。いや、コイツはいつも眠そうな顔してるか。
「帰らないって。まだ見てないところがあるだろ?」
「あるにはありますけど・・・全部は無理ですよ。それにいつどこで行われるかも分からないですし。」
まだ行ってない場所。それは被害にあっていない店舗。もしかしたら手がかりを掴めるかもしれないし、運が良ければ反抗現場を目撃できるかもしれない。
「だから、各々が怪しそうだなと思う場所を見て回るんだ」
「つまり、労力は三分の一と?」
「それでもめんどくさ」
「おいおい、猫布。後輩の前なんだからもうちょっと」
「いや、大丈夫ですよ。私は東瀬より猫布先輩のこの感じの方が好きですし」
「まじ?じゃあ俺も」
「絶対やめてください」
やっぱり嫌われている。
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てな訳で俺は今1人で行動している。自分で提案したことだが、普通に寂しい。
まずは一番最近の被害店の近くにある「ライジュ魔店」を調べる。ここは人通りは少ないが、店内にはそれなりに人がいる。
被害に遭った店舗は大体休業する為、その影響だろうな。
そんなことを思いながら店内を見ていると一際輝く緑色の魔宝石が目に入った。
「へ〜、あんまりこういう店来ないけど、めっちゃいいな」
この緑の魔宝石をつられちゃんにプレゼントしたら仲良くなれるだろうか。いや、プレゼントで仲良くなれるなら苦労しないな。
「うわっ、てかこれクソ高けぇ!何円すんだ?えーっと。一、十、百、千、ま、・・・は?」
終わりが見えない値段を右から順に数えていた。値札のすぐ上に魔宝石がある為、嫌でも一緒に魔宝石が目に入る。だから、気づくのだ。
魔宝石が消えたことに。
8話は明日の7時に投稿します!よろしくお願いします!