5 報告
異界に行けなかったという前例は一つもない。世界的に見ても俺が初だろう。とは言っても、最初から行けなかったというわけでない。去年までは行けていたのだ。
「はぁ、丹羽くんの良いところは大人しいところと高戦力アタッカーなところなのに。あっちに行けないんじゃ、ただの陰キャしか残らないよ」
「いや、陰キャを褒め言葉みたいに言ってますが立派な悪口ですよ」
咲羅先輩は頭は切れるが、少し考え方がおかしい。個人でおかしいだけなら良いが、部員の俺らも巻き込まれてるのでたまったものじゃない。だがその反面、助けられたことも同じくらいあるので文句は言えないのだが。
「え、陰キャはカッコいいよ。忍者みたい。ニンニン」
そう言って人差し指と中指を立てたまま、両手を合わせて忍者ポーズを取る先輩。
「実際の忍者が陽キャだったらどうするんですか。夜中にロックダンス踊ってるかもしれませんよ?」
「なに、その『こんな忍者は嫌だ』みたいなお題の回答」
「まぁでも俺は俺のできる範囲で尽力しますので心配しないでください」
異世界に行けなくなったからと言って何もできないわけじゃない。行けなくなったからこそ出来ることもある。
「心配いらないなら警察はいらないっつーの」
「いや、入りますよ。今は警察も騎士団の方も〝あの事件〟に殆どの人員を割いていて役に立ちませんが」
「ん、そだねー。でもそのおかげで捜査が進まない事件に私たちが介入できるわけだしー」
咲羅先輩と話をしていると部室のドアを誰かが勢いよく叩いてきた。ドアの方を向けば、既にドアは開かれておりノックした人物も中に入ってきていた。
「失礼してます。誰かいま、したね!こんにちは!」
「こんにちは。名前は確か、そうだな。新入部員ひさしぶり」
「思い出すの諦めた!?半琶流ですよ」
確かに言われてみればそんな名前だったような気もしなくもない。というか覚えづらい名前だな。
「それで半琶流ちゃんは今日どしたの?」
「おぉ部長!よく聞いてくれました!どっかの先輩とは違・・あっ、私は名前覚えてますよ。丹羽でしたよね」
「ジュエリーショップでの宝石強盗か」
「この人、話聞いてます?」
半琶流のカバンからはみ出ていた新聞を取り出し内容を見てみるとそこに大きく書かれていたのは『複数の宝石店にて強盗か』という見出し。おそらくというか絶対に部室に来たのは事件探しの報告だな。
「よしっ、じゃあ早速他の部員呼んでどうするか決めようか!呼んできて忍者くん」
「えぇっ忍者くんって」
「よろしく」
「何のことかわかりませんが忍者先輩レッツゴーっ!です」
「・・・ニンニン」
そう言い、俺は魔法で姿を透明にして普通にドアから出ていった。
明日の朝7時に更新予定です!よろしくお願いします!
投稿時間迷走してます。