3 入部希望者
2507年、我々人間は異なる世界を発見した。
その世界は宇宙のどこかにある星なのか、それとも別の宇宙にある星なのか、はたまたそれ以外の未知なる場所なのか、未だに分かっていない。分かっていることはアニメなどで題材にされる異世界そのものであるということ。未知なる物質、獣人、中世ヨーロッパ風の街並み、そしてファンタジーの醍醐味である魔法。
我々地球人は長期間にわたる国際会議の末、侵略ではなく異界の者との友好的関係を築く方針をとった。幸いなことに異界の者もそれをあっさりとではないが承諾してくれた。
異界の名は「ギレラル」。ギレラルも地球と同じように複数の国で分かれている。
地球とギレラルは連界同盟を2527年に締結。そして2721年、誰でも地球とギレラルを行き来することが可能な魔法具「テレポ」が両世界の至る所に設置されることになった。
時は現代に戻り2825年。我々『異界調査部』は、騎士団と警察が追わない事件や追ってる事件。つまり全部の事件の中から興味がある事件を解決に導く部活である。
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「ていう説明で君は本当にこの部活に入ろうと思ったの?8割くらい歴史話してるだけだったじゃん」
何もない空に絵を描いてる咲羅部長は俺の説明をディスりながら、椅子に腰掛けて女生徒と話していた。
「はい!すっごく楽しそうな部活だなって思ったので」
「え〜、そうかなぁ」
部長は机の上に置いてあった鉛筆を鼻に乗せ始めた。ちゃんと聞いてんのかこれ。
「まあ、私は歓迎かな」
「・・・」
隣にいた猫布は賛成意見らしいが、これはまた珍しいな。
「私がそう言うなんて意外だって顔じゃん。心外なんですけど」
「そんな俺、顔に出やすいか?」
「あっ、今日鏡持って来てないや」
「いや、いらないけど。ただまぁ、普段の猫布を見てれば自然とそう思うんだよ」
「・・そうなんだ」
猫布は人と積極的に関わらない性格をしている。クラス内でもどこの輪にも属せず自ら孤立を貫いていたため強い精神を持った女性と言うのが第一印象だった。特に嫌われるでも好かれるでもなく空気のような存在。
これはあまり関係のない話になるのだが、成績も普通より少し頭がいいくらいである。一年生の頃、数ヶ月だけ猫布の隣の席だった。猫布は試験で100点を取ったらしく目を輝かせて、俺に自慢するか終始こちらをチラチラ見て悩んでいた。そういえば、あのあと俺はどうしたんだっけか。だめだ思い出そうとしても、ドヤ顔で遠くからゴールにバスケットボールを投げ、しかし外れて顔を赤てる猫布の記憶しか出てこない。
1年しか共に過ごしてないのにかなり多くのことが猫布との間にあったと思う。今年も一緒に魔花火祭りに行けたら嬉しい。
「どうしたの?急に喋らなくなって」
「え?あぁ、新入部員のことを少し考えてて」
「んーーー?さては違うこと考えてましたか丹羽くん?まだ入ってないから新入部員って呼び方へんだし」
「変ではな、いや変か?」
「変です」
「では変でした」
「はい。変ですね」
いや、流されてしまったが入部することはほぼ決まってるのだから「新入部員」という呼び方は変ではないだろう。他の呼び方も特に思い浮かばないし。
「そういえば、まだ名前聞いてなかったな。なんて名前だ?」
「ふぇ?私ですか?」
「お前以外に誰がいるんだよ」
「はは冗談ですよ。私の名前は半琶流つられって言います。覚えづらい名前ですが覚えて帰ってくださいね」
確かに半琶流なんて珍しい苗字、覚えるのに時間がかかりそうだ。
「それで、つられちゃんは結局入部するってことで良いの?」
「もちろんイエスですよ部長」
「そっか。よかったね皆んな」
満面の笑みを浮かべて、そう言う咲羅先輩。一方でこちらは何がそこまで良いのかさっぱり分からず頭上にクエスチョンマークを浮かべている。確かに新入部員が入ったのは素直に嬉しいし、めでたいことだ。しかしそこまでの笑みを浮かべるのは腑に落ちない。
「あっ」
「どうしました?先輩」
「咲羅部長、もしかしてこの子に事件探し行ってもらう気ですか?」
「そうだよー。だから君たちは行かなくてOK」
なるほどな。この部活の主な活動は解決であり、探す方ではないため「事件探し」はただの雑用。誰もやりたがらない。その点を考えれば、新入部員が売ってくれるのは助かる話だ。
「しゃっ!マジで最高だ!つられちゃん」
「あなたの名前は存じ上げませんが、次その呼び方したらあなたを殺して事件にしますね」
「いいなベール、仕事が早すぎる」
「えぇ!?蝶、芽先輩でしたっけ。ベールって私のことですか!?」
「他に誰がいる」
「冗談ですよ」
「お前その冗談好きだな」
「まぁ、半分ビビったのは本当ですけどね」
それから少しまた雑談をしたのち、各々帰宅して行った。
4話は明日投稿します。9時です。お願いします。