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我々は今ここで異世界で  作者: ウミガラス空
2章 虐めの存在証明
14/21

1 私よ俺に

 朝の憂鬱な登校路。これから始まる1日を考えるだけで陰鬱な気持ちになり、今すぐにでもUターンをして帰りたいとさえ思う。

 だがその憂鬱な登校路も誰と歩くかである。1人で歩いてる場合と仲の良い友人と歩く場合とではかなり心の持ちようが変わってくる。


 そんなことを思いながら俺は傘を蹴り飛ばしながら歩いてる猫布の方を見る。


「今日って雨降るのか?俺持ってきてないんだが」


「いや、降らないと思う。けどお母さんが持って行けって」


「あーあるあるだな。結局降らないで登下校邪魔になって終わるやつ」

 

「そうそう」


  実際に雨が降った時はものすごい感謝はするのだが、逆に降らなかった時は恨めしい気持ちにもなる。ましてやそれが自分だけ持ってきて浮いてしまった場合はなおさら。


 空を見上げ、雨が降りそうか確認するが雲ひとつない快晴である。陽が強く出ているので日傘としてくらいしか今日の使い道はないのではないだろうか。


「なんでこっちを見てるんだ」


「傘、持ってくれない?」


「恥ずかしいから嫌だ」

 

「ん?ビニール傘だよ?」


「色の問題じゃない」


 誰も傘を持っていないなか、自分だけ傘を持っていたら流石に恥ずかしい。通行人はさほど気にしていなくてもだ。


「うーん、じゃあ降りたたみ傘にしとけばよかったか」


「逆にこの空模様で折り畳み傘以外の選択肢ないだろ」


「万が一のため」


「万が一?」


 なんの万が一だろうか。考えつくのは折り畳み傘より普通の傘の方が頑丈であることくらいか。だとしてもビニール傘と折り畳み傘を比べたら折り畳み傘の方が頑丈だと思うのだがな。


「丹羽君は知らなくていーよーだっ」


「なんだそれ」


 そんなたわいもないバカ話をしながら俺と猫布は登校路をゆっくりゆっくり歩き、学校に向かったのだった。


 **********************


 自分のクラスに着くと、もう教室内は半分ほどの生徒が来ており、それぞれ談笑や読書あるいは睡眠をしているようだった。


 その様子を横目に俺は自分の席につきホームルームが始まるのを待つ。


 10分ほど経ったところでチャイムと同時に担任が前のドアから、後ろのドアからは勢いよく駆け込んできたクラスメイトの萩街 (はぎまちかなえ)が入ってきた。


 これはいつもの光景であり別に何も珍しい点はないためクラスメイトはスルーをする。また、窓側の一番前が欠席なのもいつも通りだ。


「起立」


  号令がかかり、生徒全員が一斉に立ち上がる。


「礼」


 クラスメイトの皆んなが礼をして、俺もそれに倣い礼をしようとしたところで廊下を走る東瀬の姿が横目に入った。


 もうチャイムはなっている。今の時間から教室に入ったら、それは当然遅刻扱いになる。遅延などの非常時は免除されるが、東瀬は自転車通学だ。遅延の可能性はない。


 あの一度も遅刻をしたことがない東瀬が遅刻か。


「おい、丹羽。もうみんな座ってるぞ」


  後ろに座っている国重京(くにしげけい)がヒソヒソと俺にそう教えてくれ、周りを見ると確かに全員すでに着席しており俺の方を見ている生徒も何人かいた。


「あっ、ほんとだ」


「ぼーっとすんなよな」


 俺は着席し、前を向きながら後ろの京と小さい声でやり取りをする。


「全然気づかなかった、助かった」


「おう、まぁいいけどよ。何考えてたんだ」


「東瀬がチャイム後に廊下を走ってたからな」


「東瀬?あぁ、バスケで3ポイントシュートできるやつか、運動神経いいらしいな」


 東瀬の印象を思い出しながら語る京。3ポイントの話はかなり有名だから、一番最初に挙げられるのも納得だ。


「で、その東瀬がどうしたんだ?」


「東瀬が一度も遅刻をしたことがないんだ。だから珍しいなって思って」


「いやいや!遅刻は誰でもするでしょ!私とかもするし!」


 いきなり大きな声で話に割り込んできたのは、先ほどチャイムギリギリで教室に入ってきた萩街 (はぎまちかなえ)

 その大きな声でクラスの視線が一気にこちらへ集まる。


「おい、萩町。ホームルーム中は静かにしとけ」


「え!?なぜに私!?」


 担任から当然の如く注意される萩町は何故自分だけ叱られてるのか分からないという顔で、俺と国重の方を見てくる。

 だが、俺と国重は今も先ほどもずっと前を向いているため問題視されていない。


「なぜにもなにもない。静かにしとけ」


 再度忠告を受け、渋々といった感じで返事をした萩街は俯いて机をじっと見始めた。流石に怒られて落ち込んでいるのかと思ったが、どうやら違ったらしい。萩街はどこから入ってきたかわからない蚊を殺すか殺さないか迷っているだけだったらしい。


 と俺が萩町の方に意識を向けていると、白い紙飛行機が俺めがけ飛んでくるのに気づいた。そしてその紙飛行機は俺の机の上に着陸した。


 一体誰が飛ばしたのか飛んできた方向を見ると窓側の前から2番目に座っている猫布がこちらを真顔で見ていた。


 何かすぐに伝えたいことでもあったのだろうか。いや、それならテレパシーで事足りる。


 では何故と思い紙飛行機を広げてみると「爆」とだけ書かれていた。


「あっ、まずい」


 そう思った時にはもう遅い。


 白い紙飛行機は俺の机の上で小さな爆発を起こした。



第2章2話は明日の同じ時間に投稿します!よろしくお願いします!

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