10 煌めかない宝石に価値をつけて
こんにちは。半琶流つられです。
今日も今日とて異世界で調査をすることになりました。本当は歩くのが疲れるから行きたくないんだけど仕方がありません。
「東瀬先輩のせいで今日も来ることになったんですよ。そのことちゃんと自覚して反省してくださいね」
「なんで俺、後輩に説教されてんの?てかあれ俺が悪いのか?」
東瀬は横並びで歩いてる私と猫布先輩の方を振り向いてそう聞いてきましたが、なに当たり前のことを聞いてるのでしょうか。
自分の頭で考える力はないのやら。反面教師としてはいい例ですね、世の男性はこれを見て勉強してほしいです。
「いっそ見世物小屋にでも入れておいたほうが」
「いや、なんの話!?」
「なんでもありませんよ。それよりもさっきの質問ですが、あれはあなたが悪いです。あれに限らずこの世の不条理は全部あなたのせいなんです。一生をかけて償ってください」
「ええ、それこそ不条理だろ」
不条理ってなんでしたっけ。
「まあいいです。先輩の尻拭いをするのも後輩の勤め・・・女子の後輩に尻拭いさせるって変態な先輩ですね」
「お前妄想癖でもあんの?」
「やめてあげて半琶流さん。これ以上本当のことを言うのは私が聞いてて辛いから」
「本当のことじゃねぇし、お前哀れんでるだけだろ」
と突然、前を歩いていた関湯先輩が振り向きました。休憩でしょうか。
「お前ら、雑談はここまでだ。手分けしてマーキングの後がないか調べるぞ」
手分けして作業するほうが効率いいのはわかりますが、あまり一人の作業は好きじゃないんですよね。
「東瀬、この紙を他の二人に回してくれ」
そう言われた東瀬は紙を3枚もらい、1枚ずつ私と猫布先輩に渡してきました。その紙はジュエリーショップの位置が記されたマップ。
「じゃあ終わったら、俺に電話をして結果を伝えてくれ」
「うす」
「「はい」」
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昨日の咲羅部長の推理で蝶芽を除いた他の部員は異世界に行っており、また部長と二人きりの時間が流れている。
第三者が見たら、なぜ蝶芽は参加しないのかという疑問が浮かぶと思うのだが「いつものこと」以外に説明できない。自由奔放で何にも縛られていない性格、羨ましい限りだ。
今は部員からの結果報告の電話を待っている。この空気が気まずいので早くかかってきてほしい、時間の流れが遅く感じる。
そう思った瞬間、俺の願いが天に、いや異世界に届いたのか咲羅部長の携帯電話が部室に鳴り響く。
「ん?もしもし?関湯くん?」
「あぁ凛か?俺ら全員、ちょうど今終わったとこなんだが」
「お疲れ様、それで結果は?どうだった?」
「それがだな、全てマーキングなしだ」
やはり転送の魔法によるものじゃなかったか。じゃあ犯人はあの手段で。
「やっぱりね」
俺は思案をやめ耳が捉えたその発言を疑った。マーキング調査、咲羅部長が推理し頼んだことではないのか。わかっていたならなぜ。
「咲羅部長、犯行方法が転送じゃないこと知ってたんですか?」
気づいたら俺の口は質問を投げかけていた。
「うん。私の中にもう一つ他の可能性があって、でもこの転送の可能性も完全に否定できなくって」
「もう一つの方に確実性を持たせたんですね」
「そうなるね〜、まぁ犯行方法がわかったから後は騎士団に任せようかな」
「・・・」
「あっ、ごめん。まだ犯行方法みんなに言ってなかったよね。犯人がどうやって宝石を盗んだか。それはね」
「偽物の宝石、ですよね」
「ははっ、なんだ丹羽くんも気づいてたんだ。じゃあ昨日の私の推理の時も知ってて、いや、何だか恥ずかしいなぁ」
偽物の宝石を使用し犯行に及んだことは少し考えれば分かることだ。跡魔を残さずに魔法石を消すやり方なんて、それしかないんだから。
跡魔は魔法を使用する意思が働いた時にその場所に残る。ならば店とは関係のない場所で偽物の魔法石を作ればいい。魔法石というものは魔力の塊、つまり魔力の質さえ分かれば複製など造作もない。作った後は簡単。そのまま本物のように見せて店まで運び、時を見計らって魔法を解除すれば魔法石が消えているという仕組みだ。そうして自分の痕跡を跡形もなく消せる。
こんな子供だまし、騎士団が正常に機能していればすぐに逮捕されてた事件だ。
そしてそれができる人物は店まで魔法石を運ぶ運搬業者に限られている。
読んでいただきありがとうございます。
11話は夜中に更新します!よろしくお願いします!




