第6話 学園生活(仮)終了のお知らせ
【業務日誌 西暦2025年4月6日】
名前:(海老原 鯖男)
<内容>
江呉依、社内では順調な進化を見せているが、学業方面に不穏な動き。
SNSにて「声が似てる」「名前が似てる」と話題になり、特定班が出動中。
<所感>
この業界、表と裏の二重生活は不可能に近い。
若さは隠れない。声もバレる。
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ステータス更新
江呉依 英知:学内認知度:上昇中 エロゲ声優疑惑:濃厚
天乃つかさ:タグ生成回数:27回/日
天乃あすか:SNS被弾率:中
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月曜の午前。
大学の講義室に入った瞬間、空気が変わったのを感じた。
誰かがスマホを見ながら、俺の方をチラッと見ている。
(まさか……)
机に着くと、隣の席の山田が声を潜めて言った。
「お前さ……昨日出てたエロゲ、やった?」
「え? い、いや?」
「俺、すっげー似てると思うんだよなあ、あの声……」
喉が渇いた。
顔がひきつった。
講義が始まっても、周囲の視線はなんとなく集中している気がする。
スマホをいじる手元から漏れる音声。
──俺の声。
「無理……やばい……あのセリフ、よりによってそのシーンか……」
午後。
会社に戻ると、社長がニコニコしながら近寄ってきた。
「えろいえっちくん、人気出てるてんしよ~! 学内ランキング急上昇中てんし!」
「ランキングって……そんなのあるんですか?」
「あるてんし♪“学内声バレリスクランキング”でトップてんし!」
「絶対知られちゃいけないランキングじゃないですか!」
その日。
俺は一つの決断をした。
“仮面の声優”としての覚悟を固めよう。
この道を選んだのは、俺自身だ。
逃げるわけにはいかない。
……まあ、逃げてもたぶんもう無理だけど。
【次回予告】
声優デビューに、学内注目、そして──公式イベント!?
人前に出る覚悟、整ってますか?
次回、
『イベント出演とか無理です(物理)』
声優バレ vs 本人登壇!? 身体と魂が分離する回!