第5話 性癖は育てるものです
【業務日誌 西暦2025年4月5日】
名前:(江呉依 英知)
<内容>
母がスタジオ内で収録を見守るという、前代未聞の状況。
双子声優の姉・つかさが空気を読まずにアドリブ大暴走。
収録現場は凍結→混乱→爆笑。
<所感>
母の精神、強すぎる。
俺の羞恥心、もはや限界突破。
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ステータス更新
江呉依 英知:理性:2% 羞恥ダメージ:限界突破
母(江呉依家の母):息子観察モード:発動中 精神耐性:鉄壁
天乃つかさ:アドリブ暴走率:300%
天乃あすか:巻き添え被害率:高
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スタジオに戻ると、母が防音ガラスの外に立っていた。
収録の様子をじっと見つめながら、何も言わず。
双子はすぐにマイク前にスタンバイ。
「それじゃあ第12シーン、いきまーす!」
つかさの元気な声。
(妹が、布団の中から兄を見上げて……)
「……あたしのどこが子供なのよ、お兄ちゃん……あたし、もう、夜のことだって……知ってるんだから……」
……あああああああ!!!
母、見てるのに!!!!
続くあすかのセリフ。
「え……お、お姉ちゃん!? それ台本にないよ!?」
俺は頭を抱えた。
社長は笑顔でメモを取りながら呟く。
「実体験ベースてんしね……素材の深みが違うてんし」
「してませんて!!」
そんな中、母が静かにインターホンを押した。
『ごめんなさい、私も……その、台本って見せてもらえるかしら?』
スタジオ内が一瞬、時を止めた。
社長は快諾し、数枚の台本を母に手渡す。
ページをめくりながら、母の顔はまるで学者のような真剣な表情だった。
「ふむ……演出意図は理解できる。でも、この“妹が兄の布団に忍び込む”って、必要かしら?」
「ある意味、構造上の必須要素です!」
俺は反射的に叫んでいた。
双子がクスクス笑いを漏らす。
収録終了後、控室で母と向き合う。
「正直、びっくりした。でも……アンタ、ちゃんと向き合ってるのね」
「母さん……」
「私も、少し勉強してみる。あんたの世界を、少しでも知るために」
そう言って母は微笑んだ。
この笑顔。
たぶん、俺の人生で初めての“性癖理解者”かもしれない。
【次回予告】
母の理解は得た。次なる敵は、現実世界の“他人の目”!?
エロゲ制作がSNSで拡散→大学の同期にバレる可能性が!?
次回、
『学園生活(仮)終了のお知らせ』
夢と学歴、どっちが大事!? 恥と青春の綱渡り!