第12話 デバッグ地獄と72時間戦争
【業務日誌 西暦2025年4月12日】
名前:(海老原 鯖男)
<内容>
新作、納期前の最終局面。
バグ、差し替え、追加演出、無茶ぶりオンパレード。
新人シナリオライター、えろいえっちくん、初の“完走”てん!
<所感>
72時間眠らないというのは、嘘ではない。
涙とカフェインの混合燃料。
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ステータス更新
江呉依 英知:正気:不在 達成感:未知の高み
海老原 鯖男:常時クラッシュ タイピング速度:超加速
天使まこと:ラストCGに異常執着中
双子声優:深夜3時のハイテンション持続中
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「このタイミングでCG追加てんし! しかも抱き枕差分!」
「今描くんですか!? 今日の昼納品じゃ……」
「気合てんし! 萌えは根性てんし!」
徹夜明けのスタジオに、響く声と呻き声。
寝袋が並び、空き缶が山となり、モニターには“エラー:Segmentation fault”。
それでも、止まらない。
誰かが叫ぶ。
「セリフずれてる! BGM入ってない! 背景の校舎が、なぜか宇宙船!」
「逆にアリでは!?」
「アリじゃないです!」
残り6時間。
俺は、最後のシナリオ修正に没頭していた。
“妹が、夜の帰り道で兄に告白する”シーン。
なぜかこのシーンだけ、ずっと決まらなかった。
……でも、今なら書ける。
あの日、親父に言った。
「俺、これで食っていく」
その覚悟を込めて、俺はキーボードを叩いた。
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そして、朝。
納品完了。
全員、床に倒れるように崩れ落ちた。
「おつかれ……」
誰かが呟き、誰かが拍手した。
俺は、微笑んだ。
そのとき。
社長が、スケジュール表を持って近づいてきた。
「次回作、リリース日決定したてんし! タイトルは──」
「社長、今はやめてください……」
「だってこれ、“性癖の暴走記・炎上編”てんしよ?」
俺の頭が、床にめり込んだ。
【次回予告(第二部予告?)】
バズと炎上は表裏一体!?
今度は社会が、彼を放っておかない!
次章──
『エロゲと炎上と俺の評価』
燃えよ、性癖。
……でも燃えすぎるな。