第10話 父、沈黙。そしてプレイバック
【業務日誌 西暦2025年4月10日】
名前:(江呉依 英知)
<内容>
父親との対面、決行。
姉が持ち出した“例の音声”が、食卓に爆撃。
家庭内、一時凍結。
<所感>
人は、家族に喘ぎ声を聞かれると、悟りに近づく。
この夜、俺はひとつ、殻を破った。
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ステータス更新
江呉依 英知:羞恥:無限ループ 冷汗:常時発動
江呉依の父:表情:能面化 沈黙時間:更新中
江呉依の姉:攻撃精度:Sランク
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夕食の席に、久々に家族がそろった。
父・母・姉・俺。
箸が進まない。
父は一言も発さず、ただ箸を動かしている。
姉がスマホをテーブルに置いた。
「ねえ、これ、ちょっと聞いて」
タップ音。
『あ、あっ……お、お兄ちゃん……ダメだよ、こんな……っ!』
俺の声だ。
よりにもよって、一番ピー音手前のやつ……
「ご、ごはん中に流すのやめようよ……」
母は手を合わせて小さく「ごめんなさい」と言った。
父は……無言。
そのまま、箸を置いた。
「……英知」
久々に聞いた、父の声だった。
「それが……お前の、本気か?」
「……はい」
「ふざけてるようにしか聞こえん」
「でも、本気です。俺は、これで食っていくつもりです」
沈黙。
数秒、いや、永遠のような間。
「……ならば、覚悟を決めろ」
父はそう言って、席を立った。
それは肯定ではなかった。
でも、否定でもなかった。
母がそっと背中を押してくれた。
「話せて、よかったね」
俺は、深く、深く頭を下げた。
【次回予告】
家族の山を越えたその先に、次なる壁。
今度は──エロゲ業界そのもの!?
業界誌がインタビューを依頼!?
次回、
『プロとして、語るということ』
性癖は武器だ。人生は、弁解だ。