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1 勇者によばれて


 最近、よく夢を見る。

 夢の内容はいつも同じで、霧のせいで男か女か分からない誰かにずっと呼ばれている。


 アンタは誰だ?

 何かあったのか?

 どこかで会った事があるのか?


 俺はいつも同じ質問を繰り返すが、相手は何故か俺の名前をただずっと呼び続けている。

 そして、霧が少しずつ薄れてきて顔が見えそうになる時に俺はいつも夢から覚めてしまう。

 そんな事が学年が上がり高校2年生になってから、すでの初夏が始まり汗が溢れ出る7月の季節まで続いていた。


 「野郎どもォォォォォッ! 遂にこの日が訪れて来たぞッ! そうッ! 今日は待ちに待った終業式ッ! つまりは明日から一ヵ月に渡る夏休みだァァァァァァァッ!!?」

 「「 オォォオォォオオオォォォッッッッ!!!!??? 」」


 クーラーで涼しくなった教室を無駄に熱気で暑くさせている男子生徒とその他男子達が明日から始まる夏休みに歓喜を上げて、それを呆れたように眺める女子生徒達の冷たい視線が広がっていた。

 男子達は今年こそ夏休み中に彼女を作る事や来年の大学受験の為に塾の夏期講習へ向かうなどと会話が飛び交い、女子達は休みの日に出かける買い物のスケジュールや同じく大学受験の目標などを語り合い、その他の生徒達は休みだというのに変わらず行う部活動への意気込みを話し合っている。


 「そ・れ・でッ! お前はどうすんだよ! 大和(やまと)!」


 先ほどまで壇上で男子達の前で声を荒げていた男子生徒が窓際で大あくびをしていた俺の前の席に座り込む。


 「どうって?」

 「なぁんだよ聞いてなかったんか~? 夏休みだよな・つ・や・す・み! 8月の頭でクラスのほとんどが一緒に海に行く事になったんだけどお前は?!」

 「行かない」

 「ホワッツ!?」

 

 男子生徒は大げさなリアクションで首を傾げる。


 「お前、去年の俺の事情知ってて言ってるだろ」

 「いや知ってるよ! 知ってるけどさぁ~。 一日くらい予定空けれない?」

 「空けれない。 っていうか空けさせてくれない」


 俺の家系は代々、平安の時代から引き継げられてきた武人の子孫だという。

 八百万の神々、魑魅魍魎の妖怪達と人間達が共存していた神代最後の時代。

 人間相手にではなく人智を超えた異能を持つ相手と渡り合う為に結成され、鍛えられてきた者達が存在した。

 それをモモノフ(武士)という。


 毎年、夏の時期は田舎の山へ親戚一同が強制的に呼ばれ毎日時間が許される限り剣術を叩きこまれる。

 その為、俺にとって夏休みとは時代遅れの修行の時期となるせいで、友人達と青春を謳歌する事が出来ないでいた。


 「まぁ仕方ないよな~。 ()()()()()()()()()ってことならさ~」

  

 ただし、俺が田舎の山で剣術の修行をしている事はクラスメイト他、一般の人間には教えられない事になっている。

 理由は知らない。

 けれども昔から絶対に他人へ修行の事を話してはいけない習わしがある。

 だから俺はこの時期に遊びに誘ってくる友人達には父系の実家で経営している田舎の旅館を手伝いをしている事にしているのだ。


 「だけどよ! 夏はダメでも冬はいいんだよな! 去年もそうだったし!」

 「あぁ。 冬は旅館も田舎すぎで雪の影響もあって客数も少ないし手伝わなくてもいいってさ」

 「じゃあ冬な! 忘れるなよ!」

 「おぅ。 ・・因みに聞くけどこれからみんな何処行くんだ?」

 「・・・ふっふっふっ。 よくぞ聞いてくれ我が友よ! 俺達はこれから―――ッ」



 ▢ ■ ▢ ■


 始業式を終え、まだ太陽が真上にある昼の時間。

 振り返り学校の窓へ視線を向けると涙目で「ヘルプ」と口ずさむクラスメイトの男子過半数と目が合う。

 俺はそれを満面の笑みを向けて手を軽く振り返した。

 どうやら先ほどまで教室で明日から夏休みだと息巻いていた生徒の半分以上は、期末テストで赤点を取っていたせいで、今日から一週間の補修が始まったようだ。

 因みに俺は全教科赤点回避の為、こうして問題なく昼で学校を終える事が出来ている。


 「さてと、明日から京都に行かんと行けないから家に帰ったらすぐに準備せんと・・ん?」


 家に帰ってからの段取りを頭の中で整理していると、スマホの着信が鳴る。

 宛先を見ると非通知だ。


 「・・・」


 いつもなら非通知であれば一度無視をするのだが、その時は何故かその電話を出なくてはならない気がした。


 「・・はい。 もしもし?」

 『 ――― ▢▢▢ ――― 』 

 「え?」


 次の瞬間、俺の視界に映るすべての景色は変貌した。

 見慣れた家や学校の建物は無くなり、見知らぬ夜空が(そら)を覆っている。


 「まさか・・本当に成功するなんて・・・」


 背後から女の声が聞こえた。

 状況が理解できないままゆっくりと声が聞こえた方へ振り向くと、そこには全身傷だらけで今にも倒れそうになっているコスプレのような鎧を着た女性が地面に片足をついて俺を見上げていた。


 「フッ・・世界を救う使命を持つ私が、まさか召喚する側になるとは・・想像もしなかったな」

 「え・・ちょ、大丈夫ですか、っていうかなんだここ? 撮影? ドッキリ?」


 混乱する情報を少しずつ整理しようとするが、どうしても視界に映る現実に頭が追い付かない。

 そんな状況だというのに、目の前の女性はフラフラと立ち上がると俺の手を強く握りしめる。


 「すまない。 名も知らぬ異界の青年よ。 どうか今は私の言葉を信じてほしい」

 

 今にも倒れそうな出血をしている。

 いや、すでに死んでいてもおかしくない血が地面に流れている。

 それでも、彼女は大和と右手を握り、覚悟を決めた眼で視線を合わせた。

 

 「私の名前はルイ・メシアン。 この世界で勇者と呼ばれている」

 「ゆ、勇者?」

 「そして、ここは人類の脅威であり勇者である私の宿敵、魔王が住まう城の広間だった場所だ。 単刀直入に伝える。 どうか、私の変わりに魔王を倒してくれッ」

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