第12話『人獣』⑥
「ギャオォォッ……」
ゴリラの呻き声が上がる。さすがの怪物もスリップを利用した動きには反応出来ず、優は滑りながらレーザーブレードで相手の身体を切り裂いたのだった。胴を真っ二つにした為、目を剥き出しにした顔を載せた上半身はだるま落としでもしたかのように崩れ落ち、残った下半身から黒い鮮血が噴き出した。偶然に瞬間的に対応した形ではあったが、それを上手く利用して、優は強敵に勝利したのだった。
「ふう」
ため息を吐き、ぐったりとへたり込む優。攻撃をかなり食らった事もあり、相当な消耗度だった。返り血で顔に黒い液体が付着していた。毒性はないだろうが、あまり気分の良いものではない。
それにしても手強い相手だった。人間の知恵を付けただけで怪物がこれ程までにパワーアップするとは恐るべき所業だ。戦いの最中、感情でパワーが上がったのも驚かされた。ウォーグ、そして父は、何という事をしでかしたのだ。
「先輩、大丈夫ですか?」
「あんまり大丈夫じゃない……な。さすがに効いた」
咲がマスクを通じて通信してくるが、優は結構なダメージが身体に残っていて立ち上がれない。
「そんな……今から行きますよ」
「いや、建物の周囲に警察もいるし、無理だろ」
「でも……」
「大丈夫だ、少し休めば回復するから」
言いながら優は大の字になった。咲が「センパイ、センパイ」と呼んでいる気がしたが、早くも疲労感で無意識の底に沈もうとしていた。
「こんな怪物が続々と出現するとしたら俺は……」
不安な気持ちに頭と胸を支配されたまま、優は気を失った。




