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第12話『人獣』⑤

「何をごちゃごちゃ言ってやがる」

 ゴリラが怒りに任せて再び突進してくるが、優は闘牛士のようにそれをひらりとかわした。カイゼルの言った通り、落ち着いて相手の攻撃を見切れば、対処出来ないものではない。数発のパンチを捌き、隙を見て懐に潜り込み、一本背負いで脳天から叩き付けた。


「ガアァッ」

 さすがのゴリラもこの一撃は堪えたようで、のたうち回る。優はレーザーブレードを抜き、とどめを刺さんと身構える。足を一歩踏み出しかけた時、


「グァアアッ!」

 ゴリラは暴れ回ってまたしてもレーザーを吐いてくる。優は慌ててレーザーブレードで光線を弾く。相手の動きはめちゃくちゃでマスクの予測で何とか付いていけるが、攻撃の隙を見出す事が出来ない。


「この野郎っ」

 不規則な動きで暴れ狂うゴリラに苛立つ優。冷静にならなくてはとわかってはいても、突破口が見出せず焦りが募って来る。何よりレーザー乱れ撃ちが強烈で、レーザーブレードで凌ぐ事は出来てもなかなか距離を詰められない。


「待てよ。冷静じゃないのは俺だけじゃない。今ならひょっとして……」

 優は分身した。精巧なホログラフを使っているだけで実体が一人なのは間違いないが、いきり立っている今のゴリラには有効な気がした。鼻を使ってまた探知してくるようなら、再度冷静に対処できるはず。


 案の定、興奮しているゴリラは冷静さを欠き、4人になった優に混乱して、変わらず暴走気味の攻撃を繰り返してくる。結果的に本体じゃない優への攻撃も発生する為、若干の余裕が見えてきた。


「いやあぁぁっ」

 分身にレーザーが飛んだ瞬間、優は斬り込んだ。のけぞり飛びずさるゴリラに、レーザーブレードが皮膚を切り裂いた感覚があった。


「グワオッ」

 ゴリラの胸から黒い液体が噴き出す。浅かったが、確かに一撃を加えた。


「おのれぇぇぇ!」

 叫んだゴリラはさらに狂暴化して襲い来る。その速さはさらに先程までを上回り、優はタックルを食らった。吹っ飛んだ後、何とか体勢は保ったが、ゴリラが追撃を加えんと向かって来る。


 再び吐かれたレーザーは何とか弾き返したが、その後のタックルでまたも吹っ飛ばされた。散らかったソファや本棚に激突し、優は蹲る。そこへさらにレーザーが飛んでくる。


「先輩、右に避けてっ」

 マスク越しに咲の声が聞こえてきて、咄嗟に優は右へ転がり回避した。


「サンキュ、咲。けど、遅いぜ」

「すみません。分析に時間掛かっちゃって……」

 そんな事を言っている間に次のレーザーとタックルが向かって来る。優はかわしながら「いいから早く続きをっ!」と催促する。


「ご承知でしょうが、目の前の敵は今までの怪物の能力を全て上回っているようです。ですが、あのレーザー、一度吐いた後にエネルギーを充填するタイミングがあります」

「何っ……そうなのか」

「腹の中でエネルギーを充填して吐いているんです。先輩気付いてなかったみたいですけど、吐く前に腹から喉の辺りが黄色く発光しますから」

「なるほどな。ありがとよ」


 優は次のレーザー放射をじっくりと見た。確かに吐く前に腹から喉にかけて蛇のように黄白色の光がうねっていた。吐かれたものを慌ててレーザーブレードで弾いたが、次のタックルは食らって派手に吹っ飛ばされた。


「ははっ、いい授業料いただいたぜ」

 しかし、笑って即座に起き上がる優。レーザーが吐かれる様子を観察していた事もあるが、タックルを食らう事も織り込み済みで、攻撃を受けながら自分から後ろに飛んだのだった。


「何を笑ってやがるぅっ」

 再度ゴリラの腹から喉にかけて黄色い発光が起こる。次の瞬間、ゴリラの顔面に何かが命中した。


「ガハッ……」

「咲の言った通りだな。レーザーを吐く段階があるのがわかった」


 優はレーザーを吐かれる前に手裏剣を放ったのだ。咲の言った通り、確かにレーザーを吐くタイミングには間隔があり、その隙を突いたのだった。セラミック製の十字手裏剣が顔面に刺さり、ゴリラは黒い血を撒き散らし痛みでのたうち回る。駄々っ子のように暴れ狂う姿を尻目に、優は上段の構えを取った。


 暴れ回るゴリラの動きをマスクで読み、優はレーザーブレードを一閃。計算上は袈裟懸けに斬り抜ける筈だった。


「何……だと」

 しかし、ゴリラのパンチはマスクの予測を超えた速さで優の顔面を捕えていた。この一撃でまたしても壁まで吹っ飛ばされた。感情がパワーを上乗せしたとでもいうのか、目の前のゴリラは想定以上の攻撃を放ってきたのだ。


「許さんぞぉ! 殺してくれるっ」

 ゴリラは顔面に刺さった手裏剣を自ら抜き取り、黒い血液で染まった怒りの形相で再び突進してくる。


「先輩、次食らったらダメです。避けて」

「わかってる」

 これ以上の攻撃を食らえば、スーツの機能も完全に破壊されかねない。優は力を振り絞って迎え撃たんと踏み出した。向かって来るゴリラに対して、こちらも負けじと向かっていく形だ。優の作戦としては相手のパンチをかいくぐり、レーザーブレードで両断するつもりだった。両者が交錯する。


「くっ」

 優の動き、そして予想よりも速くゴリラの剛腕が襲い来る。咄嗟にかわそうとした優だが、足下に予期せぬ罠が潜んでいた。自分が撒いた相手を滑らせる液体が、ちょうど足を踏み入れた場所に残留していたのだった。優は右足を滑らせ転びそうになったが、お陰でパンチはかわす事が出来た。


「これだっ!」

 マスクが瞬時に計算し、スーツの力で身体のバランスを取る。優は滑りながら構えていたレーザーブレードを振り抜いた。



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